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【日曜特集】富士学校創設63周年富士駐屯地祭【03】普通科教導連隊行進(2017-07-09)

2018-03-25 20:11:20 | 陸上自衛隊 駐屯地祭
■勇壮!89式装甲戦闘車の行進
 富士学校創設63周年富士駐屯地祭、実は本文が2013年行事紹介用に作成したもので、写真選定に先立ち作成した為、若干本文と写真の乖離をご容赦ください。

 89式装甲戦闘車、高性能の一方調達開始が冷戦終結直前とあり少数配備に留まっています。他方、この次に行進します軽装甲機動車は大量に配備されました。小型ですので小銃班7名は乗車できませんが、一個小銃班が2両に分乗、軽量ですのでヘリコプターによる空輸も可能です。実際、配備開始と同時に同年の富士総合火力演習では輸送ヘリコプターにより空輸が展示されました。

 機甲歩兵として例えばドイツ連邦軍などは装甲戦闘車を戦車と同じ装甲兵科としているのが迫力だ。さて、普通科部隊の象徴というべき軽装甲機動車、勿論、数が多く部隊当たりの配備数も多い事は整備負担や運用負担も大きいのですが、機動力をもって分散と集合が迅速に行えるのです。負担といえば、1個班で常時運転手と車長が2名づつ必要になり休めない、という。

 元々は350両が北部方面隊へ配備される予定でした。一方軽装甲軌道車、小型装甲車として、フランスのVBL軽野戦車やドイツのウィーゼル空挺装甲車を参考として研究、下車戦闘を重視するべく装輪小型装甲車に扉を多数配置した国産車両を開発する方針が示され、小松製作所により開発されました。大量生産により単価も2700万円ほど。

 軽装甲機動車の話題ですが、一方でPKO任務等では装甲戦闘車のような装備の必要性が高まっている。国際平和維持活動など自衛隊の海外での任務では必須の車両となっていまして、初陣はイラク復興人道派遣任務、以来自衛隊海外派遣では常連となり、南スーダンやジブチ自衛隊航空拠点へも派遣されました。輸送車両の警護から巡回任務まで幅広く運用されています。

 普通科教導連隊第3中隊は高機動車を装備する部隊です、高機動車は陸上自衛隊全般から広く支持されている汎用車両で、多数を積めて車内に余裕もあり高速で移動でき故障が少なく乗り心地がいい。先頭を往く1/2tトラックはコータム無線機を装備していますね。

 高機動車は1992年より、普通科部隊自動車化の中枢として導入されたもので、1t半トラックにより移動していた普通科隊員の機動力を大きく向上させました。1t半トラックは73式中型トラックと旧称されたもの。高機動車は民生品を多用し部隊使用許可を受けています。実のところ、この車輛が揃うまでは大変だった、師団輸送隊のトラック支援も必要でしたからね。

 本文を作成した後に写真を選定した為に少々写真の順番が異なる事についてご容赦を。高機動車について、悪い話を一つとしてきかない、というところが実情で、唯一の苦情は、もっと数が欲しい、というもの。トヨタ自動車製で毎年400両ほどが量産されています。一両当たり量産開始当時は1200万円と高価でしたが、現在は量産効果で650万円ほど。

 軽装甲軌道車は2000両という水準ですが高機動車は更に多く、3000両以上が生産され、まだ生産が続いています。長距離機動の場合には基本10名が乗車し、うち1名が操縦手で1名が車長、残る8名は休憩できます、1/4tトレーラをけん引し、必要な装備を携行する事が出来ますし、国際活動型として装甲を施したものもある。

 装甲車である軽装甲機動車に対し、高機動車の車体はFRP製で防弾性は全くありません。そこで高機動車は敵と接触する前に下車戦闘に移る必要があります。基本的に敵の有無は連隊の情報小隊や師団旅団の偵察隊に任せ、敵部隊と接触する前に下車、普通科隊員は地形防護を最大限活かし戦闘展開させてゆきます。

 汎用性の面から軽装甲軌道車を見ますと、特にヘリコプターによる空輸などを考えた脚気小型すぎるとの指摘があります、一方で高機動車は120mm重迫撃砲牽引車、96式多目的誘導弾、中距離多目的誘導弾、93式近距離地対空誘導弾、低空レーダ装置P-18,発煙機3型、数えきれないほどの派生型が配備され、自衛隊の友というべき車両となりました。重心が低く安定性が高い故の汎用性と云えます。

 続くのは普通科教導連隊第4中隊の観閲行進、96式装輪装甲車を装備しています。もともとは全国の普通科連隊第4中隊へ装備すべく安価にまとめた装甲車ですが、360両ほどしか生産されていません。汎用装甲車ですので冷戦後の脅威多極化を考えれば1000両以上必要ですね、自衛隊が1200両あった戦車を300両で充分として戦車を削減したのですから、対戦車隊の整備費用をそのまま装甲車中隊へ置き換えても良かったように思う、これができないのは戦車脅威がある最中に戦車を減らした為の高価な代替案といえる。

 小銃班に複数車輛を配備させるのが軽装甲機動車ですが、96式装輪装甲車は10名を乗車させ機動に用いる装甲車両で、概ね重機関銃に耐える25mm程度の装甲を有しています、車幅が日本の道路事情に対応すべく抑えられており、C-17輸送機ならば一度に6両が輸送可能、こう書くと期せずして戦略機動性の高さが見えてくる。

 96式装輪装甲車の基本設計は車高を抑えた形状も特色で、これは日本本土で専守防衛として運用する場合に敵に見つかりにくいという利点があります、装輪装甲車という設計は車輪の大きさに車軸の高さが制約されるため、設計上どうしても車高が高くなりがちです。

 自衛隊車両全般にもいえる事ですが、車高を抑えた事で見つかりにくくなりましたが、その分は地雷への防御力に限界があると指摘されています。ただ、これはそれ程重要な問題とは言えません。地雷はこちらの武器、専守防衛では地雷はこちらが仕掛け遅滞行動するものという実情を忘れてはなりません。

 理想としては、普通科連隊4個中隊のうち、3個中隊に96式装輪装甲車を配備し、1中隊に斥候とl火力の機動運用手段となる軽装甲機動車を配備するところでしょうか、各中隊に14両を配備し、連隊本部にも配備した場合は一個連隊だけで合計45両が必要となります。

 高機動車は開発当時一両1200万円と云われましたが96式装輪装甲車も開発当時は一両1億2000万円といわれていました、しかし長期的に量産しますと量産効果が徐々に大きくなる。量産が進んだことで一両当たり9600万円程度に抑えられており、安価として知られるアメリカのストライカー装甲車が140万ドルを要する事と比較すればかなり費用を抑えられたといえるでしょう、もっと生産すべきと思うのですが現在は新型装甲車が開発中とのこと。

 高機動車の背後に96式装輪装甲車が。96式装輪装甲車に欠けているのはコンセントでしょうか。充電というと現在自衛隊では将来戦闘用に各種情報端末を普通科隊員個々人へ配備させる方向で装備開発を進めています。すると最前線で重要課題となるのは充電で、装甲車には充電拠点としての意味が加わる。

 新型装甲車は96式装輪装甲車よりも車体を若干大型化し、更に車体の車高を大きく撮り車内容積を拡大すると共に、国際協力任務への対応を念頭に地雷などへの防御力強化構造を採り、更に車高が大きくなりました。現段階では機動連隊などへ大量生産されるという。

 国際平和維持活動は現在、南スーダンからの撤収により全任務を完了しています。要因は治安悪化とともに文民保護等の戦闘を想定される状況へ派遣できないというもの。仮に新型装甲車が地雷防御出来ても、安全保障関連法制整備後でも現行法では用途がありません。大量生産される装備、という視点もそもそもこの高機動車に続き96式装輪装甲車は全国の普通科連隊へ一個中隊程度は配備される予定でしたので、申し訳ないが実現するかは信じられない。

 96式装輪装甲車、継続は力なりと云いますので、無理に新型を開発せず、現行型を基本とし、輸送能力が不足するのであれば1/4t牽引車を高機動車の様に引っ張ればよい、と思う。更に近代化するのであればRWS遠隔操作銃搭として暗視装置と火器管制装置に12.7mm機銃を一体化したものを搭載し、車内容積が足りないならば対戦車ミサイル等を車上発射架搭載等とし、充電設備や電気系統を改良する事で十分対応可能と思うのですがどうでしょうか。

 96式装輪装甲車に続いて実施されるのは普通科教導連隊対戦車中隊の観閲行進、79式対舟艇対戦車誘導弾と中距離多目的誘導弾が配備されています。79式対舟艇対戦車誘導弾と中距離多目的誘導弾は前者に対し後者が後継装備という扱いで、世代は幾つも異なりますが新旧装備が混成運用されている訳ですね。

 対戦車隊としてその昔、陸上自衛隊の師団には16セットの79式対舟艇対戦車誘導弾が配備されていました。この1セットには発射器と弾薬車輛が付、初度携行弾薬として12発を装備していました。即ち、対戦車隊全体で192発の対戦車ミサイルを装備していました。

 師団長最後の手札、と言われていまして、自衛隊では草創期より対戦車ミサイルの国産化を努力しています。最初の64式対戦車誘導弾はワイヤーを通じ十字釦と双眼鏡で命中させる高い練度が要求されましたが、79式対舟艇対戦車誘導弾は赤外線半自動誘導で狙い易い。

 96式装輪装甲車の背景、対戦車隊についての写真は次回紹介します、79式対舟艇対戦車誘導弾は通称重MAT,上陸用舟艇の撃破用HE弾頭と戦車撃破用のHEAT弾頭が開発され射程は4km、対戦車用としては弾頭が大型で威力が大きい。対戦車隊から一部師団普通科連隊対戦車中隊へ移管、自衛隊では240セットが調達されました。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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