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イラン製弾道弾はウクライナ軍防空システムでは迎撃不能,欧州イージスアショア正当化したロシアの選択肢

2022-11-08 07:00:44 | 防衛・安全保障
■臨時情報ーウクライナ情勢
 NATOとロシアがオブザーバー国という関係から対立に転じたのがイージスアショアであった事を考えれば、なんという皮肉な出来事か。

 イランがロシアへ供給する弾道ミサイルに対してウクライナの防空システムは全く対応できない懸念があるという。まず供給が決定しているNASAMSは弾道ミサイルを全く想定していません、AMRAAM空対空ミサイルの地上発射故に仕方ないのですが、ウクライナに配備されているのは防空システムであり、ミサイル防衛システムは存在しない現状です。

 ホークミサイル、アメリカとスペインがウクライナへ供給する方針であるホークミサイルの弾道弾迎撃能力は一部の短距離弾道弾に対応するのが限度というものです。ホークミサイルでは対応できない、イランがロシアへ供給するとされる弾道ミサイルは射程300kmと700kmのものです。300kmのミサイルはぎりぎりホークの迎撃速度内の可能性はあるが。

 イランが供与する可能性として指摘されているもので問題は700kmのもの。700kmのものは準中距離弾道弾、これはペトリオットミサイルPAC-3やアスター30SAMP/Tミサイルであれば迎撃できる可能性もあります、03式中距離地対空誘導弾システムもです、しかしウクライナではS-300地対空ミサイルが迎撃可能、しかしこれらの弾薬はかなり枯渇する。

 欧州イージスアショア建設の正当化へ。ただ、ロシアのイランからのミサイル取得については新しい懸念を生みます、それはロシアがNATOとの協調路線から対立路線に転じた背景が、イランのミサイルに備えるとして欧州へ建設が決定した2007年のイージスアショア陸上配備型ミサイル防衛システム建設です。それまでロシアはNATOオブザーバーでした。

 イランは欧州へ配慮し、弾道ミサイルの射程延伸についてはイスラエルには届くが欧州には届かないという射程に配慮してきましたが、撃つのはロシアであっても結果的に欧州へ届くことになったのです。イージスアショアはロシアのミサイルを想定したものではないとし、その背景に欧州とロシアの関係が良好であるという根拠があったのですが、今は。

 イランのミサイルは結果として欧州への脅威を及ぼしている。今回の一連の動きにより結果的にイージスアショアの欧州における重要性を示したのは、皮肉というほか有りません。しかし皮肉を抜きにしましても、ロシアのミサイル脅威が欧州には向かないという認識そのものは結果的に間違いであり、イージスアショアの重要性を示す事となっています。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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