ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『コドモ警察』2012

2019-08-23 00:00:06 | 刑事ドラマ HISTORY









 
いまだに『太陽にほえろ!』の復活を待望してるファンもおられるみたいだけど、我々が愛した『太陽』はもう、二度と再現する事は出来ません。

相応しい俳優もいない、アクションの撮影も困難、今なら確実にビデオ撮影だし、根本的に時代背景がもはや違い過ぎます。『太陽』が好きであればあるほど、観れば失望すること必至でしょう。

そんな不毛な望みを抱くよりも、新しいドラマに目を向けた方がよっぽど楽しいです。そこには確実に『太陽』の遺伝子が宿ってますから。

つまり、少年期から思春期を『太陽』を観て過ごした世代が今、映像業界の中心で活躍されてるワケです。『ケータイ刑事』シリーズ等が典型例で、様々なジャンルで『太陽』オマージュやパロディが見られます。


☆『太陽』遺伝子を最もストレートに受け継いでるのは、TVドラマよりCMの世界かも知れません。ゴリさん(竜 雷太)と長さん(下川辰平)が出演し、岸谷五朗さんが新人ブレンディ刑事を演じた、缶コーヒー「ブレンディ」のCMはシリーズ化されました。

缶コーヒーと言えばおなじみ「BOSS」のCMでも、ゴリさんや殿下(小野寺 昭)、テキサス(勝野 洋)、ロッキー(木之元 亮)、そしてボス(ゆうたろうw)らが宇宙人トミー・リー・ジョーンズに刑事魂を叩き込みました。

あと、SMAPの草なぎ剛くんがジーパン(松田優作)のコスプレをして「なんじゃこりゃあーっ!?」ってやったのは、デジカメのCMでしたね。あれはスベってましたw

給湯システムのCMで小野寺昭さんが「ボス、電化(殿下)だ!」ってダジャレを言うのもあったし、ENEOSのCMでは竜雷太さんが「エネゴリさん」と夢の共演を果たされました。


☆『太陽にほえろ!』は『水戸黄門』や『サザエさん』『ドラえもん』『巨人の星』等と並んで、誰もが知ってる番組ゆえにパロディのネタにされ易いんですね。バラエティー番組では数限りなく『太陽』パロディがありました。

ドラマとバラエティーが融合したような’80年代の番組『翔んだカップル』では、柳沢慎吾さんが山さん(露口 茂)を真似た『太陽にまねろ!』ってコーナーがありました。ノッポなADさんがジーパン役を演じて、そのコスプレ衣装は全て慎吾さんの自前だったそうですw

とんねるずの番組では『太陽にぽえろ!』『太陽にほえるな!』等で石橋貴明さんがやってた、バミューダ刑事が印象深いです。木梨憲武さんが山さん役で、そう言えば確か本物のトシさん(地井武男)も出ておられました。この辺りから地井さんが「チイチイ」って呼ばれるようになったんですよねw

ほか、ドリフターズやダウンタウン、ビートたけし氏も『太陽』はよくネタにしてました。だけど最近はもう、誰もが知ってるTV番組なんて皆無ですから、パロディという手法そのものが減ってますよね。


☆特撮ヒーロー物にも『太陽』遺伝子は受け継がれており、中でも『特捜戦隊デカレンジャー』はストレートに’70~’80年代の刑事ドラマにオマージュを捧げてました。

なぜかボスが顔だけ犬なんだけどw(まさにデカワンコ!)、扱われ方が刑事ドラマのボスそのものなんですよね! 最終回で大爆発に巻き込まれ、死んだと思われたボスが、スローモーションで炎の中から歩き出して来る姿は、完全に石原裕次郎気取りでしたw

『太陽にほえろ!』のボスにせよ『西部警察』の団長にせよ、何があっても死なないし、なぜ死なずに済んだのか、ボスや団長に限っては説明不要なんですよね。死なない理由はただ1つ、ボスだからです。

その場面を観て『デカレンジャー』のスタッフが私と同世代である事を確信しました。道理で、’70年代アイドルの石野真子さんがレギュラー出演されてたんですよね。

ほか、私は未見ですが『鳥人戦隊ジェットマン』の最終回がマカロニ殉職編とソックリだったそうです。アニメの『勇者警察ジェイデッカー』もオープニング映像の構成とメンバーのネーミングがモロ『太陽』だったとか。(Wikipedia情報)


☆あと『太陽』OBのキャストによるセルフパロディも多々ありました。東映Vシネマ第1弾の『クライムハンター』は主演がボギー刑事の世良公則、敵役がブルース刑事の又野誠治で、役名が「ブルース澤村」でしたw

中村雅俊&勝野 洋が凸凹コンビを演じる映画『刑事珍道中』では、雅俊さんがこれからエッチしようとしてる女性に「テキサス刑事が好きなの」って言われてゲンナリする場面がありましたw

ドラマ『大追跡』では沖 雅也さんが「スコッチ刑事って最高ですよね」って言ったら、相手の女性に「ジーパン刑事が好きなの」って言われてショボンとする場面がありましたw

そのジーパン刑事=松田優作さんはドラマ『探偵物語』で、子分に捜査を指示する時には「ゴリ、殿下、ロッキー!」ってアドリブをかましてましたw


☆もっと本格的なオマージュを捧げたドラマと言えば、まずは前述の『ケータイ刑事』シリーズが挙げられます。

宮崎あおい、堀北真希といったフレッシュな若手女優を起用し、ブレイクさせた点が「新人俳優の登竜門」と云われた『太陽』を彷彿させる上、実際『太陽』でスニーカー刑事だった山下真司さんをヒロインの相棒役に起用、役名もそのまんま「五代 潤」としました。

『トリック』の堤幸彦監督もどうやら『太陽』フェチで、『ケイゾク』『SPEC』で竜雷太さんを起用して「昔はゴリさんだった」事を小出しに匂わせたり、ヒロイン(中谷美紀)にジーパン刑事と同じ「柴田 純」って役名をつけたりしてました。

多部未華子主演の『デカワンコ』は、『太陽にほえろ!』のテーマ曲をリミックスしてそのまま使っちゃうという、大胆なオマージュで我々の度肝を抜いてくれました。

このドラマは一見、単なるネタとして『太陽』を扱ってるように見えるけど、実は根本的な部分で『太陽』スピリットを忠実に受け継いでる番組なんですよね。

例えば、新人刑事=ワンコの成長を軸に物語が組まれてること。毎回コンビを組む先輩刑事が入れ替わり、それぞれのやり方で刑事魂を伝授していく構成は、初期の『太陽』そのまんまです。

そしてニックネーム。鼻が効く+一子という名前=ワンコ、っていうネーミングの方程式は、かなり『太陽』的センスに近いと私は思います。ボス、シゲさん、コマさん、ちゃんこ、デューク、キリ等、他の刑事達も七曲署にいてちっとも不思議じゃないニックネームでした。デュークは実際にいたしw

さらに、安上がりな屋内推理劇でお茶を濁す捜査ドラマばかり粗製濫造されるこのご時世に、『デカワンコ』はロケを多用し、立ち回りによるアクティブな逮捕劇をきっちり見せてくれました。何より、新人刑事であるワンコ=多部ちゃんが、ホントによく走ってくれました。チョー鈍足という捻りは加えてあるものの、『太陽にほえろ!』=「走る新人刑事」ですからね。


☆さて! ここでようやく『コドモ警察』の登場ですw

本放映は2012年の春シーズン、MBS(毎日放送)が制作し、TBS系列で深夜に放映されました。脚本とメイン演出は『東京DOGS』や『勇者ヨシヒコ』シリーズ等で知られる福田雄一さん。

数あるオマージュ作品の中でも、この『コドモ警察』ほどストレートに、そして大真面目に『太陽にほえろ!』を再現したドラマは空前絶後かも知れません。

何しろ、刑事達が(新人刑事以外は)全員コドモですからw、どんなにストレートに真似しても『太陽』と同じには絶対ならないし、真面目にやればやるほど笑えちゃうワケです。この発想はホントに素晴らしい!

ただパロディとして面白いだけじゃなく、我々世代にとってはある種ノスタルジーなんですよね。我々がコドモだった頃、オトナの刑事になりきって「太陽にほえろ!ごっこ」をやってたのと、まったく同じ光景がテレビ画面に映ってるワケですから。(あんなに本格的なコスプレは出来なかったけどw)

だけど演じてる子役たちは『太陽』を全く知らない世代なワケで、なのにオトナでも言いづらそうな難しい台詞やキザな台詞を、舌っ足らずな声で一生懸命言ってる姿が、見てて愛おしくなって来ちゃう。

その子役たちのキャスティングにしても、ホントに『太陽』のオリジナルメンバーたちが敵組織「レッドヴィーナス」の罠(吸うと身体だけコドモになっちゃう特殊ガス)でコドモにされちゃったみたいな、個性と実力とスター性を持った子ばかりが選ばれてる。

「デカ長」の鈴木 福くんは子役界の大スターで、まさに『太陽』のボス(石原裕次郎)を彷彿させるオーラを放ってます。その根っから明るい性格も、太陽をイメージさせるボスそのもの。

「マイコ」の本田望結ちゃんは『あぶない刑事』の浅野温子さんがモデルらしいけど、あんな気が狂ったキャラとは全然違いますからねw 実年齢とはアンバランスな色っぽさは、やっぱり『太陽』のシンコ(関根恵子)にリンクしてると私は思います。

「ナベさん」の鏑木海智くんは山さん(露口 茂)がモデルっぽいけど、雰囲気はむしろ長さん(下川辰平)ですよねw そのコドモ離れした落ち着きぶりはベテラン刑事そのもの。

「イノさん」の青木勁都くんは見るからに豪傑で食いしん坊、誰がどう見たってゴリさん(竜 雷太)ですw いや、ゴリさんより貫禄ありますw

「スマート」の秋元 黎くんは女性視聴者をメロメロにさせるキュートさで、まさに殿下(小野寺 昭)そのもの。彼の場合はコドモなんで、男の私ですらメロメロになりそうですw

「ブル」の竜跳くんはジーパン(松田優作)のコスプレをしてるけど、その鬱陶しいほどの熱血ぶりは『太陽』の歴代新人刑事を集約したようなキャラクターですね。

「エナメル」の相澤侑我くんだけは、誰がモデルになってるのか判りません。非常に現代的なチャラ男で、恐らく『太陽』がずっと続いてたらこんな新人刑事も登場したのでは?っていう発想で生まれたキャラクター。

「新人」(なかなかニックネームを決めてもらえない)の勝地 涼くんは、1人だけオトナですw 確かな演技力を持つ俳優を加える事で、番組が学芸会に陥るのを防ぐ目的なんでしょうけど、その人物を一番下っ端のイジられキャラにしちゃう発想が素晴らしいw

さらに、デカ長とデキてるらしい美人鑑識課員に吉瀬美智子、本庁のキャリア警視にマリウス葉(彼が主演のスピンオフドラマ『コドモ警視』も2013年冬シーズンに全10話が制作・放映されました)といったレギュラー陣。

そして2013年春に公開された劇場版には、マリウスくんの上官として元祖「殿下」の小野寺昭さんが登場、本家『太陽にほえろ!』とのリンク役を果たしてくれました。

視聴者が「なんだこれは!?」と驚くような、出現感のある番組をやろうっていう発想から生まれたらしい『コドモ警察』。まさにそのインパクトは最大級で、前述の『デカワンコ』と並ぶ『太陽』オマージュの最高傑作じゃないかと私は思ってます。

この2作品以降、今のところ『太陽』オマージュあるいはパロディで、これと言った作品は登場してません。そろそろ視聴者も創り手も『太陽』を知らない世代が中心になって来たんでしょう。

それでも、『太陽』スピリットは形を変えて色んな作品に受け継がれていく筈。そう信じたいですね。
 
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