ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『誇りの報酬』#01

2019-01-12 12:00:17 | 刑事ドラマ'80年代









 
好視聴率を稼いだ番組なのに何故か未だにDVD化されず、CSでもBSでも放映されないもんだから、もう二度と観られないものと思ってましたが最近、常連読者「さかいこういち」さんのご厚意により観賞が叶いました。さかいさん、本当に有難うございます!

番組そのものの成り立ちは以前にも書きました通り、1975年に松田優作&中村雅俊の主演で創られた『俺たちの勲章』の10年後を描く続編として企画され、だけど優作さんが刑事ドラマへの出演を敬遠された為、中村雅俊&根津甚八という新たなコンビで『誇りの報酬』が生まれた次第です。

キャストの変更に伴い、設定も『~勲章』をベースにしながらリニューアルされ、二人が務めるのは所轄署ではなく警視庁本部・捜査一課の特殊犯捜査係へとバージョンアップ、各地方へ二人が派遣される設定にリアリティーが付加されました。

『~勲章』の世界観を継承しつつも'80年代らしくライトかつアクティブなドラマに生まれ変わり、続く『あぶない刑事』への橋渡し的な役割も果たします。

この初回も『~勲章』第1話がベースになっており、出張先が甲府である点も同じ。ただし結末には捻りが加えられ、そこにも時代の変化が反映されてます。


☆第1話『命令違反は刑事の勲章』

(1985.10.13.OA/脚本=長野 洋/監督=澤田幸弘)

6年前に銀行を襲撃して1億円を奪った強盗犯=小田が山梨刑務所を脱走。事件当時に小田の恋人だった女=圭子(多岐川裕美)をマークする使命が芹沢春樹(中村雅俊)&萩原秋夫(根津甚八)のコンビに課せられます。

圭子は小田の服役中に結婚しており、どうやら小田はそれを知って逆上し、復讐すべく脱獄したらしい。過去を切り捨てたい圭子は捜査への協力を拒むんだけど、なんとか夫(山本紀彦)の出張中に事件を解決してあげようと、芹沢&萩原は奮闘します。

で、警官の拳銃を奪って圭子を襲撃した小田を、萩原が射殺する羽目になっちゃう。ここまでの展開は『~勲章』第1話とほぼ同じです。

ところが、圭子には裏の顔があった。彼女は6年前に小田が強奪した1億円の隠し場所を知っており、その金を夫の独立資金に使うべく、わざと小田が射殺されるよう誘導していたのでした。

「あの人の役に立ちたかった……私が、あの人の為に出来ることは、これしか無かったんです」

やっと手に入れた幸せを死守する薄幸の美女って設定は『~勲章』に登場した人妻(高橋惠子)と同じだけど、犯罪者の元カレを利用しちゃう『~報酬』バージョンには女のしたたかさ、到来する「女の時代」が象徴されてるように思います。

犯人射殺も『~勲章』には後味の悪さがあったけど、『~報酬』はアッサリしたもの。第2話では拳銃密造組織との銃撃戦で敵を片っ端から射殺しちゃいますw 『西部警察』でもあんなには殺さなかったのにw(敵の拳銃だけ弾き飛ばすよりは、かえってリアルとも言えます)

後番組『あぶない刑事』では逆に射殺はほとんど無くなりますから、そういう描写がエスカレートしてピークに達し、自主規制へと向かうちょうど過渡期だったのかも知れません。

銃撃戦の最中におフザケが入ったりする演出は『~勲章』にもあったけど、『~報酬』コンビの会話はさらに軽く、オシャレに洗練されており、特に芹沢はしょっちゅう女の子を口説いてフラれる等、『あぶない刑事』へと繋がる要素が随所に見られます。そういう意味でも、1985年当時ならではの作品なんですよね。

あの頃、私はちょうど二十歳の青春ド真ん中。東京で新聞配達しながら浪人生をやってて、三畳一間のアパートで毎週『太陽にほえろ!』と『誇り報酬』を楽しみに観てました。

画面に映る東京の街並みやファッション、髪型、軽薄な若者たちにバブリーな空気、シンセサイザーを前面に押し出した音楽など、'80年代独特の空気感がとても懐かしいです。

奇しくも最近CSで『太陽にほえろ!PART2』('86~'87)が初放映され、BSでは『刑事物語'85』も放映中。私の中じゃちょっとした'80年代ブームです。特にこの『誇りの報酬』は本放映以来の観賞ですから、よけい当時にタイムスリップしたような感覚があります。あの頃、良くも悪くも私は若かった。

当然、雅俊さんも甚八さんも若いです。特に甚八さんのアクションにはキレがあり、暗い晩年を過ごされたことを思うと切なさが込み上げたりもします。

一方の雅俊さんは今も現役バリバリ。朝ドラでヒロインの祖父(しかも認知症気味)を演じられてる姿にも、また感慨深いものがあります。にしても、雅俊さんはあまり印象が変わらない。やっぱ永遠の青春スターです。

セクシー画像は、芹沢&萩原いきつけの喫茶店「バルビゾン」のウェイトレス=吉野さゆり役でレギュラー出演された、堀江しのぶさん(当時20歳、私と同い年です)。

'83年のクラリオンガール・コンテストで注目され、イエローキャブから歌手&グラビアアイドルとしてデビュー、豊満なプロポーションと明るいキャラクターで人気を集め、巨乳ブームの先駆けとなった方です。

テレビのバラエティー番組、そしてドラマにも数多く出演され大活躍だったのに、『誇りの報酬』から僅か3年後の'88年、23歳という若さで癌により亡くなられてしまいました。合掌。
 
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『誇りの報酬』1985~1986

2019-01-12 00:00:08 | 刑事ドラマ HISTORY









 
1981年か82年頃だったと思いますが、TVガイド誌に『俺たちの勲章パート2』製作決定を報じる記事が載ってました。

主演コンビは「勝野 洋&宮内 淳」って、確かに書いてありました。『太陽にほえろ!』のテキサス&ボンであり、リポビタンDのCM「ファイト1発!」初代コンビでもあるお2人です。

勿論『太陽』マニアである私は狂喜乱舞しました。これはもう、ほとんど『太陽』のスピンオフみたいなもんですから、週に2回『太陽』の新作が観られるという、私にとってパラダイスの到来です。

それにしても、松田優作=ハードなバイオレンス刑事、中村雅俊=ソフトなヒューマニズム刑事とカラー分けされた『俺たちの勲章』(’75)のキャラクターを、勝野洋&宮内淳でどう受け継いで行くのか?

両者とも暴力刑事って柄じゃないですから、勝野さんが生真面目な硬派刑事、宮内さんが軽いノリの軟派刑事って感じになるのかな?とか、色々と妄想しながら放映開始を待ちわびたもんです。

しかしその反面、この番組はヒットするんだろうか? 世間の人々は、このコンビが再び刑事を演じる姿を今、果たして観たいだろうか?って、冷静に疑問を抱いてる自分もいました。

そしたらやっぱり、企画は流れちゃいました。ちょうど刑事ドラマのブームが下火になりつつあった時期だし、優作&雅俊が再登板するならともかく、新コンビだと吸引力に欠けると判断されたんじゃないでしょうか?

で、時は流れて1985年秋。幻となった企画は『誇りの報酬』として復活する事になります。中村雅俊&根津甚八のコンビで、制作は日本テレビ&東宝、日曜夜9時の放映でした(全49話)。

『俺たちの勲章』コンビの10年後を描くって事で、当然ながら松田優作さんに出演を打診したものの「しばらく刑事物はやりたくない」って断られたんだそうで、甚八さんは言わば代役ですね。

相方の雅俊さんが、この10年の間に主演ドラマを何本もヒットさせ、当時は人気絶頂期でしたから、優作さん抜きでも数字が見込めると判断されたのでしょう。

『勲章』での雅俊さん(五十嵐刑事)は、あくまで優作さん(中野刑事)と対比され、バランスをとる為に存在するキャラクターでした。だけど『報酬』の雅俊さん(芹沢刑事)は、主役として番組を引っ張る存在でなくちゃいけません。

ゆえにか、芹沢刑事は五十嵐刑事と違って破天荒な、ルールに縛られない『ゆうひが丘の総理大臣』を刑事に置き換えたみたいなキャラに変更されてました。

そして相棒の甚八さん(萩原刑事)は逆に、優作さんが演じた中野刑事よりも落ち着いた、セクシーな大人の男って感じのキャラになってましたね。10年後って設定ですから、理にかなってると思います。

けど、そうなると『勲章』の2人みたいな、激しいぶつかり合いが無くなっちゃいます。ルールに縛られないキャラどうしだし、10年もつき合ってるワケですから、もはや「あうん」の呼吸ですよね。

主役コンビの職場も所轄署から本庁へと格上げされ、色んな地方に派遣されるフォーマットは受け継いだものの、出張先で邪魔者扱いされるような描写はほとんど無くなりました。時代の変化ですよね。捜査の描き方も随分と軽くなりました。

明るいのは良いんだけど、シリアスに物事を捉える事が「ダサい」とされ「食う、寝る、遊ぶ」の軽薄なノリが格好良いとされる’80年代の空気は、本作から緊張感ってものを失わせてたように思います。

だから、このドラマを観て感動したり、何かを考えさせられるような事は、ほとんど無かった気がします。そのせいか各エピソードの内容は、30年振りに観直すまでほとんど忘れてました。

それでも1年続いたワケですから、やっぱり時代の空気にはマッチしてたんでしょうね。この『誇りの報酬』を更に進化させ、軽いノリとダンディズムを徹底的に追究した後番組『あぶない刑事』(’86年~)は、ご存知のとおり大ヒットする事になります。

やがて私もハマる事になる『あぶない刑事』と比較すれば、この『誇りの報酬』に何が足りなかったのかが、よく分かります。月並みな分析だけど、やっぱ中途半端だったんでしょう。いくら軽薄な’80年代と言えども、創ってるのは中年以上の(それも生真面目な東宝の)オジサン達なワケで、軽いノリってヤツがイマイチ身につかず、当時は試行錯誤の時期だったんじゃないでしょうか?

『あぶない刑事』は行き過ぎた軽いノリが社風とも言えるセントラル・アーツ社(&東映)の制作であり、雅俊&甚八コンビだと表現しきれなかったダンディズムを、舘ひろし&柴田恭兵という奇跡のキャスティングで、極限にまで昇華させてくれました。

軽いノリの刑事ドラマがこの時期たくさん創られた中で、それを見事「モノにした」と言えるのは唯一『あぶない刑事』だけだったと私は思ってます。つまり、舘ひろしと柴田恭兵が揃わなければ成立しない。

『誇りの報酬』も、優作さんが出ていればまた違った見所を作り出せたかも知れません。甚八さんも決して悪くはないけど、どうせ軽いノリを目指すなら、私は映画『刑事珍道中』(’80)のコンビ(中村雅俊&勝野 洋)を復活させた方が楽しめたんじゃないかと、個人的には思ってます。

なお、同じ東宝制作の『太陽にほえろ!』にセミレギュラー出演する予定が立ち消えになった、沢口靖子さんが本作に雅俊さんの妹役でレギュラー出演されてます。当時の靖子さん、超絶に可愛いんだけど、芝居は超絶に下手くそでしたw あのキュートな棒読み台詞を、今こそもう一度聴きたい!

ちなみに『勲章』で資料室の人だった柳生 博さんが『報酬』コンビの上司(課長)役で出演されてますが、全く印象に残ってませんw あと、課長秘書として篠ひろ子さんも出ておられますが、警察に秘書なんて存在するんでしょうか?

シリーズ中盤で篠さんが降板し、代わって伊藤 蘭さんが加入してから、彼女も現場でバリバリ活躍して、内容がコンビ物からチーム物へと変化して行きました。

タケカワユキヒデ作曲によるOPテーマも、バラード調からポップなテクノ調に変更され、番組後半は『勲章』の続編である事を意識しない作りになってました。

レギュラーキャストは他に、鈴木ヒロミツ、石橋正次、宮田恭男、堀江しのぶ、といったメンツ。昭和ですねぇ~w

決してつまんなくはないけど、なかなか琴線に触れる事も無い。そんな軽~いノリの’80年代刑事ドラマを代表する作品として、CSのファミリー劇場chあたりで是非とも放映をお願いしたいです。
 
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