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【くらま】日本DDH物語 《第三七回》はるな誕生、潜水艦圧迫する航空対潜部隊の外洋展開

2018-03-17 20:15:55 | 先端軍事テクノロジー
■横須賀基地1973年はるな配備
 ヘリコプター搭載護衛艦はるな誕生により、洋上戦闘の様相は大きな飛躍を迎えました。

 横須賀基地に配備された護衛艦はるな、ヘリコプター搭載護衛艦の運用開始により当時の海上自衛隊潜水艦の訓練運用は大きく変わりました。第二次大戦中から発生していた船団襲撃の際に障害となる護衛艦艇の積極排除が急に難しくなったのだといい、沿岸部に限られていた対潜ヘリコプターの運用が広く外洋まで延伸したのだから無理もありません。

 潜水艦が静粛性を維持して発揮可能な速力は現在の静粛化技術が大きく進んだ潜水艦技術でも14ノット、おやしお型潜水艦、そうりゅう型潜水艦ではさらに技術が向上した為15ノットに延伸したとも側聞するのですが、これは水上戦闘艦艇を含む船団が20ノット以上の速力にて航行している場合、攻撃を行うには船団捕捉からして非常に困難となります。

 20ノットの水中速力を発揮する潜水艦でも、この速力では海中での運動により水から生じる雑音がソナーによる索敵を困難としてしまう。勿論、潜水艦は目標船団が確実に航行する航路に進出し待ち伏せる、東京港へ至る浦賀水道や大阪湾へ至る紀伊水道、重要海峡である津軽海峡や対馬海峡の近傍で待ち伏せれば確実に航行する目標を捕捉する事は可能だ。

 海上自衛隊は千葉県房総半島の館山航空基地、四国東部の小松島航空基地、長崎県の大村航空基地、青森県むつ湾の大湊航空基地へ早い時期から対潜ヘリコプター部隊を配置していますが、この部隊配置は潜水艦が待ち伏せるうえで最も可能性の高い海域の近傍に、直接海中へソナーを吊り下げ索敵可能である対潜ヘリコプター部隊を展開させたかたちです。

 潜水艦は外洋において積極的に艦隊を捕捉し攻撃するには速力の問題から難しく、潜水艦の主任務ではありません。その任務は具体的には潜水艦が待ち伏せている可能性を顕在化する事により敵艦隊の行動、特に進出を制限すると共に、重要水道や重要航路に潜航する事により敵国制海権に不確定要素を与えると共に、その戦力分散を強要する事にあります。

 長魚雷、潜水艦が発射する魚雷は533mmや650mmと大きく、海上自衛隊が運用する89式長魚雷の場合、55ノット高速時射程39km、40ノット時射程50kmとされていますので、最大射程で発射した場合、相手が高速で回避行動をとった場合、相対速度で逃げられる可能性が高いのですが相手が航空母艦でも20km以内に接近できた場合は撃沈も可能だ。

 運用面では、攻勢的制海運用として敵基地前等重要水道へ進出し重要目標を待ち伏せるもの、攻勢的海洋拒否運用として広範囲に展開し通商破壊能力を誇示するもの、防勢的制海運用として潜水艦を艦隊前方に先鋒させる運用、防勢的海洋拒否運用として自国周辺海域へ敵勢力展開を拒否する運用、戦略運用として戦略ミサイル原潜運用と護衛や対処がある。

 しかし、ヘリコプター搭載護衛艦が一般化する前には、潜水艦をスノーケル高速航行させ、高速で航行する水上戦闘艦攻撃へ充当する運用がありました。潜水艦には水上戦闘艦を命中させれば確実に撃沈できる長魚雷が搭載されています、潜望鏡深度まで浮上し高速航行する事は危険ですが、対潜哨戒機に捕捉されただけならば滞空時間上限から生還は可能だ。

 ここにヘリコプターが加わりますと状況は一変します、ヘリコプターは潜水艦上空に滞空し吊り下げソナーによる確実な捕捉が可能です。この状況下でスノーケル航行を行う事は自殺行為に他ならず、護衛艦はるな艦載機3機は必要ならば交代で常時航空哨戒が可能です。はるな就役は潜水艦の艦隊襲撃行動を極めて困難とする大きな転換点となったのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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