◆F-35Bもう一つの必要性
満載排水量27000t、空前の大型護衛艦として年度内にヘリコプター搭載護衛艦いずも就役を迎えます。
ひゅうが型ヘリコプター搭載護衛艦を含め、海上自衛隊の護衛艦隊に所属する四個護衛隊群は、いずも就役で3隻の全通飛行甲板型護衛艦を、将来的に4隻の全通飛行甲板型護衛艦により護衛隊群を編成することとなりますが、全通飛行甲板について現在はヘリコプターの運用を想定しているのみですが、今回はもう一つの視点を。
護衛艦隊は、艦隊によるシーレーン防衛や制海権維持に際し、艦対艦ミサイルと艦砲を対水上打撃能力として保有していますが、艦対艦ミサイルは射程が100浬に迫る一方で、レーダーは直進する電波を利用する特性上、水平線より向こう側の目標をレーダーで捕捉することはできません。
このため、護衛艦は艦載機をセンサーとして使用し、護衛隊同士の対抗訓練においてもSH-6J/K哨戒ヘリコプターにより目標をいち早く捕捉し、ハープーンならば60浬、SSM-1ならばそれ以上の距離を以て想定交戦し、命中判定を電子的に行い、彼我の状況を想定し訓練としています。
しかし、ターターシステム艦のように艦対空ミサイルの射程が30km前後の時代ならばともかく、昨今の艦対空ミサイルの長射程化は、哨戒ヘリコプターの索敵を非常に困難なものとしています、即ち発見する前に艦対空ミサイルとの間で交戦状態となってしまう、ということ。
従来はP-3C哨戒機が遠距離からの索敵を行ってきましたが、実態といますとイージス艦の運用が本格化したのちには、P-3Cであっても水平線上に進出した瞬間にイージス艦が運用する長射程のSM-2艦対空ミサイルの射程内に入る恐れがあり、イージス艦の運用開始は相手に情報優位を取らせない手段として大きな意味があった、とのことでした。
実際には護衛艦隊はイージス艦の防空システム以上の索敵能力を持つ航空自衛隊のE-767早期警戒管制機などとの連携により、イージス艦の能力により選択肢が無い状況に陥る事は必ずしもありませんが、E-767の運用体制や早期警戒機を目標とするより長射程の空対空ミサイルの開発など、その優位は絶対的にかつ永続的とは言えない事を留意する必要があるでしょう。
こう考えますと、ヘリコプター搭載護衛艦の有する全通飛行甲板による長大な航空機運用能力を、ヘリコプターに限定する現状を改め、ステルス機を運用できる体制を構築したならば、SH-60J/Kでは実施できない高脅威度状況下での強行偵察、索敵が可能になるのではないでしょうか。
F-22,写真はF-35ではありませんが、ステルス機であれば、敵防空艦艇のミサイル脅威状況下においても、ステルス機のレーダーに非常に捕捉されにくいという特性を活かし目標情報を艦隊と共有する手段を得、艦隊の制海権維持等において非常に重要な情報優位を獲得する重要な要素と成ると考えるところ。
従来、ヘリコプター搭載護衛艦に固定翼艦載機、といいますと、AMRAAMを搭載したF-35Bで艦隊防空、ASM-2を搭載した中古AV-8Bハリアーで対艦攻撃、という視点を考えがちですが、艦隊防空は米空母機動部隊でさえ従来のF-14戦闘機がイージス艦に任務を譲り、対艦攻撃は対艦ミサイルで実施されA-6攻撃機はより多用途性の高いF/A-18に転換、日本の海上防衛を考えますとそれ以上に情報優位の手段としての艦載機の重要性を考えさせられました。
もっとも、NH-90のようなステルス性を有するヘリコプターは存在し、場合によってはステルス性の高い哨戒ヘリコプターを開発して運用する、または、X-47無人機のようなステルス無人機を導入して陸上基地から運用する、従来型無人機を大量導入し過飽和攻撃に近い方式の一種過飽和索敵を行う、選択肢は幾つかある事も確か。
特にヘリコプター搭載護衛艦があり、F-35Bをその全通飛行甲板へ搭載すべきという提案は言うには簡単ですが、まずF-35B戦闘機7機で護衛艦あきづき型一隻に匹敵する取得費用を要しますので導入は予算面から簡単ではありません。更に海上自衛隊には航空教育集団へ航空自衛隊のT-4練習機のような戦闘機要員を養成する航空教育体系もありませんし、戦闘機部隊の運用基盤そのものが現在は皆無で、航空自衛隊の支援が不可欠となります。
しかし、艦隊の情報優位を如何に確保するのか、この方法に代案が無ければ、制海権維持という任務を果たし得ない状況が現出する可能性も否定できず、ひいては護衛艦隊の存在意義にもつながります。ターターミサイルとヘリコプター、という関係の時代を遙かに超える厳しい状況が現出しており、ステルス機を用いて情報優位、この構図はF-35B戦闘機と海上自衛隊を考えるもう一つの視点となるようにも考える次第です。
北大路機関:はるな
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
満載排水量27000t、空前の大型護衛艦として年度内にヘリコプター搭載護衛艦いずも就役を迎えます。
ひゅうが型ヘリコプター搭載護衛艦を含め、海上自衛隊の護衛艦隊に所属する四個護衛隊群は、いずも就役で3隻の全通飛行甲板型護衛艦を、将来的に4隻の全通飛行甲板型護衛艦により護衛隊群を編成することとなりますが、全通飛行甲板について現在はヘリコプターの運用を想定しているのみですが、今回はもう一つの視点を。
護衛艦隊は、艦隊によるシーレーン防衛や制海権維持に際し、艦対艦ミサイルと艦砲を対水上打撃能力として保有していますが、艦対艦ミサイルは射程が100浬に迫る一方で、レーダーは直進する電波を利用する特性上、水平線より向こう側の目標をレーダーで捕捉することはできません。
このため、護衛艦は艦載機をセンサーとして使用し、護衛隊同士の対抗訓練においてもSH-6J/K哨戒ヘリコプターにより目標をいち早く捕捉し、ハープーンならば60浬、SSM-1ならばそれ以上の距離を以て想定交戦し、命中判定を電子的に行い、彼我の状況を想定し訓練としています。
しかし、ターターシステム艦のように艦対空ミサイルの射程が30km前後の時代ならばともかく、昨今の艦対空ミサイルの長射程化は、哨戒ヘリコプターの索敵を非常に困難なものとしています、即ち発見する前に艦対空ミサイルとの間で交戦状態となってしまう、ということ。
従来はP-3C哨戒機が遠距離からの索敵を行ってきましたが、実態といますとイージス艦の運用が本格化したのちには、P-3Cであっても水平線上に進出した瞬間にイージス艦が運用する長射程のSM-2艦対空ミサイルの射程内に入る恐れがあり、イージス艦の運用開始は相手に情報優位を取らせない手段として大きな意味があった、とのことでした。
実際には護衛艦隊はイージス艦の防空システム以上の索敵能力を持つ航空自衛隊のE-767早期警戒管制機などとの連携により、イージス艦の能力により選択肢が無い状況に陥る事は必ずしもありませんが、E-767の運用体制や早期警戒機を目標とするより長射程の空対空ミサイルの開発など、その優位は絶対的にかつ永続的とは言えない事を留意する必要があるでしょう。
こう考えますと、ヘリコプター搭載護衛艦の有する全通飛行甲板による長大な航空機運用能力を、ヘリコプターに限定する現状を改め、ステルス機を運用できる体制を構築したならば、SH-60J/Kでは実施できない高脅威度状況下での強行偵察、索敵が可能になるのではないでしょうか。
F-22,写真はF-35ではありませんが、ステルス機であれば、敵防空艦艇のミサイル脅威状況下においても、ステルス機のレーダーに非常に捕捉されにくいという特性を活かし目標情報を艦隊と共有する手段を得、艦隊の制海権維持等において非常に重要な情報優位を獲得する重要な要素と成ると考えるところ。
従来、ヘリコプター搭載護衛艦に固定翼艦載機、といいますと、AMRAAMを搭載したF-35Bで艦隊防空、ASM-2を搭載した中古AV-8Bハリアーで対艦攻撃、という視点を考えがちですが、艦隊防空は米空母機動部隊でさえ従来のF-14戦闘機がイージス艦に任務を譲り、対艦攻撃は対艦ミサイルで実施されA-6攻撃機はより多用途性の高いF/A-18に転換、日本の海上防衛を考えますとそれ以上に情報優位の手段としての艦載機の重要性を考えさせられました。
もっとも、NH-90のようなステルス性を有するヘリコプターは存在し、場合によってはステルス性の高い哨戒ヘリコプターを開発して運用する、または、X-47無人機のようなステルス無人機を導入して陸上基地から運用する、従来型無人機を大量導入し過飽和攻撃に近い方式の一種過飽和索敵を行う、選択肢は幾つかある事も確か。
特にヘリコプター搭載護衛艦があり、F-35Bをその全通飛行甲板へ搭載すべきという提案は言うには簡単ですが、まずF-35B戦闘機7機で護衛艦あきづき型一隻に匹敵する取得費用を要しますので導入は予算面から簡単ではありません。更に海上自衛隊には航空教育集団へ航空自衛隊のT-4練習機のような戦闘機要員を養成する航空教育体系もありませんし、戦闘機部隊の運用基盤そのものが現在は皆無で、航空自衛隊の支援が不可欠となります。
しかし、艦隊の情報優位を如何に確保するのか、この方法に代案が無ければ、制海権維持という任務を果たし得ない状況が現出する可能性も否定できず、ひいては護衛艦隊の存在意義にもつながります。ターターミサイルとヘリコプター、という関係の時代を遙かに超える厳しい状況が現出しており、ステルス機を用いて情報優位、この構図はF-35B戦闘機と海上自衛隊を考えるもう一つの視点となるようにも考える次第です。
北大路機関:はるな
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