北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

技術研究本部装輪装甲車改(96式装輪装甲車後継)開発着手,期間は30年度まで

2014-05-05 23:40:09 | 先端軍事テクノロジー

◆新装甲車は8輪式、2018年の完成目指す

 朝雲新聞によれば、防衛省技術研究本部は装輪装甲車改の開発へ今年度から着手し30年末までに完成させるとしました。

Gimg_1352 装輪装甲車改は現行の96式装輪装甲車の後継車両として開発され、各種脅威下での戦闘支援やPKO任務における車両部隊の護衛に充てる、とのこと。平成30年に完成、ということで期限が明示されたわけですが、現行通りの制式化方式が採られる場合、18式装甲車として装備されることとなるのでしょう。

Gimg_2585 新装輪装甲車は用途として戦闘の支援、と報じられていることから必然的に戦闘を主導するものでは無く、降車戦闘を念頭とした支援車両、という位置づけとなります。すると、戦闘に主体的に参加する89式装甲戦闘車の後継は大口径機関砲を搭載する近接戦闘車、ということになるわけです。

Gimg_6444 開発着手が今年度ということになりますので、試作を開始し制式化までの期間は四年間、既に構成要素の部分研究は相当分が分散され進められていますし、評価試験などを行うことから部隊配備開始まではまだ時間を要する事とはなるでしょうが、装甲車両とはいえ比較的早い開発期間です。

Gimg_1316  他方、装輪装甲車について、その不整地突破能力に少々不安な話題が入ってきています。予てより北部方面隊等では73式装甲車の後継に導入した普通科部隊の96式装輪装甲車が北部方面隊管区での演習場において不整地にて旧式の74式戦車にさえ追随できない場面があるという話題は伝え聞くことがありました。

Dimg_6945 しかし、昨年アメリカで実施された派米訓練において状況下、簡易爆発物IED想定に対処するべく路外を機動していた派遣部隊の96式装輪装甲車が切株や岩石断面に放置有刺鉄線等により大量に車輪を損傷し、補給体系に重大な影響を及ぼしたという話題があったようです。高速走行時にはこの種の障害物を突破する瞬間に車輪を損傷しパンクしてしまった、とのこと。

Img_4368  技術研究本部装輪装甲車改は戦車にどの程度随伴可能な車両となるのでしょうか、戦車に随伴できず単に普通科隊員を輸送するだけですと機動戦闘そのものが展開出来なくなりますし、戦車と協同せず機動戦闘車との連携のみ考えているならば、戦車が維持される北部方面隊には、近接戦闘車の大量配備か、そもそも近接戦闘車の不整地突破能力も未知数ではあるのですが、代替案などが気になるところ。

Gimg_0801 本土師団の普通科連隊などでは近年に入り、従来の自動車化部隊から軽装甲機動車を受領し一部中隊の装甲化が始まりましたが、北部方面隊程戦車と協同した機動戦闘を重視せず降車戦闘と地形防御を念頭とした運用体系を構築しているため、基本は普通科隊員の踏破能力に左右されることからこの種の問題は、多少聞く程度ではありますが、北海道では違ったようです。

Gimg_4732 戦車などは対戦車ミサイルの飛翔が困難な森林などをその不整地突破能力で一挙に躍進することで機動打撃力を高め、併せて航空機などからの秘匿性にも寄与する運用を展開可能です。しかし、随伴する装甲車両がこうした不整地で行動不能となれば、遠距離から格好の標的となることは間違いありません。

Gimg_2360 必要であれば降車戦闘を展開すれば徒歩要員の不整地突破能力は非常に高い訳なのですが、一方で機動力は個々人の走破力に依存することとなりますので、戦車を機動力で支えることは当然不可能となります、どういう意味かと単純に記せば、機動戦闘が不可能となるということ。

Mimg_4413 不整地突破能力については戦車との協同のみならず、国際平和維持活動などの状況下でIED脅威が想定される際に路外機動を長距離展開する必要が考えられ、前述の派米訓練も国際平和維持活動における想定の下で進められた最中でのパンクの連続発生であったようです。

Gimg_2345 高度な装甲車などなくとも使用する蓋然性は低い、という自衛隊系武装論に対しては国際平和維持活動の必要性を無視できず海空自衛隊にも補えないという問題があり、装甲車はトラックやジープなのだから安価なものでもという指摘に対しては装甲車普及以前の各国自動車化歩兵部隊が被った人的損耗に耐えるほど我が国の政治環境は強くない、という事を提示しておかねばなりません。

Fimg_7734 理想としては、装輪車両であっても装軌車両を凌駕するほどの、というのは物理的に無理としても、比肩する程度の不整地突破能力を担保する新技術が開発され、装甲車両に反映されることが望ましいのですが、実際、陸上自衛隊の将来装甲車両体系はどのように展開するのでしょうか。

Simg_0047 一方で陸上自衛隊は新防衛大綱において統合機動防衛力の整備を明示しました。装甲車両は機動力と防御力の普通科部隊への両立を意味するもので、火力戦闘車や機動戦闘車による機動打撃力と火力投射能力に合わせ普通科部隊の迅速な展開を行う上で不可欠な装備体系となる事は間違いないでしょう。

Gdimg_2375 すると、同時に大きな関心事は軽装甲k同社が開発され、当初の少数配備に終わるのではないかとの一部識者の予測を越え、年間100両から200両が生産され全国の普通科連隊へ一個中隊所要と連隊本部所要等が配備されたように、技術研究本部装輪装甲車改は大量配備されるのか、という事です。

Img_4531 特に技術研究本部装輪装甲車改とそれに先んじて配備が開発されるだろう近接戦闘車の導入は、併せて1990年代初頭から大量配備を開始した高機動車の更新車両を続いて高機動車の最新型で実施するのかという部分に繋がるとともに、続いては軽装甲機動車の後継車両についても将来として考えなければならなくなるところ。

Img_0879 このまま装甲車両体系について装輪装甲車に特化し整備をすすめてゆくのか、という視点も気になるところですが、併せて装甲車両をどの程度広範に配備する想定となるのか、開発開始が報じられただけの現状では余りに気が早すぎますが、大きな関心事といえるところです。

北大路機関:はるな

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