■EF-15構想とEA-18G検討報道
航空自衛隊は電子戦専用機取得を長年の要望としており、F-15戦闘機の余剰機へ大型電子戦装置の搭載を念頭に開発を進めていましたが、ここで大きな動きです。
原子力空母信濃シリーズ、鳴海章氏の航空冒険小説をご存知の方はEF-4サンダーファントムという架空の電子戦闘機の話題をご記憶でしょう。航空自衛隊がF-4戦闘機を改造しニミッツ級空母信濃に搭載する内容です。先日の小牧航空祭にて飛行展示の幕間に、齢がばれつつ、そんな話題をしていました。現実は入間に電子戦訓練支援機があるのみ、しかしこれも変わるやもしれない。
EA-18G電子攻撃機、政府が次期中期防衛力整備計画において自衛隊への配備を展望している、日経新聞が1月1日に報道しました。EA-18Gは原型がF/A-18F戦闘攻撃機、F/A-18E戦闘攻撃機の複座型にあたり、アメリカ海軍やオーストラリア空軍が戦闘機として運用していまして、航空自衛隊のF-2戦闘機と同時期に開発が進められていた第4.5世代機の一つ。
電子攻撃機とは電子戦の専用機、妨害電波発信装置を中核とする電子戦装備により、敵戦闘機の探知能力を妨害する事を筆頭に、通信やデータリンク回線の無力化、艦艇や地対空ミサイルシステムの索敵レーダーや照準レーダーの無力化、また対レーダーミサイルを運用し敵レーダーそのものの位置を逆探し標定、物理的に破壊するという任務も可能です。
電子妨害装置であれば、珍しいものではありません、現用戦闘機には電子戦装置が無ければ第一線戦闘は対応できません。F-15J戦闘機にも自衛用電子妨害装置が搭載されていまして、主としてミサイルにより照準された状況で妨害電波を発信し反らす能力があります。この為には日本の戦闘機へミサイルを照準するレーダーの電波情報が必要となり、航空自衛隊のYS-11E,海上自衛隊のEP-3等、電子偵察機を保有しています。
実は自衛隊の電子偵察機は、埼玉県の入間基地等に配備されており、機数と能力の両方で世界的に見て非常に高い水準にあります、各国がこの種の航空機を取得するのに及び腰となるのはいずれも1機100億円以上の費用を要し、現在の機種であれば早期警戒機と同等、第4.5世代戦闘機よりも取得費用は大きくなり、また大型機ですので運用費用も大きくなります。YS-11Eでも海南島付近の公海上や沿海州付近の公海上まで必要ならば進出していると聞く。
ミサイルに照準された際に、電子妨害装置を作動させた瞬間、幻惑され自分へ向かっているミサイルが急速に明後日の方向へと逸れて行くならば、これほど心強いものはありません。しかし、その装備のために哨戒機の数を減らし専用機、早期警戒機の数を減らし専用機を、というには電子戦の重要性を空軍や海軍が本質的に理解しておく必要があるのです。
EA-18Gについてですが、搭載する電子戦装置の出力はF-15Jに搭載している自衛用電子戦装置の比ではありません。自衛用電子戦争値は基本的に自らに向かってくる脅威から防衛するためのもの、究極的には命中する100m手前で逸れても、また1m隣を飛翔しても作動させなければよいのです。しかし、電子戦機はその空域全般で、つまり半径数十km圏内での電子妨害を行い、戦域妨害任務を担う。
EC-1電子戦訓練支援機としまして、航空自衛隊には電子戦状況を再現し模擬攻撃を行う訓練支援機が入間基地に1機あります。EA-18GはこのEC-1と用途としては同等のものなのですが、EC-1はC-1輸送機を原型とした派生型であるため、戦闘機と比較したならば非常に大型ですし、また機動性に優れるC-1であっても戦闘機と比較すると鈍重である事は否めません。
EA-18Gをわが方が運用する場合、例えば相手の地対空ミサイルなどを妨害して運用できない状況に追い込めますし、我が国島嶼部や本土へ上陸した敵の通信を破壊しない手段により無力化する事もできます。特に中国やロシアからの軍事的脅威増大を受けている我が国には、この種の装備があれば相手に相応の対抗策を強い、日本への攻撃が難しくなります。
しかし、EA-18Gという報道には意外でした、こういいますのも、防衛装備庁はF-15J戦闘機をEF-15というべきでしょうか、電子戦機へ転用すべく国産電子妨害装置開発を本格化させているからです。F-35戦闘機の導入により、初期型のF-15戦闘機数に余裕が生まれ、F-15は10.5tもの装備を搭載可能ですから、ポッド式大型電子戦装置を搭載する構想があり、専用の電子戦闘機を取得せずとも国産機が担う趨勢でした。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
航空自衛隊は電子戦専用機取得を長年の要望としており、F-15戦闘機の余剰機へ大型電子戦装置の搭載を念頭に開発を進めていましたが、ここで大きな動きです。
原子力空母信濃シリーズ、鳴海章氏の航空冒険小説をご存知の方はEF-4サンダーファントムという架空の電子戦闘機の話題をご記憶でしょう。航空自衛隊がF-4戦闘機を改造しニミッツ級空母信濃に搭載する内容です。先日の小牧航空祭にて飛行展示の幕間に、齢がばれつつ、そんな話題をしていました。現実は入間に電子戦訓練支援機があるのみ、しかしこれも変わるやもしれない。
EA-18G電子攻撃機、政府が次期中期防衛力整備計画において自衛隊への配備を展望している、日経新聞が1月1日に報道しました。EA-18Gは原型がF/A-18F戦闘攻撃機、F/A-18E戦闘攻撃機の複座型にあたり、アメリカ海軍やオーストラリア空軍が戦闘機として運用していまして、航空自衛隊のF-2戦闘機と同時期に開発が進められていた第4.5世代機の一つ。
電子攻撃機とは電子戦の専用機、妨害電波発信装置を中核とする電子戦装備により、敵戦闘機の探知能力を妨害する事を筆頭に、通信やデータリンク回線の無力化、艦艇や地対空ミサイルシステムの索敵レーダーや照準レーダーの無力化、また対レーダーミサイルを運用し敵レーダーそのものの位置を逆探し標定、物理的に破壊するという任務も可能です。
電子妨害装置であれば、珍しいものではありません、現用戦闘機には電子戦装置が無ければ第一線戦闘は対応できません。F-15J戦闘機にも自衛用電子妨害装置が搭載されていまして、主としてミサイルにより照準された状況で妨害電波を発信し反らす能力があります。この為には日本の戦闘機へミサイルを照準するレーダーの電波情報が必要となり、航空自衛隊のYS-11E,海上自衛隊のEP-3等、電子偵察機を保有しています。
実は自衛隊の電子偵察機は、埼玉県の入間基地等に配備されており、機数と能力の両方で世界的に見て非常に高い水準にあります、各国がこの種の航空機を取得するのに及び腰となるのはいずれも1機100億円以上の費用を要し、現在の機種であれば早期警戒機と同等、第4.5世代戦闘機よりも取得費用は大きくなり、また大型機ですので運用費用も大きくなります。YS-11Eでも海南島付近の公海上や沿海州付近の公海上まで必要ならば進出していると聞く。
ミサイルに照準された際に、電子妨害装置を作動させた瞬間、幻惑され自分へ向かっているミサイルが急速に明後日の方向へと逸れて行くならば、これほど心強いものはありません。しかし、その装備のために哨戒機の数を減らし専用機、早期警戒機の数を減らし専用機を、というには電子戦の重要性を空軍や海軍が本質的に理解しておく必要があるのです。
EA-18Gについてですが、搭載する電子戦装置の出力はF-15Jに搭載している自衛用電子戦装置の比ではありません。自衛用電子戦争値は基本的に自らに向かってくる脅威から防衛するためのもの、究極的には命中する100m手前で逸れても、また1m隣を飛翔しても作動させなければよいのです。しかし、電子戦機はその空域全般で、つまり半径数十km圏内での電子妨害を行い、戦域妨害任務を担う。
EC-1電子戦訓練支援機としまして、航空自衛隊には電子戦状況を再現し模擬攻撃を行う訓練支援機が入間基地に1機あります。EA-18GはこのEC-1と用途としては同等のものなのですが、EC-1はC-1輸送機を原型とした派生型であるため、戦闘機と比較したならば非常に大型ですし、また機動性に優れるC-1であっても戦闘機と比較すると鈍重である事は否めません。
EA-18Gをわが方が運用する場合、例えば相手の地対空ミサイルなどを妨害して運用できない状況に追い込めますし、我が国島嶼部や本土へ上陸した敵の通信を破壊しない手段により無力化する事もできます。特に中国やロシアからの軍事的脅威増大を受けている我が国には、この種の装備があれば相手に相応の対抗策を強い、日本への攻撃が難しくなります。
しかし、EA-18Gという報道には意外でした、こういいますのも、防衛装備庁はF-15J戦闘機をEF-15というべきでしょうか、電子戦機へ転用すべく国産電子妨害装置開発を本格化させているからです。F-35戦闘機の導入により、初期型のF-15戦闘機数に余裕が生まれ、F-15は10.5tもの装備を搭載可能ですから、ポッド式大型電子戦装置を搭載する構想があり、専用の電子戦闘機を取得せずとも国産機が担う趨勢でした。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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