ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『君の名は。』

2019-01-04 12:55:32 | アニメーション









 
2016年、『シン・ゴジラ』と共に史上空前のメガヒットを記録した、新海 誠 監督によるアニメーション映画。WOWOWでようやく観ました。声の出演は神木隆之介、上白石萌音、長澤まさみ、市原悦子etc……

観てない方でも大まかな内容はご存じでしょうから、此処では個人的な感想だけ書かせて頂きます。

男女の心が入れ替わっちゃう『転校生』バリエーションの話だとは知ってましたが、実際に観ると同じ尾道三部作でも『時をかける少女』の方に近いと私は感じました。

ただ入れ替わっちゃうだけじゃなくて、両者の間には3年という時間の隔たりがあるんですね。しかも、その3年の間に片方がこの世からいなくなっちゃってる。

だから現実には会えない相手なのに、どうしても会いたい想いが奇跡を起こす。お互いの存在が記憶に残ってないのに、想いだけはずっと残ってる。いつか出逢えることを信じて、相手を探し続ける終盤の二人は『時をかける少女』の芳山和子そのまんまでした。

もちろん元祖『君の名は』へのオマージュもあるでしょうが、それよりも新海監督は大林宣彦監督から、私が思ってた以上に影響を受けておられるようです。

それにしても、あの異常な大ヒット。たかが純愛ストーリーのアニメ映画を、なぜ日本人があれほど群れをなして観に行ったのか、とにかく私はその理由が知りたくて観ました。で、自分なりに答えを見つけましたよ。

あれだけ沢山の人が観てるんだから、同じ答えを出した方も沢山おられるかも知れないけど、これは決して受け売りではありません。(一応アマゾンのレビューは覗いてみたけど、盲目的な絶賛ばかりで何の参考にもなりませんでした)

私の答えは、たぶん大ヒットの理由は『シン・ゴジラ』と全く同じだろう、という解釈。どちらも、物凄く上手に創られた「アトラクション映画」なんですよね。

考えてみれば、現在の日本で(世界でも?)映画をヒットさせるにはアトラクションの要素が不可欠です。本作のクライマックスである彗星落下のくだりなんか、完全に災害パニック物ですから、それこそ『シン・ゴジラ』と変わんない。

で、祭りの夜にやって来て分裂し、花火みたいに降り注ぐ彗星の欠片群という、映像の美しさとロマンチックさ! そんなシチュエーションの下で繰り広げる一大メロドラマですから、そりゃ女性客は酔いしれますよ!

『シン・ゴジラ』よりも『君の名は。』の方がヒットしたのは、前者が男の子向けのアトラクションで、後者が女の子向けのアトラクションだったから。ホントそれだけの違い。

彗星のくだり以外でも、主役二人や村の人々の運命を左右するアイテムが、山奥のパワースポットに隠されてるなんて『インディ・ジョーンズ』そのまんまだし、この映画でテーマパークが造れるくらいアトラクション要素が満載なんですよね。だからこそ、皆わざわざ劇場に足を運ぶワケです。ストーリーじゃなく、シチュエーションを楽しむために。リピーターが多い所以です。

もちろん良いストーリーだし、語り口も憎らしいくらい巧いんだけど、この「アトラクション」の要素が無ければ大ヒットにはならなかっただろうと私は思います。

それは新海監督の計算だったのか、あるいは監督ご自身が好きな映画の要素を盛り込んで行った結果、たまたまそうなったのか?

いずれにせよ、これは大ヒットすべくして大ヒットした、いま最も売れる映画の典型モデルです。とにかく女性客が酔いしれるシチュエーション、それも劇場の大画面でこそ堪能できる大スケールのシチュエーションを設定し、その下で等身大のキャラクターによる甘~いメロドラマを展開させる。今後のシネコンは、そんなアニメしか上映しなくなるかも知れませんw

……と、いうような分析を抜きにして、素直な感想を書けば、とても面白かったです。特に『転校生』だと思ってた話が実は『時かけ』だった!ってことが分かって来る、序盤から中盤にかけて。後半はやっぱメロドラマですから、女性客みたいに酔いしれることは出来ませんでした。

それに、やっぱアトラクションだけに観てる間は楽しいけど、余韻は残らないですね。冷静に振り返ると、ちょっと話が甘すぎたんじゃないかと思います。

尾道三部作は、ただ甘いだけじゃなく「青春の痛さ」「残酷さ」がちゃんと描かれてました。だから心に突き刺さって忘れられないワケです。

『君の名は。』は、たぶん明日には忘れちゃいます。そりゃアトラクションだから当たり前のこと。いま大ヒットする映画は、おしなべてそういうもんだと思っておけば、まず間違いありません。

PS. 『シン・ゴジラ』もあらためて観直しましたが、全く新しい手法とクラシックな手法を見事に融合させてる点も『君の名は。』と共通しており、庵野秀明監督と新海誠監督はやっぱ資質が似てると思いました。庵野さんも本職はアニメですもんね。
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『カメラを止めるな!』

2019-01-04 00:00:07 | 日本映画









 
2018年最大の話題作と言えばコレでしょう。(公開スタートは2017年11月)

映画専門学校「ENBUゼミナール」でワークショップの一環として製作された、製作費わずか200万円のインディーズ映画が、単館上映から口コミの評判により全国規模で公開され、200万人を超える観客動員を記録したという、前代未聞の「ジャパニーズ・ドリーム」映画。

監督・脚本・編集の上田慎一郎さんがテレビのバラエティーや報道番組で引っ張りだこの有名人となり、無名ミュージシャンによる主題歌がヒットし、ヒロインを演じた秋山ゆずきさんのセクシーグラビア(画像6~10枚目)が発掘され、登場キャラクターのフィギュアまで発売されちゃう異常事態。

もちろん私も「そんなに面白いの?」って大いに興味を引かれたけど、たぶん自分が求めてるものはそこに無いっていう予感はあったし、かつて同じようにインディーズ映画を創ってた立場として嫉妬の感情もありますから、劇場まで足を運ぶには至りませんでした。

でも、こうしてDVDがリリースされてすぐにレンタルし、新年1発目の日本映画レビュー作に選んだワケですから、やっぱどうしても気になる存在であったことは認めざるを得ません。

かくして、思いっきり冷めた目線で「そんな大した事ないやん」って書きたい気持ちを抑えつつ、出来るだけニュートラルな気持ちで受け入れようと自分に言い聞かせながら、自宅のテレビで観賞しました。

素直な感想を言えば、「なるほど!」「うまい!」の二言。良くも悪くも、それだけです。

「笑える」そして「泣ける」との評判もあったけど、別に泣けやしませんw でも笑えました。泣かされても私の評価には影響しないけど、笑わせてくれた作品はポイント高いです。そこはホント大事なところです。

もちろん、何より気になってたのは、映画の構造自体に大きな仕掛けがあるらしいっていう巷の評判で、上田監督もやたらネタバレを警戒されてましたから、よっぽど凄いどんでん返し、全く予測不可能な展開が待ってるんだろうなって、かなりハードルを上げて見ちゃいました。

(以下、ネタバレになります。先入観を持たずに観たい人は読まないで下さい)




これは「やっかみ」でも何でもなく、仕掛けそのものは大騒ぎするほどのもんじゃないと私は感じました。

要するに30分のゾンビ映画をワンカットで撮影するスタッフ&キャストたちの舞台裏を見せる二重構造で、やってる事は例えば黒柳徹子さんの『トットチャンネル』等で描かれた、撮り直しが出来ない生放送ドラマの舞台裏とよく似たドタバタ劇。

ただ、その見せ方がとにかく上手い。最初にその1カット映画を全編見せて、随所に「あれ?」「今のなに?」っていう布石を仕掛けといて、第2幕となる舞台裏描写の中でその謎を1つ1つ解いていく。

各キャラクターの言動が、30分映画の中と舞台裏描写の中とで全然意味が違ってくる面白さとか、キャラクターそれぞれの動かし方、性格設定の活かし方がとにかく上手い。それがいちいち笑いに繋がっていくところがまた憎い。

巷で「泣ける」って言われてたのはたぶん、ゾンビ映画の監督とその娘との確執と和解や、バラバラだった撮影チームが結束していく人情ドラマを指してると思うんだけど、その辺りの描写はありがちで「上田監督、置きに行ったな」と私は思いました。

けど、つくづく思わずにいられません。その「ありがち」で「あざとい」仕掛けこそが、現在(いや、昔から?)の大衆が一番求めてるものなんやなあって。

私が普段から忌み嫌う「謎解き」で観客の興味を引き、「仕掛け」で観客を酔わせ、「泣かせ」の人情劇で締めくくる「TOSHIBA日曜劇場」式商法は、やっぱ絶対的に強いんやなあって。

上田監督は、その「ベタ」を「ベタ」と感じさせない若い感性で、みごと不特定多数の老若男女を楽しませて見せた。たくさんの映画やドラマを観て研究し、吸収し、さらにアイデアを練りに練った努力の賜物でしょうから、それを皮肉ったりはすべきじゃないと思います。

でも、私はこの映画のリピーターには絶対ならないと断言できます。やっぱり予感した通り、私が求めてるもの=作者の魂の叫びみたいなものは、この映画に全く感じられないから。

大多数の観客が映画に求めるものって、やっぱアトラクションなんですよね。その世界でサクセスしたいなら、仕掛けをとことん練るのが一番の近道なんだって事が、この『カメラを止めるな!』大ヒットにより証明されたワケで、もはや魂の叫びなんか関係ない。私は映画監督への道を早々に諦めて大正解でした……なんて書いても負け惜しみにしかならないけど、ホントそう思います。

ただし、凡庸なアトラクションじゃ当然ダメだし、単に奇抜なアイデアで驚かせるだけでもダメ。本作を観る前は「あまりに注目されすぎて、上田監督は一発屋に終わるんじゃないか?」って思ってたけど、実際に観たら仕掛けそのものより、見せ方にこそ抜群のセンスとテクニックを感じたので、今後も彼はどんどん面白い作品を提供し、ヒットさせて行くんだろうなと思い直しました。

それはホントにドリームの実現で素晴らしい事なんだけど、いよいよ自分が本当に観たい映画やドラマは無くなって行くんやなあって、つくづく実感させられる2019年のお正月ではありました。
 
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする