北大路機関

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【7D特報】伊勢湾機雷戦訓練2018,掃海艦艇訓練完了四日市港千歳地区入港(2018-02-09)

2018-03-12 20:01:01 | 詳報 陸海空自衛隊関連行事
■伊勢湾機雷戦訓練2018
 掃海艇が続々と四日市港へ入港、伊勢湾機雷戦訓練2018をEOS-7Dmark2撮影の写真により紹介です。

 伊勢湾機雷戦訓練2018、四日市港へ入港の様子です。EOS-M3にて撮影の接岸情景を紹介しましたが、今回はEOS-7Dにより撮影しました。掃海艇入港を千歳地区第二突堤から28-300mm望遠ズームレンズを駆使しての撮影です。洋上のような情景を撮影出来ました。

 機雷、海中に敷設する装備です。海上防衛へ少しでも知識のある方々ならば、最も費用対効果が高い兵器である事はご存知でしょう。機雷は触発機雷ならば単価は数十万円に過ぎません、しかし、突起が航空母艦に触れれば一兆円を超す空母さえも行動不能とできる。

 掃海艇と筆頭に機雷戦艦艇はこうした機雷を無力化し、航路の安全を守る重要な任務に就きます。機雷を敷設する場合に海は広い、その上で冷静に船舶航行などを見てゆきますと、商船は航路上を航行し、軍艦は軍港に繋がる重要水道を航行します。機雷戦はここを狙う。

 係維機雷、最も基本的で安価且つ有名な機雷はこの種類でしょう、海中に浮いている機雷です。浮いているだけですと流失してしまいますので、浮力のある機雷を海底の錘から係維し、水中数mの深さに展開させる、ここを艦船が航行して機雷に触れれば、爆発します。

 機械水雷、が機雷開発当時の名称で1804年に開発されました、当初は機械水雷筏を相手に押し付ける方式でアメリカにより開発され、1812年の米英戦争では港湾封鎖や沿岸防衛にて実戦投入、イギリス艦の攻撃に成功しています。技術的に機雷はその後転換点を迎える。

 魚形機械水雷、最初の機雷が筏型を採用していましたので、この筏に推進装置を取り付け自律航行を可能としたものが誕生します。現在の魚雷で、技術進歩と共に当初は数ノット、停泊中の軍艦を狙うだけのものでしたが、第二次大戦中には50ノットを超え進歩してゆく。

 機雷は、しかし魚雷の速力面での技術進歩に比較すれば、兎も角自分では動かないものですので、一見地味な兵器と勘違いされる理由があります。しかし、機雷は触れたものを確実に撃破しますので、相手が確実に航行する海域へ敷設するならば、その威力は絶大です。

 管制機雷、1848年に電気信号により遠隔操作で爆発する機雷が実用化され、軍港防衛用に投入されました。プロシアがキール軍港防衛用に敷設したのは管制機雷の始まりで、実は日本でも薩摩藩がオランダからの技術資料を基に錦江湾に敷設、薩英戦争で運用を試みた。

 クリミア戦争が勃発しますと、ノーベル博士、有名なノーベル賞のアルフレットノーベルの実父が、硫酸鉛硝子電気信管を開発、接触によりガラスが割れ内部の硫酸が染み出すことで鉛と触れ二次電池を形成した瞬間電気を信管作動に用いる、現在の機雷が開発された。

 機雷の発展はその後飛躍的に進み、第二次世界大戦中には磁気機雷はイギリスにとりUボートやドイツ戦艦と並ぶ三大脅威と認識されています。艦船の磁気に反応する磁気機雷、航行する艦船の水圧変化に反応する感圧機雷、艦船の航行音に反応する音響機雷、など。

 キャプチャー機雷として魚雷を内蔵し接近船舶を狙う機雷や、掃海艇の機雷防護用微電流を逆に探知する対掃海艇用機雷、魚雷敷設型機雷として潜水艦の魚雷発射管から発進し数百km先の敷設海域ヘ向かう機雷と高価な機雷処分器具だけでも狙う志の低い機雷もある。

 海上自衛隊の機雷掃海は実質的には機雷掃討へ転換してゆく過渡期にありまして、この変容は掃海艇の形状に端的に表れています。それは掃海艇の後部甲板が、従来の掃海艇が掃海器具用に広く採っていたのに対し、現在の掃海艇は機雷処分器具を搭載する設計です。

 機雷処分器具と掃海器具の最大の相違点は、前か後か、です。掃海艇の前に敷設された機雷を処分するのが機雷処分器具、掃海艇から曳航して機雷を無力化するのが掃海器具で、この転換は機雷の高性能化により、掃海艇そのものが機雷の主要目標となっている背景が。

 機雷掃討任務とは文字通り機雷を掃海艇に先立って一つ一つ海中海底を探査し、処分器具が無力化してゆくというもの。多数機雷が敷設された場合は気が遠くなる作業ですが、掃海艇自身が撃沈されてしまっては意味がなく、機雷掃討は必要性故の収斂といえましょう。

 掃海任務が主流であった時代には、掃海艇は掃海器具を曳航し、十把一絡げの機雷、音響機雷用に船舶音響発生型の掃海器具や磁気機雷用に磁気を発生する機雷処分装置、艦圧機雷には水圧を曳航掃海器具により処分し、係維式の触発機雷は浮上、と掃海していました。

 キャプチャー機雷はたちが悪い、という印象があります、魚雷を内蔵していますので広範囲を攻撃可能です。しかしその分高価でもあるので、数百個数千個敷設される心配がない、とも。逆に小型機雷を沿岸部にムスに敷設される方が、多い分だけ処分も大変といいます。

 掃海艇は機雷戦ソナーと機雷戦情報処理装置により海中の様々な形状の中から機雷を探し出し、多種多様な機雷処分器具を併用し一つ一つの機雷を掃討し掃海してゆく、仕掛ける費用の安さに対し機雷処理は真面目な掃海艇ですとF-35B戦闘機やP-1哨戒機よりも高い。

 航空掃海部隊として、海上自衛隊は更に高価な機雷処分装備を有しています。MCH-101掃海輸送ヘリコプターで、航空機により掃海を行うもの。確実性では掃海艇に適わないというものの、何分機雷は海中に敷設されている為、万一の際でも航空掃海ならば空は安全だ。

 上海沖で先日沈没したタンカーが、南西諸島へ油の漂着被害という越境環境汚染を引き起こしています。例えば有事の際に機雷が敷設された場合、こうした船舶が被害を受けた場合の損害は大きい。また平時にテロの手段として機雷が用いられた事例もあり、脅威です。

 台湾海峡有事や朝鮮半島有事を想定しますと、機雷対処任務は日本にとり極めて重要です。特に最も安価な係維機雷、錘で海中に浮いている機雷は、数多く、また厄介な事に事故により浮流機雷となりかねません、浮流機雷は係維索が破損し海流に流失してしまうもの。

 浮流機雷は海流に乗り我が国近海まで漂流する可能性が高く、勿論国際法上浮流機雷を敢えて敷設する事は禁止されているのですが、係維機雷は主流である程に数が多い為、ごくわずかでも係維索が破損した場合でも分母が多いだけ、浮流機雷の日本漂着懸念は高まる。

 広大な太平洋に広く敷設された機雷、という状況では掃海任務は気の遠くなるような印象を受けられるかもしれませんが、海上自衛隊の掃海任務は第一に機雷が敷設されやすい湾口や重要航路の掃海による航路維持です。その上で広範囲の機雷掃海を順次行ってゆく。

 機雷の脅威は、しかし確かに高く、例えばアメリカ海軍が第二次大戦以降、大破した水上戦闘艦や強襲揚陸艦の大半が機雷原因、対艦ミサイルによる被害は一件、座礁と火災は確かにありましたが、戦時損傷は機雷によるものが大半、こう聞くと威力がわかるでしょう。

 伊勢湾機雷戦訓練、長期間にわたる伊勢湾での掃海訓練を完了し久々の入港となりましたこの日の掃海艇は毎時数隻が45分程の間隔で入港、接岸作業後は補給等諸作業に追われていました。翌日から四日市や四国で艦艇広報、海上自衛隊の多忙さを痛感した一日でした。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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