ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『ニンゲン御破算』

2019-01-02 21:00:28 | 多部未華子








 
2018年6月にシアターコクーンで上演された、松尾スズキ作・演出による舞台『ニンゲン御破算』がWOWOWで放映されました。多部未華子さんがご出演されてますが主役じゃないので、これは劇場観賞しておらず初見です。

2003年に八代目中村勘三郎(当時は勘九郎)を主役にアテ書きして上演された、松尾スズキ初の幕末時代劇『ニンゲン御破産』を、今回はタイトルを一文字だけ替えて阿部サダヲ主演でリメイク。

共演は岡田将生ほか、荒川良々、皆川猿時、平岩 紙ら「大人計画」の面々。多部ちゃんが演じるは2003年版で田畑智子さんが扮したヒロイン「お吉」、吉原の遊郭に自ら積極的に売られていく田舎娘の役です。

幕末から明治にかけての混沌とした時代、芝居好きの主人公=実之介(阿部サダヲ)が人気狂言作家(松尾スズキ)に弟子入りを志願。自分が考えた狂言のストーリーをプレゼンしつつ、それ以上に波乱万丈な自分自身の生い立ちも語って聞かせる実之介。

どっちが狂言でどっちが実話なのか判別出来ないまま、いつも通り異様に速いテンポで(もちろん下ネタを交えつつ)話は進み、最後は思いがけず感動的なフィナーレを迎えます。

WOWOWでは2003年・中村勘三郎バージョンと2018年・阿部サダヲバージョンを連続放映。両者を比較しながら観るという楽しみをプレゼントしてくれました。

どちらも三時間超えの長丁場で、正月休みでなければ両方観るなんてことはまず不可能。正直言えば2003年版は半分早送りしながらの観賞だったけど、両者の共通点、相違点を大いに楽しむことが出来ました。

どっちが良かったかと言えば、多部ちゃんが出てる出てないに関わらず私は2018年バージョンに軍配を挙げます。中村勘三郎さんにアテ書きされたストーリーにも関わらず、阿部サダヲさんの方が圧倒的にハマってるように私は感じました。

内に秘めた狂気とか、性別を超えた情念の深さとか、芝居へのマニアックな愛情とか、阿部さんの方がダイレクトに伝わって来て私は心を揺さぶられました。

それはもしかすると、俳優としての力量うんぬんじゃなく、阿部さんの方がキャラ的に私自身に近い=自己投影し易いからってだけの話かも知れません。どんな狂人を演じようと勘三郎さんはどう見たって立派な大人ですから、私みたいなダメ人間とは全く別宇宙の人。阿部さんも立派な大人なんだけど、ダメ人間にも見えちゃう強みがある。

あと、2018年バージョンはBGMが生演奏で、和洋折衷のバンドサウンドがめちゃくちゃカッコいい。もちろんセットもグレードアップしてるし、録画中継で観てもシビレるんだから劇場で生観賞した人は鳥肌モノだった事でしょう。

そりゃあ、同じ作者がわざわざリメイクするんだから、新しい方が良くなってなきゃ意味無いですよね。それでもオリジナルの方に軍配が挙がることがままあるんだけど、本作に限っては順当にリメイクの勝利だと私は思います。

そして、多部未華子さん。もはや余裕すら感じる堂々たるヒロインっぷりで、心から楽しんで芝居されてる姿にタベリストは癒されます。

田畑智子さんには無かったダンスの見せ場と、白い内腿を「ちょっとだけヨ」しちゃうお色気サービスもあるけど、それより何より多部ちゃんの生き生きした姿、幸せそうな姿が観られただけで、余は満足じゃ。

とはいえ、まだ初々しい15年前の田畑智子さんも、甲乙つけがたいくらい良かったですw とにかく可愛くて、萌えますw

2003年版は阿部サダヲさん(2018年版で岡田将生さんが演じた役)も荒川良々さんも平岩紙さんもみんな若くて可愛いですね。(平岩さんもなにげに好きですw)

2003年版で驚いたのは、星野 源くんが脇役で出てること。人気ミュージシャンが片手間に俳優やってるものと思ってたら、こんなに前から舞台演劇もされてたんですね。ちょっと見直しました。

そんなワケで正月早々、純粋に楽しませて頂きました。最初はついて行けなかった松尾演劇にも、最近すっかり慣らされて来たみたいですw
 
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『デカワンコ新春SP』(東京篇)

2019-01-02 11:22:12 | 多部未華子




 
前回、省略しちゃった部分をフォローしますと、柳先生(大倉孝二)に打ち首を言い渡した「遠山の金さん」は、ワンコ(多部未華子)の下宿先のお爺ちゃん(上田耕一)のご先祖様です。

TVシリーズでワンコが、ヤクザ事務所に単独で乗り込み窮地に陥った際、このお爺ちゃんが肩の入れ墨を見せただけでヤクザどもがひれ伏し、救われたんですよね。それ以前から「お爺ちゃん、何者!?」とワンコに言わしめて来た、謎の多い爺さんだったのですが、ここに来て遂に、その正体が明かされたワケです。遠山の金さんの血を引くんだから、現代においてもヤクザどもがひれ伏すのは当然です。>そうか?w

それと、江戸時代のヤナさん=柳先生はデブ専ではなく、男ヤモメで女性には興味が無さそうな、生真面目人間です。現代とは逆に、お琴(渡辺直美)の方が柳先生に惚れており、ふくよかな彼女の存在が今後、先生を狂わせ、変態の道へと導くものと思われますw


☆トモロヲ。

さて、黄門様(伊東四朗)の顔パスで江戸城に乗り込んだワンコは、いよいよ将軍・徳川綱吉と対面します。レギュラーキャストはほぼ出尽くした筈で、じゃあ綱吉は一体、誰のご先祖様なのか?

「はっ、田村さん!」

「ん?」

そこでCMに入るタイミングが絶妙でしたねw gonbeさんも書かれてた通り、ここが一番『デカワンコ』ファンの意表を突き、かつ納得させる爆笑ポイントであったと思います。

現代の田村さん(田口トモロヲ)は鑑識課の警察犬係で、人間よりも犬と心を通わせてるように見える、素朴で不器用な人です。考えてみれば、綱吉の子孫として彼ほど相応しい人はいないんだけど、何しろ地味なポジションなもんで忘れてましたw

会ってみると綱吉将軍も、田村さんそのまんまの素朴なお人柄。動物たちが世間で虐待されてると聞いて胸を痛め、イジメないようお触れを出しただけの事だったのに、役人達がそれを利用して町民達を虐待してた、というのが真相のようです。

綱吉の想いは、町民に伝わっていない。「片思い……恋と同じですね」と言うワンコは、その誤解を早く解くよう将軍様にアドバイスw この場面では更にワンコのライバル警察犬・ミハイルやレティシアのご先祖様も登場しますが、説明が面倒臭いのでカットしますw

と、そこでワンコのケータイが鳴ります。現代のキリ(手越祐也)と、なぜか電話が通じちゃうのですが、ワンコのケータイが濡れてたのは、何か意味があるんでしょうか? ワンコは、セーヌ川に落ちてタイムスリップした?

「はっ、寝てました!」

↑お約束セリフの一つですw ワンコが目覚めると、そこは東京へと帰る飛行機の座席でした。ま、まさかの夢オチ!?

多部ちゃんが出た番宣の一つで、日テレの馬鹿アナウンサーが「まさか夢オチじゃないでしょうね?」なんて馬鹿なコメントをしてました。ほんと馬鹿ですよね、勉強ばっかりしてた輩は。ばーか。

『デカワンコ』なら夢オチぐらい平気でやっちゃう事を、司会者なら承知してなきゃ駄目でしょう? いや、どんな番組であろうと、勝手にオチを予想するなど不粋にも程があります。馬鹿! 乳毛!


☆おなじみの刑事部屋。

「なに? 江戸時代とな?」

まだ時代劇気分が抜けてない、現代の門真ボス(升 毅)w 13係メンバーは誰も信じようとしませんが、ワンコが「夢じゃありません!」と主張してる以上、あながち夢オチとは限らないのかも知れません。

でも、私は「夢だった」に一票入れたいです。ギリギリ最低限のリアリティーは守る。それが『デカワンコ』の面白さを支えてると思うので。クドカンさんあたりの卑怯な「何でもアリ」とは違うんです。

パリに置いてけぼりだったヤナさんも無事帰国し、連ドラ主演で忙しいシゲさん(沢村一樹)以外は13係全員集合です。

でも結局、連続殺人事件は既に解決済みで、新たに発生した事件も、駆け付けたと同時に所轄が解決w 本庁の刑事達には実際、こういう事も起こり得るんでしょうね。

この出動場面で流れたのが、連ドラ『デカワンコ』のOPテーマ「太陽にほえろ!メインテーマ'97リミックス・駄馬編」です。「♪ダバダ、ダバダ」と唄うから駄馬。

今回のスペシャルで新録音されたフレンチ編や三味線編にも鳥肌が立ちましたが、この駄馬編=スキャットバージョンを初めて聴いた時の衝撃には及びません。そんな発想の大胆さが、まさに『デカワンコ』という番組を象徴してると思います。

この出動場面で、刑事達が横一列になって歩くのを背後から、横移動のカメラで捉えたショットは、たぶん映画『ニキータ』あたりから流行りだしたスタイリッシュな撮り方で、格好良かったですね。

でも、その格好良さが10秒と続かないのが『デカワンコ』たる所以です。前回も書きました通り、刑事ドラマらしい描写は江戸時代パートでやり尽くしましたから、もう捜査はいいでしょうって事ですね。

それにしても、警察犬のミハイルまで恋に落ちた様子なのに、ワンコは結局、人のお節介に駆け回るばかり。ワンコよ、君は玉木つばさか?

「恋かぁ……」

今回の視聴率は、かろうじて2ケタに乗った程度だそうで、『デカワンコ』の人気と実力からすると、不本意な数字と言わざるを得ません。

私はふと思ったのですが、レティシア=1回きりのゲストの恋だけじゃなくて、ワンコとキリの間にも少しぐらい「この二人、もしかして……」って思わせる描写があれば、メイン視聴者である少女層の興味をもっと引いて、数字は上がったんじゃないでしょうか?

それがワンコと来たら「ドキドキ!」とか言ってた割に、目の前にいる異性にはまるで興味なし。原作のワンコはずっとキリに片思いしてると言うのに!

でも、それが多部未華子のワンコなんですよね。多部ちゃんのワンコは、視聴率の為に恋などしない。加乃子や秀樹が大衆向けの「模範的な善人」になっちゃったら『つばさ』が『つばさ』でなくなっちゃうのと同じで、こんな一子だからこそ『デカワンコ』なんです。

だから、数字は仕方がない。それで続編の可能性が微妙になったとしても、『デカワンコ』を愛する我々は、本望と思うべきでしょう。


☆ビバ! 浅草。

ワンコは愛犬・パトラッシュの散歩中に、レティシアと再会します。彼女を下宿先の家に連れて帰ると、元警視総監の松田さんが遊びに来てました。

「はっ、黄門様!?」

「肛門?」

↑絶対、そう言ってますよねw この家にはワンコの同僚達のみならず、退職したとは言え警視総監まで遊びに来る。アットホームな警察にも程がありますw

松田さん情報によると、第1話で逮捕された後、汚職の全貌を解明する為に脱走までしちゃったガラさん(佐野史郎)は、裁判員裁判で懲役10年の判決を受けて、現在は長野刑務所に服役中とのこと。

その頃、ガラさんが佇む格子窓の外は寒々とした吹雪で、見る毎に状況が悲惨になってるワケですがw、松田さん曰く「模範囚」との事で、他の囚人達に習字を教えたりなんかして、文字通り「模範」を示してるのが可笑しいですw

そもそもガラさんが捕まっちゃう設定って、演じる佐野史郎さんが忙しくて毎回出演出来なかった事情による苦肉の策だったんじゃないか?と想像するのですが(お陰で素晴らしい第1話になりました)、まさか長野刑務所にまで行く羽目になるとは、佐野さんはもちろん、脚本の伴さんも当初は思ってなかった事でしょうw

さて、久々にピンク一色なワンコの部屋が登場しました。普通の感覚なら落ち着かない空間である筈なのに、我々はなぜか癒されますよね。招かれたレティシアも「カワイイ!」を連発します。

パリでは結局、恋人の「シゲ」に会えずじまいだったレティシア。シゲは電話にも出ない(沢村さんのシゲもそうだったから、もはや我々も同一人物だと確信しちゃってます)ゆえに、レティシアはたまらず日本まで会いに来たのでした。

「そっか……恋のつばさで、飛んで来たんだぁ」

「シゲのつばさ、折れてる……」

創り手も、ワンコの玉木つばさ化を意識してたのでしょうか?w

署に出勤しても、レティシアの恋を想って、ワンコはため息をつきます。「ワンコ、どういう人なんだ?」と、チャンコ先輩(石塚英彦)。ワンコ自身が恋してるものと同僚達が思い込むのはお約束ですが、刑事部屋でそれをやっちゃうドラマは珍しい。ええ職場やなぁ……


☆ローマの休日。

ワンコはパリ案内のお返しに、レティシアを浅草観光に連れ出しますが、彼女を追う謎の外人コンビの存在に気づきます。『ローマの休日』を御覧になった方なら、先の展開はミエミエですね。

そんな折りに、沢村シゲさんがようやく主演ドラマを片付けて帰国。ワンコはシゲさんに詰め寄ります。

「レティシアのこと、どうするつもりですか?」

「え? もちろん、幸せにするつもりです」

こうなったらどう見たって、このシゲとあのシゲは同一人物。ワンコは二人を会わせようとしますが、レティシアは例の外人コンビに拉致された模様。匂いを追うワンコ!

行き着いた先は「モナカ公国」の大使館。お察しの通り、レティシアはその王様の一人娘=次期王女様なのでした。

彼女には、親が決めたフィアンセがいる。シゲと結婚したいけど、彼にその気が無いなら仕方がない。でもせめて、最後にもう一度会いたい。そんなレティシアの願いを叶える為、ワンコは大使館を抜け出し、日本の「恋人たちの橋」=浅草・桜橋へと向かいます。


☆ロミオとジュリエット(オリビア・ハッセー版w)

レティシアに呼び出され、やって来た……と思われた沢村シゲさんは、橋を素通りしちゃいます。入れ違いに現れた板前風の男こそが、レティシアの恋人・茂なのでした。

こっちのシゲさんが会いに来たのは、もう一人の小さなレティシア。シゲさんと、別れたフランス人の妻との間に出来た娘が、たまたまモナカ王女と同じ名前だったのでした。ちゃんちゃん!

後日、モナカ王室が婚約会見を開き、その模様をテレビで13係の面々が見守ります。フィアンセのお披露目と見せかけて、茂さんとの結婚許可をサプライズ発表する、粋なモナカ国王。さすが外人w 日本人がやるとクッサイですよ、きっと。

驚き、感激したレティシアは、TVカメラを通して視聴者に語り掛けます。

「私、恋、ダメそうになった時、励ましてくれました。勇気をくれました。メルシー、ワンコ。ありがとう、ワンコ!」

王道の展開ながら、外人さんが演じるとサマになりますから、素直に泣けて来ます。

「恋の匂いがします!」

毎回恒例のワンコの決め台詞ですが、ヤナさんが真似して気持ち悪かったですねw

そんなワケで、恋をテーマに徹頭徹尾、ユル~く楽しかった新春スペシャルですが、ドラマとしては物足りなさを感じたのが正直なところ。

それは事件が起きる起きないの問題じゃなくて、前述の通りゲストキャラの恋がメインであった為、ワンコ自身のドラマが見られなかったせいだと私は思います。

『つばさ』で言えば、伸子さん夫妻や宇津木さん夫妻のエピソードみたいなもんで、ヒロインは傍観者の立場でしかなく、その行動が単なるお節介にしか見えないんですよね。

でも、そんな事は創り手の皆さんも先刻承知の上で、お正月なんだから『新春スターかくし芸大会』のノリで行こうよ!って事だったんだろうと思います。

フジテレビ系列で毎年やってたあの番組、いつの間にか無くなったんですね。やっててもたぶん観ないけどw、ちょっと淋しい気はします。

日テレでも一時期、番組対抗かくし芸大会みたいなのを正月にやってましたけど、もし今も存在したら『デカワンコ』の出し物はまさに、この新春スペシャルみたいな内容になった事でしょう。

だから、これで大正解。『デカワンコ』ファンにとって、最高に贅沢なお年玉でした。本当に楽しかったです。

メルシー、デカワンコ!


☆PS. 私がこのレビューを書いたのは7年前の2012年。今だから正直に言いますが、この『デカワンコ新春SP』はイマイチでしたねw かつて『あぶない刑事』の続編がそうだったように、ハメを外し過ぎてやり過ぎて、番組本来の面白さを創り手自身が見失ってるように思います。

そう感じながらも認めようとせず、これは絶対に面白いんだ!って自分に言い聞かせながらレビューを書いてた当時の自分自身が、今となってはチョー恥ずかしいですw

多部ちゃんの芝居も連ドラシリーズの時と若干違ってましたからね。1年弱のブランクがあり、その間に忘れちゃったキャラを無理して思い出しながら「作ってる」感じがしました。もしかするとプライベートにおける女性としての成長も影響してたりして。

つまり、同じスタッフ&キャストが創っても、ちょっとタイミングがズレると微妙に違った作品になっちゃう。『デカワンコ』は2011年こそが旬だった……のかも?

単純に2時間かけて描くようなストーリーじゃないだけのような気もするけどw、とにかく正直な感想を今、ここで初めて告白させて頂きました。『デカワンコ新春SP』は、明らかにスベってますw
 

 
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『デカワンコ新春SP』(江戸篇)

2019-01-02 00:00:10 | 多部未華子




 
キリ役の手越祐也くんが番宣で、『デカワンコ』を「今、日本で一番自由なドラマ」って評してました。繋がりや辻褄を気にせず、現場のノリを最優先するドラマ創りが、彼は好きで好きでたまらないそうです。その気持ち、よく解ります。

私は高校時代から映画創りを続ける中で、脚本を書けば辻褄合わせに苦しみ、撮影現場じゃ画面の繋がりがおかしくならないよう「天気待ち」したり、通行人に頭を下げて退去してもらったり、上空を飛行機が通る度に中断を余儀無くされたり……

「ええい、しゃらくせえっ! 繋がりなんかどーでもええわっ!!」って喚きたくなる瞬間が何度もありました。本筋と関係ない事に時間を割かなきゃならないのが、とてもストレスになるんですね。現場全体の勢いにも水を差されるし、私はそのテの「待ち」が大嫌いでした。

『デカワンコ』だって全く繋がりを無視して撮ってるワケじゃないにせよ、例えば第9話で、同じ町内なのに片やピーカン、片や雪景色をバックにケータイで連絡取り合って「おい、こっちは雪降って来ちゃったよ」ってw

それぞれ撮影日が違うからなんでしょうけど、シリアスな番組には到底出来ない芸当です。さすがの『つばさ』でも、そこまでデタラメな事はしなかったのでは?w

何げにレギュラーキャスト全員が売れっ子で、常に超タイトなスケジュールで撮られてる『デカワンコ』ですから、そうでもしないと乗り切れないっていう切実な裏事情が、世界観をどんどん緩める結果を生んだのかも知れません。

今回のスペシャルは、そんな流れの果てに、行き着く所まで行っちゃったというか、歯止めが効かなくなっちゃった、まさに連ドラは生きものである事を証明したような、そういう作品だと私は思います。

そんなワケで、レティシアを探して駆け回るワンコ(多部未華子)が行き着いた場所は、なんと江戸時代の日本でしたw


☆生類憐みの令

「あっ、お犬様だ!」

駆け回る野良犬を見て、町民達が慌てて家屋の中に隠れます。下手に犬やその他の動物に関わると、牢獄行きになりかねないからです。

そう、「生類憐みの令」が下された徳川綱吉の時代に、ワンコはやって来てしまったのでした。彼女はある意味、お犬様の生まれ変わりみたいな女の子。犬と会話だって出来ちゃいます。

さて、そこに江戸町奉行の同心達が登場します。

「ボス!? キリさん!?」

先頭を走る男は門馬係長(升 毅)に、更にその片腕で「キリ形(平次)」と呼ばれる若者は桐島刑事(手越祐也)にそっくりではありませんか! 言うまでも無く、つまりボスとキリのご先祖様ってワケですね。

ここで流れる、軽快な三味線のリズムが楽しい「太陽にほえろ!メインテーマ'97リミックス」の江戸(というか津軽?)風アレンジに、私はまたも鳥肌が立ちました。このメロディはこれまで、ロック、ジャズ、レゲエ、ヘビメタ等あらゆるアレンジでカバーされて来ましたけど、まさか三味線の演奏で聴ける日が来ようとは!w

その同心達が向かった先は、町医者・柳先生(大倉孝二)の家です。そう、デブ専・ヤナさんのご先祖様。犬を虐待し、死に至らしめた容疑が掛けられてるのですが……

ヤナさんと言えば、ワンコがボケた事を言うと容赦無しの頭突きを食らわせる、つまり虐待してる人って事で、こういう設定になったんでしょうか? 彼がお犬様に毒薬を飲ませるのを見た目撃者までいるとの事で、柳先生は連行されちゃいます。

お手伝いとして柳邸に出入りする、ふくよかな女性・お琴(渡辺直美)は、ワンコの親友にして交通課婦警=琴美のご先祖様ですね。

ボ ス「ひっ捕らえろ!」

ワンコ「へっ、なんで?」

変な服装だから怪しい、というだけの理由で、ボスはワンコをも連行しようとします。とりあえず逃げたワンコが桶の中に隠れて「オーケー」って言ったのが駄洒落だったとは、gonbeさんのブログを読むまで私は気づきませんでしたw


☆水戸黄門、復活!

逃げ惑うワンコを助けてくれたのは、チャンコ刑事(石塚英彦)のご先祖様・助さんと、コマさん(吹越 満)のご先祖様・格さんでした。江戸時代でもグラサン姿のコマさんですが、よく見るとフレームが竹みたいな素材で出来てて、芸が細かいw 素材の問題じゃないでしょうにw

「なんだ、その爪は? 流行り病か?」

↑コマ=吹越満さんのアドリブと思われますが、ワンコの派手なネールを指しての言葉。この時代ですから奇異に見えるのは解るけど、病気ってw

さて、助さん格さんに連れられ、ワンコが入った屋敷にいた老人とは?

「総監?」

「相姦じゃと?」

↑私にはそう聞こえましたw 越後のちりめん問屋のご隠居らしいその人物は、松田警視総監(伊東四朗)のご先祖様で、言うまでもなく水戸光圀公その人なのでした。

折しも御本家『水戸黄門』がその長い歴史に終止符を打ったばかりで、報道番組で時代劇滅亡の危機が報じられてました。不景気の中、時代劇は製作費がかさむってな理由もあるけど、購買欲の薄い老人層がメイン視聴者である時代劇を作っても、儲からないからスポンサーが降りちゃう等の現実問題もあるそうです。

韓国みたいに国がバックアップしない限り、本当に時代劇は滅亡しかねない勢いで減り続けており、それは多くの職人が仕事を失うばかりか、日本の文化や所作などの伝統を残して行くツールを失う事をも意味する、とても深刻な問題でもあるんです。

私は大河ドラマぐらいしか時代劇は観ないけど、それでも水戸黄門みたいにパロディにし易い、誰もが知ってるキャラクターが無くなっちゃうのは淋しく思います。

今回『デカワンコ』で時代劇をやる事になったのも、こうしてパロディになり得る娯楽時代劇へのエールだったり、みんなで見直そうよ!っていうメッセージが込められてるのかも知れません。


☆小僧ワンコ登場!

格さんがどこかに置き忘れた印籠(おいおいw)を、自慢の嗅覚で見つけ出したワンコは、ご隠居様の信頼を得て、一緒に柳先生の濡れ衣を晴らすべく捜査に乗り出します。

私は今回のレビューにあたって「さぁ、いよいよ刑事ドラマの展開になって来ましたよ!」と繰り返し煽っといて、最後に「結局、捜査無しかよ!w」ってオチに持って行くつもりで書き始めたのですが、考えてみればこの江戸パートでしっかり、捜査、追跡、立ち回りと、刑事物でやるべき事は全部やってるんですよね。

それはともかく、ロリータファッションだと江戸時代でなくても目立ち過ぎるって事で、ワンコは小僧の扮装をします。なぜ町娘とかじゃなくて小僧なのか? それは多分、コーディネートしたのが格さん=コマさんだからでしょうw

バッチリ変装したワンコですが、外に出てから約5秒後に、平次=キリに見つかって確保されちゃいますw それがワンコという刑事なんです。嗅覚以外に取り柄なし!

その頃、北町奉行所では門真ボスが、楽しそうに柳先生を拷問してました。ヤナさんの苦悶の声を聞いて興奮する、かなりド変態なボスw

そんなボスが窓の外を見る際、ブラインドが無いのに(当たり前w)隙間に指を入れて覗き込む動作をするのは、言うまでもなく石原裕次郎さんのパロディ。言わばエア裕次郎w と言うより裕次郎さんをパロった「ゆうたろう」氏をパロった現代の門真ボスを、さらに江戸時代の門真ボスがパロってるワケですw


☆江戸時代でも牢屋の中w

あっけなく捕まり、牢屋に放り込まれたワンコ。そこには、例えば蚊を殺しただけで逮捕されちゃったような、加害者と言うより生類憐みの令による被害者達が、何人も閉じ込められてました。

その中にデュークタナカ(水上剣星)のご先祖様もいて、「デュークじゃねぇ、おいらはでぇーく(大工)だ!」とか言うのは前回解説しました通り、コマさんのお約束をパロったギャグです。

そして、どうやら石川五右衞門らしい牢名主が、ガラさん(佐野史郎)のご先祖様なんだけど、佐野さんが扮装に凝り過ぎて、誰なんだかよく分かんないw

でもワンコには匂いで判っちゃう。嗅覚以外に取り柄なしって書きましたけど、嗅覚が鋭いっていうのは刑事として、実は物凄いメリットなんですよね。そこに目をつけた原作者・森本梢子さんはホントに素晴らしいと思います。

「ガラさん、江戸時代でも牢屋に入ってるんですね!」

このワンコの台詞には笑いましたw 前回書きました通り、ガラさんはTVシリーズ第2話以降、ずっと拘置所暮らしなんです。

そこに、無理やり自白させられた柳先生が放り込まれて来ます。このままだと、先生は打ち首になっちゃう。

「私、ヤナさんの無実を証明します!」

ワンコは立ち上がり、身体の小ささ……というか細さ……というか薄さwを活かし、格子の隙間を抜け出しちゃいます。井上和香さんには出来ない芸当ですw

「いいか、鼻だけじゃねぇ。眼、耳、手、足、口、全部使って調べて調べて調べ尽くせ。考えるのは、その後だ」

五右衞門ガラさんのアドバイスは、現代のガラさんが第1話でワンコに言った台詞そのまんま。

江戸でもワンコが、ジーパン刑事のテーマをバックに駆け回ります。そして柳邸に駆け込み、先生が使ってた薬草の匂いを嗅ぎ分け、何やらヒントを掴んだ様子。

この時にサワリだけ流れる「嗅覚のテーマ」も、ワンコのキャラを象徴するような曲で、私は大好きです。

柳先生は弱った犬を治療しただけだった。お琴さんの証言も得て、ヤナさんの無実を確信したワンコですが、牢屋に戻ってみると先生は既に、打ち首が決まって連れ出された後でした。

ワンコは囚人達を解放しますが、なぜか自分の意志で牢屋に残るガラさんw でぇーくを含む囚人達を引きつれて、江戸の町をドタドタと走るワンコは、なぜか半笑いw

打ち首寸前の柳先生を救うため、駆けつけたワンコ、助さん格さん、さらにシゲさん(沢村一樹)のご先祖=風車の弥七も加わって、門真一味と大乱闘。

もちろん、そこで「静まれ、静まれぃ! この紋所が目に入らぬか!?」を合い言葉に、ご隠居が水戸黄門としての正体を明かします。

「水戸、肛門!?」

↑ワンコの台詞、私にはこう聞こえましたw 多部ちゃんの口から「肛門」って単語をぜひ聞きたい!という、スタッフ一同が仕掛けた罠に違いありませんw

柳邸で見つけたヒントを元に、ワンコはみごと柳先生の無実を証明して見せました。しかし、それもこれも全て「生類憐みの令」という悪法が引き起こした事件です。

「今度ばかりは、堪忍袋の緒が切れました」

ついに本気になった黄門様ご一行と一緒に、ワンコは江戸城へと向かいます。そう、時の将軍・徳川綱吉を懲らしめる為に!

(東京編へと続く)
 
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