ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『太陽にほえろ!』#238

2019-08-15 00:00:30 | 刑事ドラマ'70年代







 
☆第238話『東京上空17時00分』

(1977.2.11.OA/脚本=小川 英&桜井一孝/監督=桜井一孝)

三千万円を強奪した指名手配犯=倉田(風間杜夫)が小島で発見&逮捕され、警察のヘリコプターでゴリさん(竜 雷太)が東京まで護送することに。

ところが、着陸予定地の目前でヘリが狙撃され、パイロットが重傷を負います。あわやヘリ墜落、ゴリさん絶体絶命!

ところが幸いにも、倉田がかつてヘリのパイロット志望者で実習経験があった為、彼の操縦によりヘリは無事に着陸。

それで一件落着かと思いきや、重傷のパイロットを救急車へ移動させてるスキに、倉田が再びヘリを離陸させた! 咄嗟に飛びついたゴリさんをぶら下げたままヘリは浮上、ゴリさん再び絶体絶命!

ここは明らかにノースタントで、竜雷太さんは恐らく命綱も無しで危険な撮影に挑んでらっしゃいます。現在のTVドラマじゃ周りが許してくれませんから、絶対に見られない捨て身のアクションです。

「着陸するんだ倉田! 馬鹿なマネはやめろ!」

「イヤだ! 俺は飛ぶんだ! このまま燃料が無くなるまで、どこまでも飛ぶんだっ!!」

何とか無事に乗り込んだゴリさんだけど、操縦する倉田はどうやら死ぬ気らしい。燃料は残りあと僅か、夕方5時には尽きてヘリは墜落してしまう。やっぱりゴリさん、絶体絶命!

後にボン(宮内 淳)を撃ち殺す犯人も倉田、スニーカー(山下真司)の妹を殺しちゃう犯人も倉田と、『太陽にほえろ!』の世界において倉田って名前の奴にはロクなのがいませんw 私の友人の倉田くんは変態でしたw

けど、この倉田が半年間潜伏してた小島の住民たちは、彼が犯罪者だとはとても思えないと、みんな口を揃えて言う。奪った三千万円も所持しておらず、その使い道=犯行の動機も謎のまま。

「汚ねえな、東京は……海も汚ねえ、街も汚ねえ、何もかも汚ねえ」

護送の途中、東京に近づいた時に呟いた、倉田の独り言。根は純情な男であるらしい彼に、いったい何があったのか?

着陸予定地でヘリを待ってた山さん(露口 茂)は、現場にいたある女性の姿を見た途端に倉田が動揺し、ヘリを離陸させたのを見逃しませんでした。なぜなら、山さんだからです。

そしてボンは、その女性が人気歌手の石井あかり(美原圭子)であることに気づいてました。なぜなら、女好きだからです。

石井あかりはテレビ局でヘリ狙撃のニュースをいち早く知り、現場に駆けつけていた。もしかすると倉田が三千万円を奪った動機、そして今ゴリさんを道連れに死のうとしてる理由も、彼女と関係あるのかも知れない。

そう睨んだ藤堂チームは、石井あかりの身辺を緊急捜査。結果、あかりの所属する芸能プロダクションの社長=斎村(蜷川幸雄)が、三千万円の借金を倉田の犯行直後に返済していたこと、そして倉田があかりとかつて恋仲で、彼女の成功と引き換えに自分は身を引いていたことも判明します。

「あかりは何も知らないんだよ、刑事さん。でも、俺が何もかも喋ったら、あかりはスターじゃいられなくなるんだ」

空の上で、倉田はようやく真相をゴリさんに明かします。三千万円あれば有名作曲家にあかりの新曲を創ってもらえるから、と斎村社長にそそのかされ、倉田は強盗を犯してしまった。それが世間にバレたら大スキャンダルとなり、あかりの歌手生命は終わってしまう。だから倉田を乗せたヘリが狙われ、それを察した倉田は自ら死のうとしてる。ゴリさんはとんだとばっちりですw

「倉田、彼女の放送の時間だ」

倉田は逃亡中、トランジスタラジオだけは手離さずに持ってました。あかりがレギュラーでDJを務める、夕方のラジオ番組を聴く為に。

「聴かないよ。せっかく決心したのに、彼女の声を聴いたらまた……」

ところが、ゴリさんが強引にスイッチを入れたラジオから聴こえて来たのは、あかりではなくボス(石原裕次郎)の声でした。

『倉田、死ぬのはよせ。石井あかりさんはもう全てを知ってしまった。解るか倉田? あかりさんは、石井あかりという名前も、スターの座も捨てたんだ。お前の為に全てを捨てたんだ』

「嘘だ! そんなこと嘘だ! そんな手に乗るもんか!」

『いま彼女は、最も海に近い大井の13号埋め立て地に向かってる。お前が無事に着水、あるいは着陸出来ることだけを祈ってだ。解るか倉田? あかりさんはな、お前の無事だけを祈ってる』

「…………」

『あかりさんは、お前の為に、もう一度やり直すと言ってる。今度こそ、本当の自分の力で、もう一度歌でやって行きたいと言ってる。倉田、彼女と一緒にやり直すんだ』

「…………」

涙を浮かべる倉田に、ゴリさんがゲキを飛ばします。

「大井13号埋め立て地だ。飛ぶんだ倉田! 飛んでしっかりと着地するんだ!」

ここで倉田はゴリさんと見つめ合い、力強く頷きます。

普通なら、そこは視聴者に見せないで、13号埋め立て地で待つ石井あかりや刑事たちの様子だけ見せて、倉田がどっちの道を選択するか?っていうスリルで引っ張るところなんだけど、それよりも彼の心情というか、生きる希望を取り戻した表情を見せることを優先するのが、青春ドラマ『太陽にほえろ!』たる所以なんですよね。

「刑事さん、見て! 来ます! こっちへ来ます!」

感激するあかりと一緒に空を見上げる、殿下(小野寺 昭)とスコッチ(沖 雅也)。

「あと5分遅れたら……」

「遅れたって時間の方が延びてくれるさ。これだけ皆で頑張ったんだからな」

いやいや、殿下、いくら頑張ってもそれだけは有り得ませんw けど、たった数時間で倉田と石井あかりの過去や芸能プロダクションの裏工作を調べ上げ、ラジオ番組をジャックしてメッセージまで流した藤堂チームの活躍は、頑張ったどころの話じゃありません。

ラストシーンは「太陽にほえろ!メインテーマ」をバックに飛来し、颯爽と着陸するヘリと、放送局のタワー前でそれを眺めながら、時間を確認するボスの高級腕時計=ロレックスがやたら印象に残りますw

ヘリが狙撃されてから約2時間というタイムリミットに向け、空と陸とで同時進行する必死の捜査、スリルとサスペンス、そして人間ドラマ。

長年チーフ助監督を務めて来られた桜井一孝さんが、自ら脚本を書かれた入魂の監督デビュー作であり、通常の4倍近い製作費を掛けた勝負作。当時の『太陽にほえろ!』の勢いと熱気がビンビン伝わって来ます。

メインゲストの風間杜夫さんは、当時28歳。子役から俳優人生を歩まれ、にっかつロマンポルノを経て数多くの映画、ドラマ、舞台に出演。1982年の映画『蒲田行進曲』で全国的に認知され、一躍人気俳優となられました。

刑事ドラマへのゲスト出演も多数。『太陽にほえろ!』は第168話、第207話に続く3度目の登場でした。

悪徳社長(劇中ではマネージャーと自称)に扮した蜷川幸雄さんは、当時41歳。元々は俳優さんで、やはり刑事ドラマにも多数ゲスト出演されており、『太陽~』は第131話に続く2度目のご登場。

確か杉村春子さんだったかと記憶しますが、大物女優さんに「尊敬出来なくなるから俳優業は辞めて欲しい」ってw、冗談混じりに懇願されたそうで、ご自身も演技者には向いてないことを自覚され、やがて演出業に専念。舞台演出家として「世界の蜷川幸雄」と呼ばれる存在になられました。

そして人気歌手「石井あかり」に扮した美原圭子さん(年齢不詳)は、小椋寛子の芸名で『飛び出せ!青春』にレギュラー出演されてた女優さん。

歌手に転向し、本作は「美原圭子」に改名して間もなくのゲスト出演。劇中で唄われた『ひとひらの雪』は、当時クラウンレコードよりリリースされてたご自身の持ち歌です。
 
 
コメント
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