北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

FN-P-90:個人防護火器PDWの始祖 & MP-5:高精度短機関銃の元祖兼代名詞

2015-01-04 23:33:42 | 北大路機関特別企画
◆Colt Python 357
御正月企画毎年恒例の最終段、エアソフトガン特集を本年も掲載しましょう。

 コルトパイソン357、元来狩猟用単発銃やカービン用弾薬として1930年代に開発された357弾を拳銃用として1955年にコルト社より発表されたもの、東京マルイ社製で回転式弾倉に6発用の区画へ各4発を装填し24連発としたもの。反動の大きな357マグナム弾を使用するため、重心下部全域に渡り重重量化加工が施されており、実銃は手工業火口部分が多く熟練工を必要とした為、単価に反映されています。

 M-1911A1と並べた様子。45口径弾を用いるM-1911A1は絶大な対人阻止能力を秘めた銃弾で、これはそれ以前の38口径拳銃が一定距離以上では十分な阻止能力を持たず近接戦闘で圧し寄られてしまうという実戦経験に基づき45口径弾とされていますが、357マグナム弾は確実な制圧能力があり、コルトパイソンは1999年まで生産が続けられました。

 2014年に購入しましたエアソフトガンは、357のほかに、H&K/MP-5A5とFN/P-90を。共に東京マルイ製です。2013年がアサルトライフルの年でしたので2014年はサブマシンガンの年だったわけですね、其処にリボルバーが加わったのですが。

 FN/P-90、H&K/MP-7と並べてみます。共にPersonal Defence Weapon、個人防護火器ですが、P-90が初めて個人防護火器という概念を開発した始祖的なもので、サブマシンガン、つまり短機関銃の区分に当たるものではあるのですが、従来の短機関銃が拳銃弾を投射したのに対し、個人防護火器は小口径弾薬を小銃弾並の初速で射撃し、近距離での貫徹力、特に防弾装備を装着した歩兵等に対する自衛用に用いられるもの、とした新しい概念の装備です。

 H&K/MP-5A5,MP-5PDWとMP-7と、共にドイツH&K社製の三姉妹で並べてみました。MP-5A5はMP-5というクローズドボルト方式を採用し命中精度を高めたうえで防塵性能や防滴性能等の野戦での運用に必要となる信頼性を確保したもので、それ以前の命中精度よりは近距離制圧力という短機関銃の実性能に、対テロ任務等で必要とされる一定以上の命中精度を加えたもの。

 M-3グリースガンを下に、上にUZIを。短機関銃は、第一次大戦中にドイツ軍が塹壕戦での近距離制圧力を行使可能な拳銃弾を高速連射する装備として広く実用化し、第二次世界大戦では小銃を補完する装備として完成しました。M-3は米軍がプレス加工を多用して大量生産を可能とした第二次大戦中のもの、UZIはイスラエルの設計で戦後第一世代短機関銃に当たり、大戦中に一部で普及した自動小銃と、戦後間もなく登場した突撃銃に対し、補完的に運用し得るよう小型化し携帯性を向上させたものですが、MP-5の登場はこれに命中精度を付与したということで、これ以降第二世代短機関銃という概念が誕生しました。

 ドイツH&K社製のMP-5は、9mmパラベラム弾を使用する短機関銃として1966年に原型が誕生、非常に古い印象ではあります。同じH&K社製G-3小銃の設計を応用しているため、クローズドボルト撃発方式及びローラー遅延式ブローバック方式の設計を維持、これにより命中精度が高くなり、対テロ部隊に採用されることとなりましたが、製造費用が高く普及に時間を要し加えて航空機テロ事件などに多用されるようになったのは1970年代後半から1980年代に掛けてで、このため普及が1980年代以降となったため、新しい印象があるのかもしれません。

 M-4A1カービンとMP-5を。昨今、一部の法執行機関特殊部隊では防弾装備を装着する反社会勢力に対し貫通力を重視しカービンを装備させる傾向がありますが、一方で貫通力が大きすぎる小銃弾を用いるカービンは法執行機関には跳弾が人質等に危険を及ぼすとの指摘があり、依然としてMP-5の運用を維持する機関が多いほか、市街地や艦船などの閉所での近接戦闘を想定する軍特殊部隊や、憲兵隊に後方支援部隊では小銃が大きすぎるとして、この種の装備を採用する事例もあるとのこと。海上自衛隊のSBUはMP-5の擬製銃を携行していましたし、警視庁のSATや銃器対策部隊に原子力警備部隊や捜査課特殊係等もMP-5の実銃を装備しています。

 P-90.スターリングSMGと並べて。P-90は1980年代に将来のソ連との大規模戦争を意識し後方支援部隊や予備役兵を大量動員した際、AK-74等の突撃銃の脅威に対してG-3やM-16やFALの教育を充分行えず、もしくは輸送部隊や整備部隊等で小銃を携行できない環境下において戦闘に遭遇した際、近距離等で突撃銃の小銃弾に対抗し得る装備を、としてベルギーのFN社により開発されたもの。5.7mm弾を高初速で発射するもので、150m程度の距離ならば5.56mm小銃弾に匹敵する貫通力を持ちます、250mの距離では弾頭重量の問題で一挙に威力を失うようですが。

 P-90は1990年に完成し、外見が特殊ですがFNC小銃を開発したFN社製、光学照準器が標準装備されており、一見特異な形状ではありますが構えた場合全長が短くとも閉所に適合した照準動作が可能で、光学照準器によりP-90が想定する150m程度の距離でしたら抜群の精度を誇ると共に50発という多くの弾薬を装填可能であり、再装填動作を経ずとも退避や自衛戦闘ならば遂行できる、といえます。

 P-90.タボールと。近年、短機関銃はブルパップ式小銃やカービンなど全長の短い小銃により代替される、という意見がありますが、全長を短縮化するブルパップ構造を採用していますタボールと並べますと、そこまで短機関銃と比較しブルパップ小銃は小型ではない、と考えさせるところ。5.7mm弾という特殊規格の新設計弾薬が災いして、しかし150m以内での貫通力と命中精度が評価されたため、広くは採用されていませんが、法執行機関や対テロ任務に当たる特殊部隊へ採用されているほか、指揮官の自衛用に携行される事例もあるとのことです。2014年は、エアソフトガンについて、このようにMP-5とP-90にコルトパイソンと三丁を調達しました。

北大路機関:はるな
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