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【日曜特集】第7師団創設56周年記念行事(20)実射で始まる障害処理-戦闘工兵は陸自の弱点(2011-10-09)

2022-10-30 20:21:20 | 陸上自衛隊 駐屯地祭
■戦闘工兵は陸自の弱点
 第7師団祭の展示は迫力と共に色々と考えさせられるものがあるのです。

 92式地雷原処理車、東千歳駐屯地祭では、撃ちます。ええっ撃つのかあ、と驚かれる方が多いのは実は私も初めて見た際には驚かされたのですが、ごうっというロケットの点火と共に発射してゆきます。もちろん実爆展示までは行わないのですが、凄い迫力といえる。

 東千歳と当日に大久保駐屯地祭がありますが、施設科部隊の駐屯地であっても流石に92式は発射できませんので、精一杯の工夫が展示される、しかしこちらでは撃てる、駐屯地祭のプログラムを見ますと、だいたい同時刻にこの障害処理展示を行っているのは面白い。

 静内駐屯地祭では87式自走高射機関砲が実弾射撃を展示しますし、第7師団の管区内というのはこうした展示で北海道の広さを実感します。一方でこの施設科部隊の展示ですが、陸上自衛隊の問題を誇示しているようで、早々にどうにかしなければならないとおもう。

 戦闘工兵は陸上自衛隊の弱点で、90式戦車や現在では10式戦車、物す凄い機動力を発揮します。他方で自衛隊の戦闘工兵装備は73式牽引車の派生型を中心としたものであり、要するに機動力がまったく第二世代戦車の水準を出ていないのです、これではおいつけない。

 施設科部隊は先鋒ではありませんが、戦車部隊のすぐ後ろに展開し、障害処理に際しては即座に戦車の前に出なければなりません、地雷原処理、障害除去、架橋、攻撃に際して相手が地雷をばら撒いたり、撤退時に橋を爆破したり、ビルを倒壊させ障害構築した場合に。

 戦車部隊が前進する場合に24時間でどの程度前進するか、機動力を考えれば200kmは前進し得る、するとその最中に幾つの橋梁を渡河し、相手の工兵能力からどの程度の地雷原を処理しなければならないか、手間取れば24時間で10kmも前進できないこととなる。

 90式戦車に充分随伴できる戦闘工兵装備が必要で、地雷原処理能力を持つ排土板付の車両と、架橋装置及びクレーンなどのアタッチメントを持つ装甲施設車輛が、現在装備として無い状況は、せっかくの戦車の能力を十全に活かせないような状況をしめしています。

 北海道の広さ、特に突破ではなく迂回機動などをとるならば、この北海道の広さはNATO防衛正面のスヴァルキギャップや冷戦時代の西ドイツに在ったフルダギャップで想定されたような戦闘は有り得る。日本は狭いので機械化部隊は、という人は地図をみていない。

 南西防衛と云いますが、沖縄本島でも全長は100kmもあり、現在スウェーデン軍がロシア脅威を受け戦車を中心とした機械化部隊を展開させているゴトランド島の全長よりも若干長いのです。財務当局などは機械化部隊に良い顔をしないでしょうが、限度があると思う。

 障害処理を支援するべく戦車部隊が射撃位置に進出しており、上空からはAH-1S対戦車ヘリコプターが警戒にあたっています。そして、日本ばかり見ていますと気付かない事なのでしょうが、AH-1S対戦車ヘリコプターの旧式化はかなり深刻でして、更新が必要です。

 自衛隊装備の多くは旧式化と老朽化、そしてミサイル防衛という1990年代に突如突き付けられた任務を受け整備費用が嵩んでいる為に気付きにくいのですが、機械化部隊の限界を下回っている状況、ヘリコプターの減勢が任務に対応する限度を下回りつつある状況が。

 2011年の行事写真ではあるのですが、ヘリコプターは防衛費の不足から耐用年数一杯で後継機なしのまま退役、73式装甲車は来年制式化50年を迎えエンジン改修など行われないままです。次の戦争も震災も来ないとよいのですが、祈るだけと対策しないでは違うのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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