北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

観測ヘリOH-6D 真の後継機は何か

2007-02-18 17:54:31 | 先端軍事テクノロジー

■観測ヘリコプター数の減退

 陸上自衛隊では、特科火砲の弾着修正や索敵任務用途に1954年からH-13HヘリコプターとL-19固定翼観測機を運用しており、1969年よりOH-6Jを運用開始、現在では改良型のOH-6Dと代替機である国産のOH-1が配備されている。

Img_0590  OH-6Dは193機が調達され、師団飛行隊や旅団飛行隊の中核機種を構成するほか、対戦車ヘリコプター隊のスカウトヘリとして、また方面ヘリコプター隊の連絡用ヘリ、航空学校における練習ヘリとして運用されている。

 極めて簡便な設計であるがそれが幸いし高い野戦整備性能と、特筆すべき運動性を発揮し、諸外国ではTOWミサイルを搭載した対戦車型や米軍ではAH-6として特殊戦支援ヘリとして運用されている。陸上自衛隊でも試験的に機銃を搭載した火力支援型の実験を行ったほどである(H-13Hに64式MATを搭載する実験なども行われていた)。

 1990年代からは赤外線サーチライトを搭載したナイトビジョン型(NVG型)、その一部には赤外線前方監視装置を搭載し夜間運用能力を向上させたNVG/FLIR型の導入が実施されており、従来の肉眼による光学情報に依拠する観測ヘリと比して、その能力は相応に近代化されているという。

Img_9990  しかし、近代化されたとはいえ、基本的には1950年代の設計であるOH-6の能力には限界があることも否めないとして、米陸軍において進行中であった次期観測ヘリ計画RAH-66偵察ヘリの開発にも刺激されるかたちで、陸上自衛隊でも電子光学センサーを搭載し、更に自衛用の装備を有する観測ヘリコプターの必要性が高まり、1992年より川崎重工を主契約企業としてOH-Xの開発が開始され、1996年8月6日に初飛行している。

Img_0239  極めて高い性能を有するOH-1であるが、やはり価格も高い。平均価格で24億円程度というもので、やはり16億円程度(に収まるといわれていた)RAH-66を調達した方が良いのではないかとの指摘もあった中、RAH-66の単価が100億円以上となり、それも不可能となるわけだが、有限の防衛予算下では調達できる観測ヘリの数量にも限度があり、現存するOH-6Dは150機程度であるのに対して、OH-1は25機程度。結果的に観測ヘリの総数は全般的に縮小しているという状況がある。

Img_0247  米陸軍は価格が高騰しすぎたRAH-66の代案としてベル407をもとにしたARH-70を開発し、350機程度を調達する構想であるが、価格は1500万ドル程度といわれ、最新の索敵機器と全天候飛行性能を付与させた場合は相応の価格になってしまうことを端的に示している。さて、米陸軍ではこれを補完するべく、RQ-8B無人観測ヘリを導入する計画である。これはOH-6並のシュワイツアー333という四名乗軽ヘリコプターを無人化したもので米軍新型旅団の基幹航空装備となるようである。

Img_0592  陸上自衛隊では新無人偵察機システムとして富士重工製の無人観測ヘリコプターFFOSを導入し、湯布院駐屯地の西部方面特科隊第302観測中隊において運用試験を展開中である。

 FFOSはいわば大型のラジコンヘリというべき機体ということもあり、小型であり行動半径も50km程度、当然滞空時間も短く、着弾観測用途の装備でしかないように思える(イラクの宿営地警備用にFFOSが用いられなかったことがこれを端的に示しているように思える)。

Img_8070  この点、OH-1への高性能化と同時進展する数的減少を補完する為には、RQ-8Bのような高性能無人観測ヘリの導入が必要と思えるのは小生だけであろうか。

 特に、着弾観測以上に索敵といった積極戦闘関与には相応の行動半径が必要であり、更にMLRSや88式地対艦誘導弾といった長射程特科装備の普及に対してはFFOSの性能では不充分に思えるためである。

Img_6771_1  陸上自衛隊の場合、航空自衛隊用の無人偵察機の項目でも述べたが、無人航空機という概念がないことから生じる命題であるものの、最も大きな障壁として考えられるのが、航空法上の位置づけが不明確であるという点、また、特科装備であるFFOSが本格的無人索敵用途に性能不充分であるとしても従来観測ヘリの改修による無人型は、航空科装備であるのか、特科装備であるのかが不明確であるという点が気がかりである。

Img_3275_1  何となれ、価格面からOH-1は真のOH-6Dの後継機となりうるかは微妙であり、無人機との併用を考えるか、別のOH-Xを選定するかなど、考えるべき点はあるように思われるのである。他方、ロングボウレーダーを搭載したAH-64Dをどの程度OH-1が支援できるかは議論されるべきであり、観測ヘリ体系はその在り方から再検討が為される必要も生じてくるのかもしれない。

HARUNA

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