北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

次期装甲車、長距離輸送支える陸上自衛隊輸送支援艦logistics support vesselの提案

2014-05-07 23:17:38 | 防衛・安全保障

◆General Frank S. Besson-class LSVの提案

 戦車輸送車か車両輸送船か、本日はこの話題について。

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 重装備を保有したとしても輸送をどうするのか、戦略機動能力が大きな装輪装甲車であっても道路運送車両法を越える大型車両ではそのまま輸送できません、例えば米軍のストライカー装甲車でも車幅が大き過ぎたため輸送車により輸送されています、どうするか。

Timg_0549 戦車は縮小されたものの機動打撃力を考えた場合、次期装甲車をどのような車両として考えるか、具体的には道路交通基準法に基づく車両限界の枠内に抑え、平時の訓練移動を現実的とするか有事の戦術機動力を重視するか、平時に法律上演習場に機動できない水準でも大型車両を導入するかを、前回話題としました。

Mimg_7201 装甲車両についての輸送ですが、戦車や火砲の輸送を現在の視点では戦車輸送車や部分的には鉄道輸送を想定し、その能力整備を検討してきました。しかし、陸上輸送から大きく離れた、輸送艦をチャーターや独自運用を含め陸上自衛隊が運用する、という視点はどうでしょうか。

Img_7507 海上自衛隊の輸送艦となりますと建造費は輸送艦おおすみ型で400億円程度を必要としますので、中々陸上自衛隊が保有する、もしくは海上自衛隊に多数の建造を要請する、という事は出来ないのですが、アメリカ陸軍が運用するフランツベッソン級輸送揚陸艦であれば、20億円程度で米陸軍へ納入されています。

Img_1371h  フランツベッソン級輸送揚陸艦、建造費は米陸軍取得の倍額であっても陸上自衛隊が運用するCH-47JAの50億円と比較すれば安価に抑えられることとなるのですが、輸送力の大きさと維持費の低さは特筆すべきものがある、といえるやもしれません。

Gimg_4060  フランツベッソン級輸送揚陸艦は乗員31名、速力は僅か11ノットで、揚陸は艦首の乗降扉を用いて揚陸し、艦内に浄化槽などを有していませんので長期航海はできず、海水濾過装置も搭載して無い、従って、移動式トイレや給水タンクを搭載しなければならないのですが、しかし輸送力だけは大きい。

Gimg_6712  M-1A2戦車であれば31両を同時に搭載可能です、もちろん重量面で搭載可能というのではなく、艦内容積の面から15両ものM-1A2戦車を搭載できるのです。仮に陸上自衛隊が道路交通法で平時に運用出来ない水準の装甲車を導入しても、1個中隊の戦車一隻で輸送できる、ということ。

Gimg_9694  速力は11ノット、まあ、低速の戦車輸送車よりもさらに鈍足ではあるのですが、交通規制の必要性が無い海上を機動するのですから、速度は最高速度ではなく地点間輸送能力を示す標定速度になります、11ノットは鈍足ですが渋滞の危惧が無いことを加味すれば、決して遅すぎるものではありません。

Img_0620 乗員数の少なさは、海軍艦艇と異なりダメージコントロールを想定していないためです。元々は港湾で揚陸艦や輸送艦と桟橋を移動するための装備ですので、航続距離は数時間程度で交代要員を派遣すればよいのですが、浄化槽や給水タンクが用意できれば2000km程度の航続距離はあるようです。

Img_0518 この種の艦船の利点は建造費の安さや乗員の少なさも指摘できるところですが、それ以上に港湾設備が未整備な漁港などでも浅い喫水を活かし進入し戦車などを搭載できる点で、特定重要港湾以外の小規模な港湾はもちろん、必要ならば海岸線を利用し戦車などを格納出来る事となります。

Mimg_6342_1 護衛をどうするのかという視点はさておき、戦車17両の同時輸送能力は、方面隊の輸送隊換算では1個輸送中隊の1.5倍に匹敵しますので、重車両を含めた装備群であっても、特に旅団規模の部隊でも90式戦車や99式自走榴弾砲に73式装甲車程度の装備であっても、フランツベッソン級輸送揚陸艦が4隻程度あれば輸送出来る事となる。

Img_5018  輸送能力はC-2輸送機やLCACエアクッション揚陸艇よりも遙かに大きくそして安い、強襲揚陸の第一波には低速ですので使えないと限定的ではありますが、人員規模で1個輸送中隊程度で収まる事を意味し、もちろん平時の運用に限るのですが、費用対効果では大きい。

Himg_1430 21世紀に船舶工兵、と陸軍の艦船部隊のような部隊を創設することは多少違和感を感じないわけでもないのですが、専用の輸送艦や燃費が非常に悪い高速カーフェリーを運用するよりは非常に安上がりで、検討の余地は無いかな、と考える次第です。

Mimg_5905 理想としては、陸上自衛隊ではなく海上自衛隊が地方隊単位で3~4隻を整備することが望ましいのですが、予算面での限界は陸上自衛隊と海上自衛隊共に共通する問題です。ただ、陸上自衛隊の輸送科に方面隊単位で3~4隻、この種の船舶があっても問題は無いと思うのですが、どうでしょうか。

北大路機関:はるな

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コメント (2)
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