◆軍の現場が暴走と弁明、これでは政治交渉は不能
中国軍機異常接近行動について、本日も掲載することとしましょう。日本政府が抗議し、中国外務省が軍の現場が暴走と弁明しました。
菅官房長官は本日午前の記者会見において中国軍機異常接近行動を一歩間違えれば空中衝突に発展する点を指摘し“極めて危険な行為”として強い口調で抗議し、“決してあってはならない。偶発的な事故につながりかねない極めて危険な行為と認識し、誠に遺憾だ”と述べました。
今回、中国側は自衛隊機へ30mの距離まで接近し、この異常接近が危険な行為として批判されています。30mは日常の距離では遠く感じますが、哨戒機や輸送機の全幅が30m程度ですので、空中での30mの接近は衝突事故につながりかねず、実際、過去には中国軍機が曲技飛行紛いの異常接近の末に衝突し墜落する事案も発生しています。
中国外務省は弁明に必死で、異常接近により空中衝突の危険が生じたことが最大の問題であることを、そもそも異常接近のことには触れず、軍の現場が暴走し生じた、との見解を示しました。護衛艦ゆうだち、への射撃管制レーダ照射の際にも同様の報道があったことを思い出される方も多いでしょう。
軍の現場が暴走、これは日経新聞が中国外務省筋の話として報じたもので、中国軍の行動は正当な権利としつつ、軍の現場が暴走し、日中関係の雰囲気を壊すことも懸念する、という内容を報じました。軍の現場が暴走し勝手に戦端を開く、とは戦前の大陸における日本軍の話のようで、凡そ21世紀の軍隊とは思えません。
日経新聞報道では中国国防省が日本側に一切の偵察と妨害活動をやめるよう求め、緊急に抗議したとしていますが、これは我が国に隣接する区域での軍事演習に対して、我が国として関心を持たざるを得ず、もとより日本側へ履行を期待したものとは考えられませんが、我が国は逆に断固とした対応を示すべきでしょう。
仮にこうした無理な主張が為される場合には、周辺地域での大規模演習への関心を持つことは独立国としての正当な権利だ、と撥ね付けるか、逆に日本側が対して中国側に東シナ海での一切の軍事演習を慎むよう要求すれば呑むのか、と問うべきかもしれません。
もっとも、ここまで踏み込んだ提案では無く、今回の異常接近事案について、我が国は中国側へ接近を強行した責任者の処罰を要求するべきなのでしょうか、ゆうだち射撃管制レーダ照射事件の際も同様でしたが、中国側は其処に相手が存在することが悪い、と話題のすり替えばかりを行っており、状況がすり替えばかりで打開できない現状では一つの姿勢を突き付けるという必要は出てきます。
中国外務省の“軍の現場が暴走”、という報道は非常に日中関係に不確定要素を与えるもので、現場の独断専行横行する危険な中国軍、という視点で見た場合、例えば日中間の政治問題を外交上平和的に解決したとしても、中国軍が独断で軍事行動を展開し、平和的な外交妥結を軍事力で突如覆す可能性を示唆しているわけです。
こう考えますと、日本側としては、中国政府は人民解放軍に対する文民統制を強化し、人民解放軍の位置づけを中国の外交政策と政治が一体として周辺国との交渉を行う際に、中国政府の方針を現場の独断で霧散させないよう、政軍関係をしっかりとしたものとするよう、要求するべきでしょう。政治的妥結を日中が求めたとしても中国軍が独断で破綻させてしまう、という中国外務省の視点を放置しては、中国は世界のどの国とも友好関係を永続させる事は出来なくなります。
北大路機関:はるな