ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『太陽にほえろ!』#237

2019-08-14 00:00:11 | 刑事ドラマ'70年代






 
☆第237話『あやまち』(1977.2.4.OA/脚本=長野 洋/監督=竹林 進)

崖下で男の死体が発見され、その上の道路に車の急ブレーキ痕が残っていた為、藤堂チームは被害者が車に跳ねられて崖下に転落したと推測し、轢き逃げ事件として捜査を開始。

車の持ち主はアッサリ判明したものの、それが七曲署捜査第四係(マルボー担当)の刑事=水沢(谷 隼人)との結婚を間近に控えた婚約者=友子(紀 比呂子)だったもんで、披露宴に出席する予定のボス(石原裕次郎)が驚いた!

車は車検に出したままで、事故当夜は運転してないと友子は言う。整備工場の担当者も同様の証言をするんだけど、何やら嘘の臭いがする。

刑事たちの追及により、友子は男を跳ねたことを認めるんだけど、どう見ても軽傷だった為、その場で5万円を渡し、示談で済ませたと主張します。

しかし、それが本当なら、友子が車検を装い、工場の担当者に口裏を合わせてもらう、すなわち偽装工作をしてまで事故を隠そうとしたのは、かえって不自然じゃないか?と刑事たちは考えます。

友子には、リスクを承知の上でどうしても隠したい、何か重大な秘密がある……ボスは、厭な予感を覚えます。

友子の婚約者である水沢刑事は、七曲署の宿敵=竜神会を壊滅に追いやれるかも知れない捜査の正念場にあり、あと数日でその証拠が掴める所まで来てるらしい。そして友子は、整備工場の担当者に「3日間だけ口裏を合わせて欲しい」と頼んでいた……!

もう誤魔化せないことを悟った水沢は、ボスに真実を告白します。男を車で跳ねたのは水沢であり、警察官である彼の将来を守る為に、友子は自ら身代わりを買って出た。

けれども、その場の示談で事が片付いたのは本当で、事故が原因で被害者が転落死したのは絶対に有り得ない、という水沢の主張を、ボスは信じます。

「しかし、それでもお前は過ちを犯した。お前の最初の処置が正しければ、あの男は死なずに済んだかも知れん」

「…………」

水沢は、取り調べに当たったスコッチ(沖 雅也)に、本音を吐露します。

「俺は、竜神会を叩き潰すまでは、どうしても刑事を辞めたくなかった。この手であいつらを叩きのめすまでは、どうしても辞めたくなかったんだ!」

スコッチと水沢はタメ口で話しており、たぶん警察学校で同期生だったみたいな裏設定があるんでしょう。(沖さんと谷さんが共に『キイハンター』でレギュラーを務めた仲であることを反映させた?)

「3日だよ……あと3日ありゃ、それが出来たんだ。俺にとっては初めての大仕事だった。竜神会を叩き潰すことが、それが……」

そう言って泣き崩れる水沢の姿を見て、スコッチが立ち上がります。単独で竜神会の事務所に乗り込み、組員どもを全員1人残らずフルボッコにするのでしたw

この展開には少々面食らいました。別件での手入れを装い、水沢の捜査を支援する手掛かりを探るのがスコッチの目的だったんだけど、傍目には腹いせで殴り込みに行ったようにしか見えませんw

そもそも、スコッチってそんなに熱い男だっけ?って、イメージのギャップを感じちゃうんですよね。せめて、同期生なら同期生で、スコッチと水沢の固い友情関係を示唆するような、過去のエピソードがあれば良かったのにって思うけど、まぁ今回はスコッチの主役編じゃないですから、そこまで時間を割いて掘り下げるのもヘンかも知れません。

これも恐らく、前回に続くスコッチ&沖雅也イメージアップ・キャンペーンの一環なんですよね。他番組との掛け持ち出演で、しばらく出番が少なかったことの埋め合わせ、でもあったかも知れません。

そんなワケで私はちょっと戸惑いましたが、久しぶりに沖さんのシャープな立ち回りが見られたのは嬉しかったです。

さて、捜査は急転直下。被害者は、事故を目撃した第三者に撲殺された可能性が濃厚となり、数日前に彼と口論していた男に容疑が絞られます。

証拠も掴み、ゴリさん(竜 雷太)、殿下(小野寺 昭)、ボン(宮内 淳)が逮捕に赴くんだけど、この犯人が土木工事現場の肉体労働者で、メチャクチャ強い!

3人がかりで「ジーパン刑事のテーマ」まるまる1曲分も壮絶な格闘が続いて、ボンなんか合計10回ぐらい弾き飛ばされてるんですよねw(実際に数えたら6回でしたw)

番組後期になるとアクション描写はもっと淡白になり、2~3発のパンチでアッサリ済んじゃうのが当たり前になるんだけど、この時代はまだまだ力が入ってました。やっぱり、刑事ドラマは動いてナンボですよ!

こうして事件は解決しましたが、軽傷だったとは言え事故を隠蔽しようとした水沢の罪は消えません。今の自分に幸せになる資格は無いと考えた水沢は、警察官を辞めた上に婚約も解消し、独りで故郷へと帰る決意を固めます。

しかし、そうさせない為に身代わりを演じた挙げ句、一方的に別れを告げられた友子はたまったもんじゃありません。

「私達、そんなにいけない事したんでしょうか? もう、幸せを掴む資格さえ無いんでしょうか?」

正直に怒りと疑問をぶつける友子に、ボスは言います。

「私に言えることは1つだけです。彼に時間を与えてやって下さい」

「時間?」

「たとえ小さな過ちでも、否応なしに1人の人間の死と関わりを持ってしまった……妻子ある1人の男が殺された、その責任の何分の一かは自分にある……彼はそう考えたんです」

「…………」

「彼が誠実な警察官であればあるほど、辞めた後も心の痛手は大きく残るんです。その為に東京を去る彼の苦しみ、心の痛手を、あなたに解って欲しい」

「…………」

「立ち直る日まで、待ってやって欲しいんです。半年後か1年後か、あるいは2年になるか3年になるか、それは私には分かりません。しかし、彼がもう一度、自分の幸せを考える日が必ず来ます」

「……私も、彼と一緒に苦しみます。その日が来るのを待ちます。たとえ何年でも……」

もう水沢の顔なんか見たくないと言ってた友子が、強い覚悟を持って、東京から旅立つ水沢を見送りに行く姿を、ボスはホームの柱に隠れてこっそり見物しますw

そしてスコッチの捜査により竜神会を叩く証拠も出揃い、藤堂チーム=捜査一係と四係の合同による手入れが決行されるのでした。(結局、竜神会は潰せなかったみたいだけど)

……どんな事情があろうとも、警察官なら絶対に犯しちゃならない過ちがある。

事故が起こったのは視界の悪い深夜で、跳ねられた被害者はグデングデンに酔っぱらってて、しかもちょっと腰を打った程度の軽傷だった。その後で彼が殺されてさえいなければ、5万円の損失だけで済んでたんですよね。

それでも、駄目なものは駄目。ちょっと説教臭いと言えなくもないけど、『太陽にほえろ!』という番組の良心というか、岡田チーフプロデューサーの生真面目さが全面に出たエピソードですよね。

水沢刑事を演じたのは、沖さんに劣らぬイケメンぶりの谷 隼人さん、当時30歳。私の世代だと『キイハンター』よりも『明日の刑事』や『熱中時代/刑事編』における刑事役や、ボン(ハンソク先生)のライバル=小寺先生を演じた『あさひが丘の大統領』等が印象深いです。『太陽にほえろ!』は第507話にもゲスト出演。奥さんは第9話のゲストだった松岡きっこさん。

そして今回のヒロイン=紀 比呂子さんは、当時26歳。スチュワーデス物語の草分け的ドラマ『アテンションプリーズ』主演で人気を博し、『時間ですよ』シリーズ等にもレギュラー出演。

刑事ドラマは他に『非情のライセンス』『Gメン'75』『大空港』『七人の刑事』『鉄道公安官』『特捜最前線』等にもゲスト出演、『太陽にほえろ!』は後に第360話でもボンと共演されてます。

いかにも岡田プロデューサー好みのw、清楚かつ知的な美人女優さんですが、1982年の結婚を機に、きっぱり芸能界を引退されてます。
 
コメント
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