前略、ハイドン先生

没後200年を迎えたハイドン先生にお便りしています。
皆様からのお便り、コメントもお待ちしています。
(一服ざる)

『アマデウス』(LIVE シネマティック・コンサート)

2019-02-24 12:22:03 | クラシック音楽
東京芸術劇場で映画『アマデウス』を観て(聴いて)きました。

劇中で流れる曲を、同時に生オーケストラと合唱で演奏する
「LIVE シネマティック・コンサート」です。

演奏:オーケストラ・アンサンブル金沢
   居福健太郎(ピアノ、オルガン、チェレスタ)
合唱:アマデウス特別合唱団
指揮:辻博之




『アマデウス』は、公開当時には観ていませんですが、
その後、テレビ放送やDVDなどで何度も観返しており、
ストーリーはよくわかっています。

かなり昔のことですが、自分と同じく楽器は全く弾けないのですが
クラシックが大好きな"聴き専門"の友人とこの映画について話したとき、
「(自分たちのような)"聴き専門"のクラシック好きにとって
"グッとくる"シーンが幾つもある」という感想で一致しました。

例えば、

サリエリが、密かに手をまわして、
「ドン・ジョバンニ」を5回で上演打ち切りにさせたが、
その5回ともすべて観た
自分だけがこの曲の本当の意味を理解できた、というシーン

モーツァルトが書いたオリジナルの楽譜を見て、
書き損じのない完璧な様に打ちひしがれるシーン
(楽譜をめくる度に、頭の中で次々と音楽が鳴り響く)

など。

自分では永遠に手の届かない高み、天才のなせる技、
でも、その凄さだけはわかる、本当の凄さを理解できる・・・という描写。


ちなみに後者の場面は、精神病院の中でサリエリが神父に対して、
モーツァルトの音楽を「absolute beauty」と表現するのですが、
字幕では「至上の美」(だったと思います)と訳されています。
(確か今のDVDもそうだった気がします)

ですが、自分が最初にテレビ?で観た時は(恐らく吹替ですが)、
「absolute beauty」を文字通り「絶対的な美」と訳していました。

「至上の美」は「この世のものとは思えない美しさ」という感じで、
間違っていないとは思いますが、
「絶対的な美」の方が「人間技とは思えない完璧な美」
というニュアンスが出ていて好きなのですが・・・。


この作品の白眉は、サリエリが記譜を手伝いながら、
モーツァルトが「レクイエム」を作曲する場面だと思います。

(この映画の中の設定では)
「レクイエム」はもともとは、サリエリがモーツァルトを殺害した後に、
モーツァルトを追悼するために自分が書いた曲として世に出そうと画策し、
作曲を依頼したものです。

そして上記の場面も、
衰弱しているモーツァルトに対して、嘘の報酬(ボーナス)をちらつかせ、
自分が手伝うという親切心を装って、早く曲を完成させようとします。


ですが、モーツァルトの「天才」を誰よりも理解しているのが
誰あろう、サリエリ自身です。

指示内容がわからず、頭を抱えるサリエリに対して、
なんとか意図を伝えようとするモーツァルト。
そして、その意図を理解し、嬉々として筆を走らせるサリエリ。

ここは、モーツァルトに対する嫉妬や恨み、狂気も消え去り、
ただ純粋に、天才の頭から迸るものを形にしようとするサリエリの姿が、
天才と、それを理解するもう一人の天才との心の繋がりが見える場面で、
本当に感動的です。

サリエリ役のF・マーリー・エイブラハムは、
この役でアカデミー主演男優賞を獲得しましたが、納得の名演です。


映画の場面に合わせた演奏は、大変だと思いますが、
やはり生の迫力があり、とてもよかったです。
(合唱が入る場面は特に)

劇中、モーツァルトやサリエリが自作を指揮する場面がありますが、
その部分は、実際にオケを指揮していた辻博之さんの指揮ぶりも、
役とシンクロしていました。

つい、つられて、というよりは、
画面と生演奏、両方同時に観ている我々が違和感を感じないよう、
役を演じているようで、これもよかったですね。


大変貴重な映画鑑賞・コンサートで、大満足、堪能しました。

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