ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『これは経費で落ちません!』#02

2019-08-05 00:00:06 | 多部未華子








 
第2話の森若さん(多部未華子)は、会社の広告塔として華々しく活躍する広報課のエリート社員=皆瀬さん(片瀬那奈)が、メディア出演時に大盤振る舞いする豪華衣裳や贅沢な差し入れ、さらに本来買う必要の無い高性能カメラ等に使った「経費」に物申すことになりました。

衣裳や差し入れの贅沢さは会社のイメージアップや現場の士気向上に役立ってはいるものの、撮影業者が使うカメラまで広報課が所有する必要はどこにもありません。

そこに疑問を抱いた折りも折り、皆瀬さんの夫が売れない映画監督であることを知ってしまった森若さんは、今回も「ウサギを追うな」という座右の銘に逆らって真相を追い、カメラも含め皆瀬さんが会社の経費で買った機材やレジャー用品の数々が、旦那の売れない映画のロケ現場で使われてることを突き止めちゃうのでした。森若さん、刑事になった方が出世するかも知れませんw

けど、普段から経理部とは対立しがちな自分をやっつける絶好のチャンスなのに、なぜ何も言わないの?と問う皆瀬さんに、森若さんはいつも通り淡々と答えます。

「そういったことは私の仕事ではありませんので」

森若さんはさらに、皆瀬さんのアシスタントを務める契約社員=室田さん(真魚)が、正社員になりたい一心で(いわば点数稼ぎの為に)自腹を切ってショールームの装飾をやってる事実も突き止めちゃう。

そういう雑費もちゃんと計上しないと問題に繋がる可能性があるんだけど、森若さんは彼女に経費の請求を促すだけで、それ以上のことは何も言わない。

そう、森若さんはただ、自分に与えられた職務を果たしてるだけ。前回は山田くん(重岡大毅)の不倫疑惑を晴らしてあげたけど、それも領収書の正当不当を判別するという自分の仕事をしたに過ぎないんですよね。

でも、それが結果的に社員たちを、引いては会社を救うことになってる。会社の為に働くのが社員なんだから、これほど真っ当なことはありません。

社員たちから持ち込まれる領収書を細かくチェックする経理の仕事が、小うるさいと疎まれがちな現実をどう思うのか、広報課による社内報のインタビューで問われた森若さんは、淡々とこう答えます。

「平気ではないです。嫌われるよりかは好かれたいです。でも、私は経理部員です。くまなく経費をチェックして、他部署から疎まれるのなら、それも私の仕事の内です。人から好かれるのが仕事ではないので」

思えば当たり前のことなんだけど、それを当たり前と割りきって実践出来てる人は少ないかも知れません。

森若さんを見てると気持ちがいいのは、どんなにキツい物言いをしようが、そこに自分が認められたいとか、相手よりも優位に立ちたいとかいう「我」が全く見えて来ないから。あくまで万事、会社の為なんですよね。さらに彼女は言います。

「ただ、人から好かれるのが仕事の人もいます。例えば会社の顔である広報課員は、天天コーポレーションの広告塔として、いい印象を持たれるのも仕事の内です。誰にでも出来る仕事ではありません、少なくとも私には絶対にムリです」

これは皆瀬さんや室田さんがそばで聞いてるのを意識して言ったのかどうか判らないけど、森若さんが絶対に嘘やおべんちゃらを言わないことをよく知ってる彼女らの心を動かしたみたいです。きっと彼女らは変わるでしょう。

「誰にも出来ない特別な仕事をする為に必要な経費もあります。だからこそ、その予算を無駄な物にではなく、少しでも効果的な物に使って欲しいと、私は思います。本当に正しいと胸を張れるものに、堂々と、会社の大事なお金を使って欲しいです」

そして最後に「自分にとって仕事とは?」という締めのコメントを求められ、森若さんが言ったセリフがこれ。

「仕事とは、きっちりと働いて責任を果たし、働いた分の給料を、適正に貰うことです」

あまりに当たり前のことを言うもんで一同が拍子抜けしちゃうんだけど、いやいや、実はそれこそが一番難しい事なのかも知れません。このドラマのメインテーマは、きっとそこにあるんでしょう。

『これは経費で落ちません!』っていう番組タイトルはやや好戦的に感じるけど、これは経理部が他の部署をギャフンと言わせるドラマじゃなくて、むしろ如何に会社を縁の下で支え、懸命に守ってくれてるかを描いたドラマ。

そして真っ当に働いてる人が(あまりに真っ当すぎて変人扱いされてたのが)やがて真っ当に評価され、たぶんプライベートでも幸せを掴んでいくサクセスストーリー。言わば『君に届け』の社会人バージョン。

と同時に、会社員として働くという事がどういう事なのかを、あらためて基本から問い直すドラマでもあり、全国の働く人たち、特にモチベーションを失いがちな人たちに観て欲しい作品ですよね。職場で撮ったふざけた動画をネットに流すようなおバカさん達には猫に小判だろうけど。

そんな真摯なメッセージを、極上のエンターテイメントに仕立てみせた第一級品のドラマであり、その基本姿勢が崩れない限り、これから多少の中だるみや脱線があろうとも今季ナンバーワンの座は揺るがない、と私は思います。

そして女優・多部未華子の真骨頂が見られるドラマとしても久々&会心のヒットで、前回は「声と台詞回し」の魅力について書きましたが、今回はあの『デカワンコ』以来となる多部ちゃんの、これまたトップレベルと言える「顔芸」が堪能できるレアな回となりました。

感情表現を苦手とする主人公がテレビ等に出演する羽目になり、取ってつけたような硬い笑顔で場を凍らせるみたいなシーンは『サザエさん』等でもよく見られるコメディーの定番であり、それを今あえて(しかもNHKで)堂々とやれたのは、ひとえに「多部ちゃんなら絶対にスベらない」という確固たる自信がスタッフにあったからだろうと思います。

そう、多部ちゃんの顔芸は絶対にスベらない。なぜなら「見る人を怖がらせる笑顔」を完璧に表現できるだけの顔面スキルもさることながら、それで人を笑わせようなんていう下心を、彼女はいっさい持ってないから。

私は表情豊かな女優さんが大好きで、森若さんの後輩社員=佐々木さんを演じる伊藤沙莉さんもその1人。多部ちゃん&沙莉ちゃんの顔面演技が堪能できるだけでもう満足で、そのツーショット場面では多部ちゃんの表情に注目したあと、沙莉ちゃんの表情を観る為にまたリプレイしなくちゃいけないから大変ですw

そんなお二人の上に吹越満さん、平山浩行さんという芸達者なベテランが揃う経理部に、欠員補充で入って来るらしい新入社員をいったい誰が演じるのか、メチャクチャ楽しみです。(大根乳首男じゃないことを祈るばかり)

そんなワケで、今回のセクシーショットは伊藤沙莉さん。『トランジットガールズ』『ラストコップ』『ひよっこ』『恋のツキ』等、そんなに幅広く連ドラを観てるワケじゃない私が、ここ数年で頻繁にお見かけする実力派若手女優さん。コメディをこなせる彼女は確実に息長く活躍されていくだろうと思います。
 

コメント (4)
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