北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

新しい任務 KC-130H空中給油輸送機

2007-02-08 13:51:42 | 先端軍事テクノロジー

■18年度概算要求に盛り込まれた計画

 平成18年度の“防衛力整備と概算要求の概要”の36頁に“C-130Hへの空中給油機能の付加”という記載があった。なお、自衛隊の従来型C-130Hに併せ掲載しているが、記事に記載されているKC-130の情報は基本的に米軍が運用しているもののデータであることをお断りしておく。

Img_8551 その概要は、18年度要求としてUH-60Jヘリコプタ御への受油機能の付加が第一に盛り込まれ、機内への燃料制御パネルの付与、燃料配管の改良と空中受油装置の追加が盛り込まれ、またC-130H輸送機に対してはコックピット上部への受油口、燃料配管の改良、操縦席への給油ポット制御パネルの追加うぃ実施、しかるのち19年度以降(確たる年度は記載されていない)に機内設置式燃料タンク、空中給油ポットの左右主翼への装備が行われる計画を記載していた。

 同時に36頁には参考写真ということか、米空軍のKC-130による救難ヘリコプターへの空中給油の様子が描かれており、概算要求におけるその目的も航空救難体制の充実が目的であると考えられる。

 間もなく日本に到着するであろうKC-767とはヘリコプターへの空中給油方式が異なる為、輸送機への空中給油機としての機能が付与されるということであろう。

Img_8109  航空自衛隊では1981年より新輸送機としてC-130Hを導入し、1998年までに16機を受領している。当初はC-1輸送機の胴体延長とエンジン換装による新輸送機の開発が構想されたがリスクが高いのではないかとの判断によりC-130の導入に至った。航空自衛隊では1950年代中頃よりC-130に関する情報収集を進めており、要約念願の導入となったわけであるが、現在開発中のC-Xにより任務の一部代替が考えられ、その一環として空中給油機への換装が構想されたのではないかと推測する。

Img_3194_2  C-130Hは、導入以前に運用されていたC-1輸送機と比べ確かに搭載能力などでは進歩した部分があるものの、戦略輸送機の輸送した装備を末端に分配する為の戦域内輸送機であり、16㌧の最大ペイロートを搭載した場合の航続距離は3795kmでしかない。これは1990年代以降、国際人道任務への対応として南米やアフリカに派遣される時代となっては残念ながらその能力は充分とは言いがたい状況となっている。

Img_8788_1  さて、米空軍などが運用しているKC-130空中給油輸送機は二機に対して同時に給油が可能であり、またヘリコプターのような低速機に対しての空中給油能力を有すると同時に、米軍の場合は最大速度250ノットでは戦闘機に対する給油能力を有している(艦載機などがこの方式で給油を受ける)。

 航空自衛隊の空中給油機の関する構想もこのように米軍のKC-130と同型の者となるように思う。

Img_8163  燃料の搭載能力は、機内のカーゴスペースに7000ガロンの燃料を搭載出来ると同時に、この機内カーゴスペースは燃料を搭載していない状態では通常の戦域輸送機としても運用が可能である。空中給油機として運用する際には主翼のエンジン外側に搭載し、28.3㍍のProbe-and drogue(吹流しの付いた給油装置)を搭載する。これは左右の間隔が30㍍あるため、二機の同時給油も安全に展開できる。この主翼下のタンクにはそれぞれ1360ガロンの燃料が搭載可能である。

Img_3338  胴体内部の金属製燃料タンクには3600ガロンの燃料が搭載出来、更に主翼内部の自機用燃料タンクに流用可能な6960ガロンの燃料を搭載する。一方で、前線基地などへの輸送にはフレキシブルタンクを搭載する。これはゴム製で誤解を恐れずに記せば、野外浄水装置のようなものに燃料を搭載するものである。従って、必要に応じて輸送機として使えることから有事の際における運用の柔軟性を付与させるものである。

Img_8465  今回の記事は、航空自衛隊の構想としてC-130Hへの空中給油機能付与という構想があったのを受けて、米軍のKC-130に関する特集を組んだ。これは災害派遣や航空救難への対応能力を強化するこの構想は現在どの程度進んできるかは不詳ながら、将来的には特殊作戦支援、また米海軍艦載機への緊急時の空中給油などの能力付与を意味するものであり、その進展も期待したい。

HARUNA

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コメント (9)
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