ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『ストロベリーナイト』2012

2019-08-09 00:00:06 | 刑事ドラマ HISTORY









 
2012年の冬シーズン、フジテレビ系列の火曜夜9時枠で全11話が放映された、フジテレビ&共同テレビの制作による刑事ドラマ。

先にテレビ朝日系列で放映された『ジウ/警視庁特殊犯捜査係』の原作者=誉田哲也さんの代表作と云われる警察小説『姫川玲子シリーズ』を映像化した作品で、2010年秋に2時間スペシャルとしてパイロット版が放映され、その好評を受けての連ドラ化。

翌年には劇場版も製作・公開され、そのスピンオフとなるスペシャルドラマも放映。さらに2019年春シーズンには二階堂ふみ主演による連ドラ『ストロベリーナイト・サーガ』(全11話) としてリメイクまでされる人気シリーズとなりました。

ノンキャリアから異例のスピード出世を遂げた警視庁捜査一課殺人犯捜査第十係の姫川班主任=姫川玲子警部補に竹内結子が扮するほか、その部下に西島秀俊、小出恵介、宇梶剛士、丸山隆平、係長に高嶋政宏、日下班主任に遠藤憲一、管理官に渡辺いっけい、監察医に津川雅彦、鑑識課主任に田中要次、所轄署刑事に生瀬勝久、そして玲子の天敵となる勝俣班主任=通称「ガンテツ」に武田鉄矢、といったレギュラーキャスト陣。

魅力的な顔ぶれが揃っており、それだけで観る価値は充分にあるんだけど、内容は凡庸な謎解きもので、さして面白いと私は思えません。

ただ、毎回の殺人事件が『羊たちの沈黙』や『セブン』を彷彿させる猟奇性とゲーム性を孕んでること、そして主人公の玲子や部下の刑事たちがそれぞれ過去のトラウマに苦しみながら捜査する姿が、ダークな作風を嗜好する人たちにウケたのかも?

私はそういうのをあまり好まないけど、猟奇的殺人の再現シーンを決して生々しくは見せず、映像技術を駆使してファンタジックに描いた創り手の配慮には好感を持ちました。より過激に描くことが反骨精神=カッコいいと思い込んでる(としか思えない)おバカさんが映像業界には多いですからね。

とはいえ、同じ原作者による『ジウ』にも感じた事だけど、その設定って本当に要る?って思わずにいられない、ストーリー上で機能してるとは言いがたい設定がやけに多いのは気になります。

例えば、玲子が高校生だった時にレイプされた過去のトラウマ。その事件を担当し、親身になって励ましてくれた女性刑事(国仲涼子)への想いが、警察官を志望する玲子の原動力にはなってるんだけど、今でも折に触れレイプされた時の恐怖と苦痛がフラッシュバックする描写は、果たして必要なのか?

さらに、玲子の母親(手塚理美)もその事件をずっと引きずってて、もう30歳にもなる娘をがんじがらめに(そしてヒステリックに)縛り付ける「毒親」と化した姿を、第1話の冒頭でわざわざ見せる必要があったのか?

そういった設定が玲子の天才的な「刑事の勘」を裏付ける理由になってたり、事件の謎を解くヒントになったりするならともかく、単にキャラクターの背景として存在するだけで、ストーリーにはほとんど影響してない。それはまさに『ジウ』における基子(黒木メイサ)の複雑すぎて誰も共感できないトラウマ設定や、美咲(多部未華子)につけられた渾名「カンヌ」の無意味さ、そして二人の関係性が何のドラマも生まない投げやりさ等とホントよく似てます。

ならばアクションやお色気でサービスしてくれる『ジウ』の方がよっぽど面白いと私は思うんだけど、それでも『ストロベリー~』の方がヒットしたのは、やはり大方の視聴者がアクションより謎解きを好むのと、何となく面白いものを観てるように錯覚させる「魅せ方」が『ジウ』より巧かったという事でしょう。

ついでに言えば、高校時代の玲子にキャスティングされたのが、竹内結子さんとは全く似ても似つかない岡本あずささんである点も意図不明。リメイク版『ストロベリーナイト・サーガ』でも同じように全くタイプの違う2人(二階堂ふみさんと八木優希さん)が演じてますから、これは創り手が「あえてそうした」としか思えません。

あの事件を境に玲子の内面が大きく変わったことをビジュアルで示す、みたいな意図があるんだとしたら、そんなのイタズラに視聴者を混乱させるだけで創り手の自己満足に過ぎないと私は思います。

そもそもドラマ化したり映画化したりするだけの価値がイマイチ感じられない、私には凡庸としか思えない小説やマンガ、あるいは韓国ドラマ等に次から次と、決して安くはないであろう権利料をポンポン支払う日本のテレビ局ってほんと気前がいいですよね。オリジナルでもっと面白いストーリーを、もっと安い金額で書いてくれるライターさんが業界にはいくらでもいる筈なのに……なんとも勿体無いことです。

けど、こういう作品がヒットしてしまうんですよね。そんな世の中なんです。
 
コメント
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