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朝鮮半島有事邦人救出検証(3)有事想定,北朝鮮南侵能力の低下とソウル射程圏の巨大砲兵脅威

2018-03-27 20:15:42 | 国際・政治
■韓国軍強化と自衛隊能力向上
 5万7000名の邦人といいますと、無理難題のように見える救出ですが、それでも1994年朝鮮半島危機よりは状況は幾分改善されています。

 朝鮮半島有事に際し、北朝鮮軍による大規模機甲部隊侵攻の蓋然性が高かった当時は、特に軍事境界線から70kmの位置に韓国最大の都市である首都ソウルがあり、邦人救出任務を展開するには、例えば輸送艦おおすみ型を運用した場合でも、CH-47J輸送ヘリコプターに護衛として機関砲を搭載したAH-1S対戦車ヘリコプターの護衛が必要だったでしょう。

 1994年朝鮮半島核危機に際しては、海上自衛隊には輸送艦みうら型、満載排水量4000tの輸送艦が主力であり、満載排水量14000t、航空機運用能力さえ有する輸送艦おおすみ型の竣工は1998年まで待たねばならず、とても多数の邦人救出は叶わないものでした。おおすみ型輸送艦就役により輸送能力は強化されましたが、それだけでは邦人救出はできません。

 北朝鮮軍の保有戦車数は4000両以上、韓国軍の保有戦車は2800両です。戦車定数が300両という陸上自衛隊からは非常に多く見える規模ですが、北朝鮮軍はT-62戦車の改良型を主力としており、基本設計は旧式ながらライセンス生産を実施しており、砲塔部分を再設計、部分的に複合装甲の採用が分析される等、比較的手堅く強力な戦車を志向しています。

 しかし、1994年当時と比較し、2018年の時点では戦車部隊による大規模な韓国侵攻の蓋然性は低くなっています。一つは韓国軍に1994年当時の主力戦車M-48A5やK-1に代えてK-1A1や最新K-2戦車の開発、そしてもう一つは北朝鮮の石油備蓄能力が非常に限られている状況です。現状ではソウル占領、続き韓国全土の電撃占領等、とても不可能でしょう。

 国連経済制裁の強化により核開発及び長距離ミサイル開発を継続する限り、北朝鮮は石油関連資材の輸入制限が厳しく制限され、第三国沖からの洋上での密輸も海上自衛隊哨戒機による警戒強化により非常に厳しくなっています。機甲部隊は当然燃料消費量が大きく、石油関連物資の供給が制限される以上、戦車部隊の大規模運用には燃料問題が付きまとう。

 邦人救出任務を展開する場合、北朝鮮軍がソウル侵攻を第一とする場合には自衛隊救出部隊と北朝鮮軍戦車の遭遇という懸念が払しょくできず、特にCH-47J輸送ヘリコプターは陸上自衛隊と航空自衛隊が運用する一方、米陸軍や韓国陸軍のCH-47D輸送ヘリコプターと外見が共通しており識別が難しく北朝鮮軍から誤射を受ける可能性が低くはありません。

 2018年朝鮮半島危機では、勿論備蓄燃料を全て放出する覚悟でソウルへの直接侵攻を試みる可能性は否定しないのですが、1994年当時ほどの優位性はありません。そこで可能性として高いのは、6000門という砲兵火力を集中してのソウル北方への大規模砲撃、長距離ロケット弾によるソウル中心部への攻撃でしょう。砲兵火力では北朝鮮軍に優位性がある。

 K-9自走榴弾砲や中古MLRS多連装ロケットシステムの大量調達等、韓国軍も北朝鮮砲兵火力への対抗策を強化している最中ですが、首都圏が軍事境界線に近いという不利は拭えません。北朝鮮軍は砲兵火力を朝鮮戦争休戦以来、掩砲所建築等堅固な陣地を構築し続けており、火砲総数も含め、米韓連合軍も短期間で無力化できるようなものではありません。

 朝鮮半島有事にはこの砲兵火力優位を発揮しない理由はありません、この為、在韓邦人が非常な危険にさらされる事は確かな問題ではあるのですが、それでも、邦人救出任務を展開する際、間近に戦車が照準を加えてくる状況よりは幾分か難易度が下がるもので、あまり悲観的にならず、邦人保護の取り組みを研究、日韓政府間の調整も含め検討すべきです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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コメント (3)
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