■零細時間の有効活用
日々所用は多々あれど、休まるとき無し、活用してこその零細時間、そんな訳で本日は久々に思い切って岐阜基地へ展開した。京都特集から自衛隊特集へ転換である。
航空自衛隊は戦闘機だけでもF-15J要撃機203機(複座型を含む)、写真のF-4EJ改を91機、F-2支援戦闘機68機(複座型を含む、94機まで生産予定)という三機種を保有しているがこれらの機体を一度に見ることが出来るのが岐阜基地である。これは、飛行開発実験団が基地に展開しており、また、T-4や海上自衛隊のP-3Cの生産を受け持つ川崎重工の工場があることから基地が公開されていなくとも、平日であれば様々な自衛隊機を見ることが出来る。
平日の撮影ポイントだが、滑走路エンド付近は防音の観点から国有地になっており、また農道や牧草地など立ち入り制限は無く、視界は開けていることから撮影環境は良好だ。ただし、携帯口糧や飲用水の補給点は近くに無く、展開前に予め補充する必要がある。
現場に到着し望遠レンズ付カメラを構えると、轟音とともに接近する機影一つ、さっそくT-4練習機の着陸である。しかも外来機だ。
更に飛行開発実験団所属のT-4が離陸後タッチアンドゴーの訓練を繰り返し、その後着陸する。
滑走路エンド付近は、まさに着陸寸前の様子を見ることが出来、航空サイトはまた異なった写真を撮影することが可能である。また、航空祭では逆光で名高い岐阜基地も外であれば順光の撮影ポイントを選択肢に含めることも可能だ。
T-4二機、それも着陸態勢のものを撮影した後、しばらくの静穏の中から一際大きい轟音が近付く。
何かの式典か、若しくは実験飛行を終えてのデモンストレーションか、その事由は不明ながらも、近付くのはF-2とF-4EJ改の二機編隊である。開けた視界からその接近は容易に知ることが出来、エアバンドレシーバーが無くとも撮影準備に入れるのも岐阜基地周辺での撮影では特色といえる。
F-1支援戦闘機の退役と、F-2支援戦闘機開発の時間的間隙を担うべく改修されたF-4EJ改はエンジンこそJ-79のままであるが、火器管制装置などを一新し、対艦ミサイルの運用能力などを付与され、洋上阻止戦闘の一翼を担うに至った。他方、F-2は日米共同開発という政治的要素の中でも最大限開発した機体であり、この日米共同開発から学んだ様々な点がその後の国産航空機開発に活かされることが期待される。
当初、130機生産予定であったF-2は、その後96機に生産数を下方修正され、F-X選定の遅延などから101機乃至103機まで生産数は回復するのではないかとの見方もあったが、19年度予算分を含む94機にて生産を修了する見込みである。一説には、生産分担の一翼を担うロッキードマーティン社が日本が行う長期少数生産に対し、ライン維持が経済的合理性から費用対効果の観点でマイナス面が大きく、これが早期の生産終了に至ったのではないかとの見方がある。
これは諸説ある中の一説に過ぎないが、19年度防衛予算ではF-15Jの近代化改修費用を全てF-2新規調達にまわすなど、やや不可解な点もあり、納得のいく説明が為されなければ、日米共同生産という要素の問題点として記録され、結果的に次期主力戦闘機などでは日米共同生産を伴う共同開発という選択肢は除かれ、国産かライセンス生産という中で開発される、という余地を残したといえるのではないか。
続いてファントム、即ちF-4EJ改が着陸する。この機体の後継機をめぐるF-X選定として間もなく結論が出されるのだが、現在挙がっている候補は、ロッキードマーティン社製F-22A、ボーイング社製F/A-18E、同じくボーイング社製F-15E、更に欧州共同開発のユーロファイタータイフーンである。F-22については非常に高価ながらステルス性や超音速巡航性能など多くの利点があり、NHKの報道などではF-Xの報道では筆頭に挙げられる機体であり、絶対航空優勢確保には是非とも必要な機体だ。
F/A-18E、F-15Eという対地攻撃能力の大きい機体が挙げられているが、これは国産のAAM-4やAAM-5空対空ミサイル、更にはASM-4というような各種国産装備の運用を可能とするべくソースコードの完全開示が為されなければ利点の無い航空機と考えてしまう。さらにF-15Eの場合はAPG-70レーダーの搭載可否も重要である。他方、いわゆる当て馬とされる欧州機、ユーロファイターは近年、U-125やMCH-101という欧州機導入の風潮から上記の部分がクリアできれば採用の余地が充分あり、特にF-4EJ改のASM運用能力を継ぐ機体として高い性能を有している。
防衛大綱改訂の際に戦闘機数縮減を行う名目として挙げられた少数絶対優勢を期するとの観点からはF-22Aが採用されるべきであり、他方これが米連邦議会の反対など政治的問題から実現しないのであれば、タイフーンが採用されるべきであろう。というのも、1990年代のF-X選定ならば最有力機種として挙げられただろうが、F/A-18EやF-15EはFSX計画において開発母体候補として挙げられたF-15やF/A-18Cの派生型であり、一言で言えば過去の機体、基本設計の古さや将来発展性の限界などが垣間見えるからである。
特にF-15Eに関しては“F-15Jとは全く異なる新しい機体”としてその先進性を推しつつも、“航空自衛隊でのF-15Jの運用実績と共に”という相反する売込みが為されている部分が気にならないでもない。他方でF-22については、近代化改修に対応していないF-15J非MSIP機の後継機選定の頃には生産が終了している可能性があり、導入するならばF-4EJ改後継機として導入されることが最後の機会ともなりうる。
ファントムに続きこちらに向かうのは、外来機として美保基地より飛来したT-400練習機。
C-1など輸送機のパイロットを養成する機体である。しかし、速度などの特性ではC-1やC-130とビジネス機である本機は相違点もあるように思が、この種の機体は多用途機として、更に間もなく導入されるKC-767や政府専用機として中古機体の導入が提唱されるC-767などの練習機として需要は高い。
続いてこちらに向かうのは、なんとOH-1観測ヘリコプター初号機である。明野から川崎重工岐阜工場へ定期検査に飛来した者と思われる。現在、AH-64D戦闘ヘリコプターの支援用途に用いられる戦術レーダーの運用試験を実施中であり、スタブウイングに白いレーダーが搭載されているのが確認できる。ただ、データリンク性能に優れたAH-64Dの支援用に必要なこのシステムであるが、ここにレーダーを搭載すると自衛用AAMの搭載に支障を来すと感じるのは小生だけだろうか。
林の中から姿を現したOH-1,観測ヘリとしての運用を印象付けるこの写真だが、林の向こうは工場である。さて、量産機は良く見るものの縁のなかったOH-1初号機を初撮影した有意義な日であった。C-1や県警のヘリコプターの飛行が見られなかったのが唯一残念であったが、意気揚々と帰路に着いた。
HARUNA
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