ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『太陽にほえろ!』最終回―2

2019-01-25 12:00:06 | 刑事ドラマ'80年代









 
最終回だと言うのにスペシャル感が無くて「当時は物足りなく感じた」って書きましたけど、この時の裕次郎さんの(健康な頃に比べて)やつれたお姿をあらためて見ると、かなり無理をされて最終回に駆けつけてくれたんやなあって、それをスペシャルと言わずして何と言う?って、今は思います。

声もかなり弱ってる感じがしますからね。あの大手術の時(’81年)以来、身体を冷やさないよう真夏でも足元にストーブが欠かせなかったそうですから、我々が想像する以上に身体は弱っておられたのでしょう。

それを前提にしてこの最終回を観ると、ボス(石原裕次郎)は満身創痍を通り越して……不謹慎な言い方かも知れないけど……既にこの世にはいない存在、ぶっちゃけ幽霊みたいに感じちゃうのは私だけでしょうか?

だって、橘警部(渡 哲也)が刑事部屋に入って来たら、誰もいない中でポツンとボスの後ろ姿があるんですよね、黄昏時にw

瀕死のブルース(又野誠治)と引き換えに自らの生命を天に差し出した、ボスの魂だけが七曲署に帰って来た。だから次の週にはもういないんですよ!(係長役は奈良岡朋子さんにバトンタッチ)

まぁ、そんなワケないんだけどw、裕次郎さんが最終回の撮影に駆けつけてくれた背景には、それに匹敵する位の執念があったように私は推察します。だからこそ伝説になり得たんじゃないかと……

「ブルースが撃たれたそうだな」

「はい。申し訳ありません」

「で、ブルースの行方は?」

「…………」

『さよなら西部警察(PART III 最終回)』以来となる、そして最後の裕次郎さんと渡さんの共演です。藤堂ボスと橘警部はかつて、別の署で先輩後輩の関係だった……なんて設定も要らない位、このお2人の信頼関係ってのは誰もが認識してましたよね。

覆面パトカーの無線でボスの帰還を知ったドック(神田正輝)は、無邪気に喜びます。

「ボス? お帰りなさい、ボス! ヤッホー!!」

「……おかしくなっちゃったんじゃないの」

助手席にいるDJ(西山浩司)は、まだ藤堂ボスとは面識が無いのです。

「いや、でもねドック。ボスが帰って来たって事は、橘警部は本庁に戻るという事ですよねぇ?」

「!? ……そりゃあ、そうだけどよ……何とかなんねえか?」

「いや、なんねえかって……俺、警部と一緒に七曲署入ったから……」

この場面、DJが続けて「まさか俺もお払い箱?」みたいな台詞を言ってたのが、編集でバッサリ切られちゃった感じです。

この最終回は異常なほどハイテンポで、恐らく脚本の5分の1くらいは(撮影したのに)編集でカットされてるんじゃないかと思います。なぜ、そんなに刈り込む必要があったのか? それは後々のシーンで判ります。

さて、ブルース襲撃に協力した恩田の記憶によるモンタージュ写真が役に立ち、ようやく主犯の正体が判明しました。ブルースを罠に嵌めて拳銃で撃ったのは、津坂 久という若い男。

3年前に西署管内で宝石店強盗をやらかし、当時まだ巡査だったブルースに腹部を撃たれたのが、その津坂の兄=肇だった。傷を負ったまま共犯者と2人で逃走した肇は、潜伏した何処かで息を引き取った。

その遺体を故郷の山梨県に埋葬したのが、弟の津坂久。瀕死のブルースを何処かの部屋に放置し、ただ黙って見物していた津坂が、ようやく口を開きます。演じてるのは、若き日の遠藤憲一さん。

「そうやってさ、俺の兄貴も苦しみ抜いてたんだよ」

「兄貴……?」

「お前の撃った鉛の弾でな」

「……津坂……肇か」

「誰が撃ったのか警察は公表しなかった。だけどやっと判ったよ。兄貴撃ったのお前だ。兄貴はお前と同じようにさ、腹から血ぃ出して、苦しみながら死んでったんだ。地獄の様だった……」

「……津坂を……故郷に埋めたのお前か……」

「あん時、俺にはそれしかしてやれなかった。兄貴を埋葬しながらさ、俺は誓ったよ。撃った警官突き止めて、この手で復讐してやるってな……必ず」

ブルースが撃たれた場所(廃屋)も被弾した箇所も、3年前の肇と全く同じ……という事は、今ブルースが監禁されてる場所も、かつて肇が潜伏して息を引き取ったのと同じ場所!

その推理まで辿り着いた七曲署藤堂チームですが、潜伏場所の見当は全くつきません。それを手繰るたった1つの糸口は、3年前に肇と一緒に潜伏し、現在も逃亡中の共犯者=一ノ瀬(時本和也)。

トシさん(地井武男)とマイコン(石原良純)が、看護師を勤める一ノ瀬の妹=僚子(桂田裕子)を訪ねますが、マイコンがあまりにダサいせいか全く協力する素振りを見せません。

「関係無いわ。とっくに他人なんです。あの人の為に、どれだけ苦労させられたか……もう、兄とは思ってません!」

マイコンのせいでたった1つの糸口も絶たれ、完全に捜査は行き詰まります。今、こうしてる間にもブルースの血は流れ、死へのカウントダウンを進めてるというのに!

「……ブルースは体力も精神力も、ずば抜けてる……」

祈るようなボスの呟きが通じたのか、気を失いかけてたブルースが我に返ります。

「いま眠ったら……俺は死ぬ……」

ブルースは自分で自分の傷口に指を押し当て、その激痛で意識を保とうとします。ランボーやレプリカントも真っ青な強靭さですがw、その源はゴリさん(竜 雷太)から受け継いだ『太陽』魂です。

ついに2日目の陽も暮れてしまいますが、藤堂チームの面々は不眠不休で必死の捜査を続けます。刑事部屋でその報告を待ちながら、ボスは橘警部に語り掛けます。

「これもデカの宿命かな……」

ここでマカロニ(萩原健一)、ジーパン(松田優作)、テキサス(勝野 洋)の殉職シーンが回想されます。バラエティー番組等でもさんざん流され、『太陽』ファンでなくともお馴染みの映像かと思います。

「出来る事なら俺が替わりたい……いつもそう思って来た……なぜだろう? 同じ人間でありながら憎しみ合い、時には血を流して殺し合う……」

更に殉職シーンが続き、ボン(宮内 淳)、ロッキー(木之元 亮)、ボギー(世良公則)、ラガー(渡辺 徹)、ゴリさん、山さん(露口 茂)……って、いったい何人死んでるねん!?ってw、ツッコまれても仕方がない殉職者の数です。

「同じ人間でありながら、俺達はそれを取り締まる為に、銃を向けなくちゃならん」

ここで回想された殉職刑事は合計9人ですが、他にもまだ殿下(小野寺 昭)とスコッチ(沖 雅也)が残ってます。殿下は交通事故死ゆえに殉職シーンが存在せず、スコッチは後の取り調べシーンでボスが言葉で回想しますから、尺の都合もあって削除されたものと思われます。(口から大量の血を流すビジュアルが強烈すぎるから、とも推察できますが)

それはともかく、殉職刑事たち全員を知る者は、今やボスしかいません。山さん亡き今、番組スタート時のメンバーはボス以外に誰もいなくなっちゃった。(転勤&退職組は健在だけど)

そういう意味でも、ボス=裕次郎さんが出演不可能になった時点で『太陽にほえろ!』が終了するのは必然ですよね。『太陽にほえろ!PART2』も素晴らしい番組ではあるけど、やっぱ別物だと私は思います。ましてや復活版なんて。

さて、ついに刑事たちの執念が実り、一ノ瀬僚子の誕生日に宅配便でセーターを贈った人間がいた事が判明します。その送り主の名前と住所は実在しない=偽名を使っており、そんな事をする人間は1人しかいません。

つまり僚子は、逃亡中の兄と今も連絡を取り合っている! 捜査に協力しないのはマイコンがダサいからじゃなくて、恐らく兄の居場所を知っているから……そう確信したボスは、いよいよ決断します。

「一ノ瀬僚子を連れて来てくれ」

「いや、しかし……令状が」

「ボス、ちょっとヤバいんじゃ……」

こんな時、捨て身になれるのが藤堂俊介という男なんです。その為に我らがボスは帰って来た。

「構わん。連れてこい」

かくして、後に伝説となるボスの取り調べシーン、すなわち石原裕次郎渾身のアドリブ演技が幕を開けるのでした。

(つづく)
 
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『太陽にほえろ!』最終回―1

2019-01-25 00:00:05 | 刑事ドラマ'80年代









 
14年4ヵ月という長い歴史を締めくくったこの最終回は、昭和の大スター・石原裕次郎さんの遺作でもあり、渡 哲也さんとのツーショットが見られる最後の作品でもあります。

当時、番組の視聴率は既に平凡な数字になってましたが、さすがに多数のスターを生み出した「お化け番組」の最終回として、話題にはなってました。

だけど、その内容は「若手刑事があわや殉職のピンチ」&「欠場してたボスが帰って来る」という、過去にも何度か描かれたシチュエーションのWパックに過ぎず、私としては物足りなさを感じたのが正直なところ。

それが、翌年に裕次郎さんが亡くなられ、結果的に遺作になっちゃった事と、ボスが取調べで生命の尊さを語る長台詞が、全て裕次郎さんのアドリブだった事から「遺言」みたいに解釈されて、最近の雑誌アンケートによる「忘れられない最終回」の第1位に輝くほど伝説化されたんですよね。投票した人が全員オンエアを観てたとは思えないんだけどw

長年の『太陽』ファンである私から見れば、裕次郎さんは単に番組のテーマを自分流に語っただけであり、それは決して遺言なんかじゃなくて、いよいよ幕を閉じる『太陽にほえろ!』への贈る言葉、ひいてはファンへの感謝の言葉なんだと解釈する方が正しい気がします。

いずれにせよ、裕次郎さんが心底から我々に伝えたかったメッセージには違いなく、これは伝説と呼ぶに相応しい作品だったと、私も今となっては思います。


☆第718話『そして又、ボスと共に』(1986.11.14.OA/脚本=峯尾基三/監督=鈴木一平)

OPタイトルはオール打ち込みによる楽曲「太陽にほえろ!メインテーマ’86」(作・編曲=大野克夫)に合わせ、代理ボスである渡さんを中心に編成されたものですが、最終回のみ裕次郎さんの紹介カットも復活した1回限りのスペシャルバージョンになってます。

直前にデューク刑事こと金田賢一さんが降板されたんで、尺的にはプラマイゼロで問題無いんだけど、後半のボス歩きに挿入される各刑事のフラッシュカットはデュークがマミー刑事に差し替えられ、長谷直美さんだけ2回登場するという珍品タイトルにもなってます。

さて、朝の七曲署捜査第一係室。当直明けと思われる「ブルース」こと澤村 誠(又野誠治)に、番組最後の新人刑事「DJ」こと太宰 準(西山浩司)が声を掛けます。

「ねぇ~、今日のさぁ、射撃大会だけどさぁ、俺すごいプレッシャー感じてんだよね」

「んん? そんな顔してないねえ」

「いやホラ、性格的にさ、顔には出ねえからさ」

DJは一係に配属されたばかりの新人刑事で、年齢的にも最年少だった筈ですが、若手のブルースやマイコンに対しては基本タメ口ですw

芸歴はたぶん西山浩司さんの方が長いから…って事かも知れないけど、初代新人刑事のマカロニ(萩原健一)も先輩のゴリさん(竜 雷太)や殿下(小野寺昭)によくタメ口を叩いてましたから、意図的にそういう生意気さや人懐っこさを再現した可能性もありますね。

ブルース役の又野誠治さんは、この時期(PART2の途中まで)無精髭を生やしてました。もともと服装や髪型に一貫性が無い人なんだけど、あの無精髭だけは何だか品が無くて私はイヤでした。『インディ・ジョーンズ』のハリソン・フォードみたいに格好良く感じなかったです。

そんなヒゲとチビの凸凹コンビは、午後から開催される射撃大会に意欲満々なのですが、そこに自動車窃盗の指名手配犯=恩田(杉 欣也)の居所を知らせる匿名のタレコミ電話が入ります。

帰宅前のひと仕事として、その場所を確認しに行こうとするブルースですが……

「ところでDJ。美味い………ケーキ屋知らんか?」

「その顔でケーキ?(笑)」

「………(怒)」

タレコミ情報は本物で、カノジョのアパートに潜んでいた恩田は、ブルースが現れるや窓から飛び出して逃走します。

「恩田っ!!」

ジーパン刑事のテーマをバックにブルースが疾走します。かつてアクションシーンの定番だったこの名曲も、ブルースの時代には(ジーパン=松田優作さんとキャラが被るせいもあって?)選曲される機会があまり無かったのですが、今回は最終回って事で外せなかったのでしょう。

「あの野郎、捕まえたらぶっ殺すからなコノヤロー!」

こんな物騒な刑事(しかもヒゲ)にだけは捕まりたくないもんですw 七曲署に赴任した当初はこんなキャラじゃなかったんだけどw

捕まったらぶっ殺されるとあって、必死に走った恩田は廃屋に逃げ込みます。暗がりの中でブルースを待ち伏せ、鉄パイプで襲い掛かるのですが……

「なんだお前? やってやろうじゃねえか。来い」

百戦錬磨のブルース(しかもヒゲ)に適う筈もなく、あっさり手錠を掛けられ、ぶっ殺されそうになったその時……!

背後に気配を感じ、ハッと振り返ったブルースの腹部に銃弾が撃ちこまれます。どうやらこれは、最初からブルースの生命を狙う罠だった!

楽しみにしてた筈の射撃大会に現れず、連絡もつかないブルースの身を「ドック」こと西條 昭(神田正輝)が案じます。

「DJ、ブルに何か変わったこと無かったか?」

「いや、別に……あ、なんか美味いケーキ屋知ってるか?なんて言ってました(笑)」

「ブルがケーキ? そういうのお前、変わったことっつーんだろ!(怒)」

DJが紹介したケーキ屋に行くと、ブルースは奥さんに贈るバースデーケーキを注文してから現場に向かった事実が判明します。あの顔でバースデーケーキですw

捜査第一係長代理の「警部」こと橘 兵庫(渡 哲也)が刑事部屋に戻り、今やただ一人のベテラン刑事となった「トシさん」こと井川利三(地井武男)から状況を聞き出します。

「澤村から連絡は?」

「いや、ありません。警部、やはり……」

「何かあったな」

ケーキ屋から女のアパートへと足取りを追ったドックとDJは、例の廃屋で血痕とブルースの警察手帳を発見します。

一方、恩田のカノジョをマークしていた「マミー」こと岩城令子(長谷直美)と「マイコン」こと水木 悠(石原良純)は、映画館でカノジョと落ち合おうとした恩田を確保します。

恩田は何者かに自動車窃盗及び覚醒剤所持のネタを握られ、成功報酬100万円でブルース襲撃に協力させられた事を自白します。

更に、ブルースが撃たれた時の状況を恩田から聞き出したマイコンは、ダサい顔をして橘警部にそれを報告します。画像をご覧下さい。どの瞬間を捉えても、マイコン刑事はダサいのですw

「その場に倒れ込んで、動けない程の重傷だったそうです」

一応医学に詳しいドックも、現場で発見した血液の量からブルースの重傷ぶりを推測します。

「警部、あのまま出血が続いてるとすれば、ブルは間違いなく死にます」

そこに不吉なタイミングで電話が掛かって来て、応対した橘警部の顔色が変わります。

「多摩川の河原で、男の死体が発見された」

まさか、ブルースが!? 通常なら『太陽』のレギュラー刑事がそんなアッサリ死ぬワケ無いんだけど、最終回だけに何が起こるか分かりません。

「多摩川の河原」という大雑把な情報だけで現場に駆けつけたドック達はw、恐る恐るシートをめくり、その死体が大部屋の無名俳優(あるいは撮影スタッフ?)である事を確認し、胸をなで下ろします。例え無名でも生命は生命なんですがw

「ハッピーバースデーツーユー♪」

「ええっ?」

ドックは空元気いっぱいで、ブルースが注文してた特大バースデーケーキを、彼の愛妻=泉(渡瀬ゆき)に届けます。

「そんなビックリしないで。頼まれたんですよ、ブルに」

「主人に?」

「ちょっとブルね、張り込みで手が放せなくて。ほらアイツ真面目だからさ、手ぇ抜くこと知らないんだもん」

こういう場合、警察としては事実をそのまま伝えるべきなのかも知れませんが、刑事である前に人間であることを重視する『太陽にほえろ!』ですから、家族を心配させない配慮を選択したワケですね。

それにしても馬鹿でかい(いかにもブルースらしい)ケーキを見て、泉は楽しそうに笑います。

「こんなに食べきれるかねぇ~」

泉役の渡瀬ゆきさんは、石原プロ作品(たぶん『西部警察』)にゲスト出演された際に渡哲也さんの眼に止まり、それまで違う芸名だったのを(渡さんの本名を頂いて)渡瀬に改名された……と何かの記事で読んだ事があります。

見るからに明るくて性格の良さが滲み出てるし、演技力もある人ですから、渡さんに気に入られたのも大いに納得出来ます。ぶっきらぼうなブルースとの組み合わせがまた楽しくて、私も『太陽』セミレギュラー陣の中で特に好きだった女優さんです。

さて、それにしてもブルースの行方は未だ掴めません。頼みの綱だった恩田は真犯人の正体を知らず、捜査は行き詰まった状態。早く見つけ出して救出しなければ、一係はまた仲間を1人失う事になってしまう……!

憔悴しきった橘警部が一係室に戻って来ると、さっきまで自分が座ってた係長の席に、誰かが座っている!

「藤堂さん!」

そう、いよいよ我らが「ボス」こと、藤堂俊介(石原裕次郎)が帰って来たのでした。

(つづく)
 
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