北大路機関

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海軍記念日(五月二十七日):海からの平和へ改めて『新しい八八艦隊』整備が必要だ

2014-05-27 23:46:39 | 北大路機関特別企画

◆イージス艦八隻&全通甲板護衛艦八隻

 本日は海軍記念日、日露戦争、日本海海戦に勝利し制海権を維持し講和への大きな躍進となった記念日です。

88img_274_2 我が国は日露戦争へ、戦艦六隻と装甲巡洋艦六隻から成る六六艦隊を明治期に整備し、ロシア海軍へ挑みました。その後、海軍は第一次世界大戦後の国際情勢へ対応するべく、ポストジュットランド型超弩級艦について、戦艦八隻と巡洋戦艦八隻から成る八八艦隊の整備へ着手しました。しかし、戦間期の国際公序となった軍縮へ呼応し、戦艦長門と陸奥のみ完成、加賀が船体を空母に転用したのみで、実現には至りませんでした。しかし、八八艦隊の呼称は戦中戦後も幻の艦隊計画として語り継がれたのはよく知られているところです。

88img_4731 海上自衛隊では、初のヘリコプター搭載護衛艦はるな就役後、ひえい、しらね、くらま、と艦隊航空能力を司る艦艇が整備され、紆余曲折を経てその後汎用護衛艦にも各一機の哨戒ヘリコプターが搭載されるに至り、対潜掃討任務及び制海権確保へ必要な作戦単位に関する研究の末、海上自衛隊機動運用部隊である護衛艦隊の基幹部隊、四個の護衛隊群を、護衛艦八隻&哨戒ヘリコプター八機、を基本単位とする、海上自衛隊版八八艦隊が最適とされ、90年代までに四個護衛隊群を四個の八八艦隊へ改編しました。

88img_1324 新しい八八艦隊、海軍記念日に北大路機関はこの編成の必要性を提示したいと考えます。長くWeblog北大路機関をご覧戴いた皆様には旧知の持論を再度もしくは再々度です。新しい八八艦隊とは“イージス艦八隻&全通甲板護衛艦八隻” を以て護衛艦隊を構成する、という提案です。イージス艦八隻&全通甲板護衛艦八隻、かなりおおきな計画案に見えましょうが、現行の護衛艦隊は新中期防衛力整備計画完成時には四個護衛隊群はイージス艦八隻&全通甲板護衛艦四隻となります。

88img_1103 現在の護衛艦隊は四個護衛隊群より編成され、各護衛隊群は対潜掃討中枢任務編成護衛隊と防空弾道ミサイル防衛中枢編成護衛隊、つまり、多数のヘリコプターと集中運用するヘリコプター搭載護衛艦(DDH)や弾道ミサイル防衛に対応するイージス艦(DDG)という通常の護衛艦(DD)よりも突出した性能を持つ艦について、ヘリコプター搭載護衛艦を中心とした護衛隊とイージス艦を中心とした護衛隊、この二つから護衛隊群を編成しているわけです。護衛隊:DDH&DDG&DD&DD+護衛隊:DDG&DD&DD&DD,というもの。

88img_1421 新しい八八艦隊案は、DDH中心の護衛隊とDDG中心の護衛隊という編制を統合し、護衛隊群は二個護衛隊を基幹とする編成を現行のまま維持しつつ、各護衛隊は全通飛行甲板型ヘリコプター搭載護衛艦・ミサイル防衛対応イージス艦・汎用護衛艦・汎用護衛艦、で編成する案です。現在の編成が整備開始された当初はヘリコプター搭載護衛艦を中心とする護衛隊にはイージスシステムでは無く従来型のターターシステムを搭載したミサイル護衛艦が防空用に配備されていましたが、イージス艦に置き換えられるため、防空格差が無くなります。

88img_1587 イージス艦は、こんごう型四隻、あたご型二隻が配備されていますが、ターターシステム搭載はたかぜ型二隻がイージス艦へ置き換わり、四個護衛隊群を構成する八個護衛隊全てにイージス艦が配備、これらは艦隊防空に加え弾道ミサイル防衛任務にすべて対応します。即ち護衛隊群に所属する護衛隊はその編成如何を問わずすべて弾道ミサイル防衛任務へ対応することとなり任務に投入されるのですから、それならば、ヘリコプター搭載護衛艦を四隻増備し各護衛隊を同一編成としたほうが、更に運用の互換性が高まるのではないでしょうか。

88_img_4051_1 ヘリコプター搭載護衛艦、はるな型はるな、ひえい、しらね型しらね、くらま、この艦種は世界的に見て特種な艦型です。哨戒ヘリコプター三機と情報中枢機能を一手に担う艦艇で、特に海上自衛隊は米海軍でいうところの駆逐艦に艦載運用する軽量な対潜ヘリコプターではなく、空母に搭載しソナーなど比較的高度な装備をもつ大型の哨戒ヘリコプターの運用を重視してきました。当初はヘリコプター搭載護衛艦二隻を集中し六機のヘリコプターを運用してきましたが、これは米空母の回転翼対潜哨戒飛行隊の機数と同数です。

88_img_4262 ヘリコプター搭載護衛艦を旗艦とする編成へ、八八艦隊が整備された際、はるな型しらね型を中心とした対潜掃討群の運用は一つの頂点を迎えると共に、海上自衛隊は、より大型で満載排水量19000tに達する全通飛行甲板型護衛艦として、ひゅうが型ひゅうが、いせ、を建造、満載排水量を25000tに拡大した護衛艦いずも型の建造に着手し、洋上航空機の集中運用を、従来の護衛艦はるな型に依拠しつつさらに高度な洋上航空機運用体制を構築してきました。

88img_2170  新しい八八艦隊案を提示した背景には、諸外国が政治的シンボルというようなかたちで軽空母を建造する事例が散見されるなか、全通飛行甲板型護衛艦を一つの装備体系として研究し運用し維持する方策を海上自衛隊が構築し、そのノウハウを最大限活かす手法を組織として部隊として会得した点に注目すると共に、航空機の柔軟性と汎用性を活かす点、全通飛行甲板型護衛艦は将来的にF-35B戦闘機に代表される小型空母や強襲揚陸艦の全通飛行甲板から運用可能な戦闘機を搭載し運用し得る点、以上の二つを強化するものがあります。

88img_2287_1 我が国が直面する脅威は、多々ありますが海上自衛隊へ課題として想定される任務は、本土直接侵攻対処、局地侵攻及び島嶼部防衛対処、シーレーン防衛、国際平和維持活動、大規模災害対処、以上のようなものがあるでしょう。新しい八八艦隊は本土直接侵攻対処任務においては稼働部隊全力の複数護衛隊群が対潜掃討を行いつつ敵勢力へ接近もしくは制海権を確保、従来は艦対艦誘導弾に限られた投射力を仮に艦載機としてF-35Bを運用できれば、非常に遠距離からの打撃が可能となりますし、策源地攻撃を行うことも可能でしょう。

88img_2131_1 局地侵攻及び島嶼部防衛対処では、機動運用可能でイージス艦により対艦ミサイル及び実用化試験中とされる対艦弾道ミサイルからの防護力が大きな護衛隊は、局地防空任務として航空自衛隊の基地機能の補完、水陸両用部隊を支援する空中機動部隊の補完、全面戦争に至らない局地戦域では一個護衛隊群が正面に展開し稼働部隊全てが拡大阻止任務に当たり、状況の早期鎮静化と拡大阻止に当たることが出来るでしょう。本土直接侵攻対処と局地侵攻及び島嶼部防衛対処では共通する部分は多い。

88img_0393  新しい八八艦隊は国際公序に資する艦隊でなければなりません、旧来の帝国海軍や国際貢献時代以前の専守防衛時代を踏襲することなく、国際の平和と安全に寄与するべく国際公序としての海洋秩序、海上交通の自由と開かれた海の保障へ、参画しなければなりません。この点で米海軍や、公海上を含めた海洋の専有を目指す勢力への対応にインド海軍が南シナ海地域での哨戒任務を構想しており、八八艦隊であれば、ローテーションでその一翼を担う事も可能です。

88img_8204 シーレーン防衛では、対航空母艦対処任務が重責となります、陸上航空基地の戦闘機戦闘行動半径圏内であれば、F-15JとE-767の協同により航空優勢を確保しつつ航空撃滅戦を展開、その下でF-2支援戦闘機のASM-2/3の飽和攻撃、P-3C/P-1哨戒機からの対艦ミサイルの飽和攻撃、以上を反復することでほぼ確実に無力化が可能ですが、陸上航空基地、その圏外において航空母艦が脅威行動を採った際には、ヘリコプター搭載護衛艦のF-35Bに重責が掛かりましょう。ヘリコプター搭載護衛艦二隻、護衛隊群で一個航空隊運用出来ればよい。

88img_8401 F-35Bは、取得費用でP-1哨戒機に匹敵する大きな装備で、場合によってはSH-60Kとその後継機、SH-90となるのかSH-101となるのか未知数ですが、P-1とSH-Xの一部取得数に再検討を加える必要は出てくるやもしれません。一個航空隊を12機編成とし、護衛隊群四個で予備機を加えれば50機以上、60機近くが必要となります。F-35Bの要員を養成する練習機は航空自衛隊にしかありません、他方で、陸上基地の支援を受けられない地域で独立した運用を行うためには不可欠な装備で、統合運用により対処するべきでしょう。

88img_7784 国際平和維持活動、大規模災害対処、これら任務では洋上からの航空拠点としての能力は大きな機能を発揮します、フィリピン台風災害統合任務部隊派遣における護衛艦いせ、東日本大震災における護衛艦ひゅうが、の活躍は今更敢えてしめすまでもないでしょう。加えてイージス艦による航空統制能力が期待できますし、汎用護衛艦に搭載するヘリコプターの整備支援機能としてのヘリコプター搭載護衛艦が有する航空機整備支援能力も非常に大きな能力を発揮すると考えて間違いありません。

88img_8062 新しい八八艦隊、その整備にはヘリコプター搭載護衛艦四隻の増備が必要となります。しかし、幸いなことにヘリコプター搭載護衛艦はイージス艦よりも建造費が低く運用体系は既に確立されているため新装備導入に伴う有りがちな戦術上の空隙は生じません。F-35BについてはF-35Aを航空自衛隊が導入計画を進めており数年内に配備が始まります、併せて運用基盤も国内に構築されますので障壁は低いでしょう。海軍記念日に際し、改めて様々な任務に対応できる“新しい八八艦隊”の必要性を提示する次第です。

北大路機関:はるな

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