ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『幕が上がる』

2019-01-07 00:00:23 | 日本映画









 
ももいろクローバーZが主演し、『踊る大捜査線』の本広克行さんが監督って事で、バラエティー番組と紙一重なアイドル映画を想像し、最初から敬遠しちゃってる方も多いかも知れません。

決してそうじゃないっていう評判は聞いてたけど、観たら予想以上に良く出来た青春映画でした。これならモノノフ(ももクロファン)であろうがなかろうが関係なく、誰にでもオススメ出来ます。(2015年公開作品、CATVで鑑賞)

高校演劇部の平凡な少女たちが、かつて高校演劇の女王と呼ばれた新任顧問(黒木 華)に触発され、芝居の楽しさに目覚めて全国大会へと進出していく。

まさに王道かつ極めてシンプルなストーリーだけど、それで泣かされたんだから相当凄い作品と言えましょう。

ももクロメンバー達のほとんどは元々女優志望だったものの、その為の訓練は受けてませんから、やっぱ決して演技が上手いとは言えません。(訓練を受けてない割には上手とも言えますが)

だから、最初は如何にも「演じてる」感じが眼について「大丈夫かいな?」「まぁ、やっぱアイドル映画だし」みたいに思うし、そこに本格女優=黒木 華さんが登場すると、なおさら力量差が露呈しちゃいます。いやホント、彼女が現れた瞬間に空気が変わっちゃいますから、あらためて黒木華の凄さを思い知らされます。

ももクロメンバーが下手なんじゃなくて、華さんが巧すぎるんですホントに。ふだん我々は多部未華子さん等ハイレベルな芝居を見過ぎてるせいで、過度にハードルが上がってることを自覚すべきかも知れません。

で、そんな凄い華さんの芝居に引っ張られ、触発されて、ももクロメンバー達の芝居もみるみる変わっていくワケです。そこがこの映画最大の見所なのは間違いないでしょう。

つまり映画世界と現実世界(撮影現場)が見事にシンクロしてる。本広監督はそれを見越して、脚本の順番通りに撮影を進める「順撮り」の手法を取り入れたそうです。『踊る大捜査線』が堕落したのは、決して監督のせいじゃなかった(100%亀山Pのせいだった)ワケですw

で、これはネタバレになっちゃうけど、演劇部のメンバー達がいよいよ全国大会に乗り込もうっていうタイミングで、なんと顧問の華さんが唐突に退場してしまう!

私が大好きな映画『ハスラー2』のポール・ニューマンと同じで、あまりに活き活きと芝居に取り組む部員たちに彼女自身が触発されて、なんと自ら女優道にカムバックしちゃうのでした。

撮影現場におけるももクロメンバー達も、そして我々観客も、いきなり黒木華という大黒柱を失って途方に暮れるんだけど、そこでふと気がつくワケです。華さんがいなくても大丈夫だって。

ももクロメンバー達が芝居の楽しさに目覚め、知らず知らず成長し、自分たちでしっかり映画を支えてる。そこにフィクションを超えた感動があるワケです。

彼女たちがそれまで現実に(アイドルとして)味わって来た試練の数々、それを乗り越えて来た記憶とか、身体に染み付いたものが、映画の内容(演じるキャラクター)と見事にシンクロしたんでしょう。如何にも「演じてる」感じが払拭されてました。

だから、この映画を本職の(元から上手い)若手女優たちを起用して創ったとしても、これだけの感動は生めなかったかも知れません。それだとフィクションの域を超えられないから。

これ、最初からももクロありきのストーリーかと思いきや、演劇界の巨匠=平田オリザさんの小説を映画『桐島、部活辞めるってよ』の喜安浩平さんが脚色された作品なんですね。

ももクロメンバーの個性に合わせてアレンジはしたでしょうけど、それにしたって驚くほど、ももクロメンバー全員の立ち位置が演じるキャラクターと一致してました。それも勝因の1つでしょう。

何を隠そう、私はちょっと前に「モノノフ」道に片足を踏み入れた時期があります。忙しくなって歌番組やバラエティー番組を観る時間=彼女たちの姿に触れる機会がほとんど無くなったもんで、にわかブームに終わっちゃいましたが……

でも、こうして彼女たちの常に全力投球な姿を観るにつけ、また愛おしさが湧いて来ます。

アイドルとしては百田夏菜子さん(レッド)や玉井詩織さん(イエロー)に注目するんだけど、面白いことに今回の映画では、だんぜん有安杏果さん(グリーン)に眼を奪われました。アイドルとしての魅力と、演技者(パフォーマー)としての魅力はまた違うんですよね。

あと、演劇部員の1人として『トランジットガールズ』の伊藤沙莉さんも出演されてます。この人も杏果さんと同じで、脇で主役を支えてこそ光る存在かも知れません。

脇で光ると言えば、何もしない演劇部顧問役の、ムロツヨシさんも素晴らしかったです。なにしろ、本当に最後まで何もしないw

普通ならどこかで、観客を泣かせる見せ場がありそうなもんだけど、ほんと徹底して何もしないw しかも、それをネタに笑わせようともしないw 本当に素晴らしいですw

そんなワケで、この映画は自信を持ってオススメ出来ます。アイドル映画だと決めつけてスルーしちゃうのは勿体ないです。


PS. その後、有安杏果さんがももクロを脱退しちゃいました。ほんと世の中、何がどうなるか分かりません。
 
コメント
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