害虫屋の雑記帳(ブログ人の保存版)

ブログ人のサービス停止に伴い、gooに過去記事を保管させてもらうことにした。

天狗の隠れ蓑

2008-09-29 23:48:08 | 自然観察

ツメダニの古いプレパラートを観察。
室内塵検査で時々検出されるツメダニの不明種について考え中。
写真は、我社の社長宅(東大阪市)の畳から採取された個体。
大きな扇状毛が体の大部分を覆うという、ナゾの構造を持つ。
触肢の指状突起先端にある剛毛の形が先太りであることと、周気管の形態を観察した結果、Neoeucheylaの一種とおもう。
Neoeucheyla_sp 

扇状毛にはどのような機能があるのだろう?
触肢のツメを隠すような位置にまで扇状毛がある。
化学的な隠れ蓑?獲物に気づかれないように接近できるなどという能力があるのかも。
飼育に成功したことがないので確かめようがない。

Neoeucheyla_sp2 


赤と黒

2008-09-27 23:14:00 | インポート

相生の海岸でダニ観察。前から気になっているダニだらけの場所で昼休み休憩。なんて書くとむず痒い感じだが、陸地のほとんどの場所がダニだらけといえるので、特に変わったことをしているわけではない。
今日の昼は引き潮で、フジツボやらカキやらがくっついている岩のあたりでも観察しやすかった。
たくさんのダニが日当たりのよい場所を徘徊していた。どのダニも、体全体が赤っぽくて、少し黒っぽい部分があるような色合いなので、全部同じ種類だろうと思いながら吸虫管で少しばかり採集してみた。
帰社してから、これらの採集品を、実体顕微鏡でよく見ると、驚いたことに複数の科のダニ類が入り混じっていた。私は、色合いを重視して生物分類をする傾向があるが、海岸のダニには全く通用しないということを思い知った。
一番意外だったのはツメダニ科が混じっていたことで、照りつける太陽の下、岩の表面を徘徊する種がいるなんて思いもよらなかった。大型の種で属は不明。第1脚付節が太いってあたりでEutogenes近縁のような感じもするが、今まで見たこともない種類である。Cheyletidae_gen_sp

室内種でも不明種が多いのに、野外のツメダニなんかはどーしょーもない。拡大してみると同時に採れたテングダニと全く違う形態だが、採集しているときは全然区別がつかなかった。
この類似性はなにか理由があるのだろうか?Bdellidae_gen_sp

*9/30追記

ツメダニの一種 Cheyletidae gen. sp.と思っていた種は同定間違い。Heteroteneriffia sp. (ユビダニ科)だった!プレパラートにしてみると顎体部がまるっきりチャウ!実体顕微鏡レベルでも違和感があったが・・・アホやな。


クロルデンとチクロの子ら

2008-09-26 23:55:00 | 自然観察

連日、食の安全性が脅かされているというニュースで各メディアは大騒ぎだ。
この状況には、なにか違和感を感じる。農薬かかりまくりの農作物を食べながら育った世代の一人としては、クンクンしてもわからないレベルの農薬が大問題になるというのがピンとこない。過去には、有機水銀剤、ドリン系薬剤などヨク効く薬がいろいろ使用されていた。と、古い農薬便覧をみながら思い出にふける。ムッと薬剤臭のするキュウリでも、水でよく洗うと臭いがなくなるので安心して食べていたものである。Binran
遠い昔に、アメリカの某社の重役が来日して、有機塩素系薬剤の安全性を公演していたのを聞きにいったことがある。直接飲んでも完全に体外に排出されると力説していたのに、結局、全面禁止になってしまった。レイチェル・カーソンの圧勝というわけか。とはいえ、日本では忘れ去られた過去の薬剤(DDTとか)も、実はいまだに安全性の議論に決着がついてなくて、現役だったりするので世界は複雑だ。
飢えと薬害のどちらを選択するかって話の世界でボクらは暮らしているのだと認識していた。
いつのまにか日本は、あらゆる汚染を拒絶するとても清浄な世界になっていたのか・・・知らなかった。


違う毛

2008-09-15 23:40:00 | 自然観察

泉州は、だんじりで超もりあがり中。買い物に出かけるのも苦労するというわけで、家の中で古いツメダニの文献を少し読んだ。
ダニ類の形態を観察してると、同じ星の生き物とは思えない違和感を覚えるものがいくつかある。ツメダニ科の体毛にも、なじめない形状パターンがいくつかあって、そのひとつに不規則なカビのごとき胴背毛なんてのがある(下の写真の矢印位置が毛の根元)。

「ヒエログリフ(神聖文字)のような剛毛」などと、Volgin先生は、分類検索で表現されているが、少なくとも私の目にはヒエログリフに全然みえない(もしかしたら「ワケワカランかたちの毛」という意味?)。アラベスクとか唐草模様というあたりが少しかすっているかもしれない。コケムシの群体にもこんなのがいたような気がする。Mexecheles01
メクセケレスでは、この神聖文字が後部背板上に何対あるかということが、重要な分類のカギだとVolgin先生は考えておられるのだけれど、私はあんまり当てにならない形態だと考えている。飼育個体群をみていると異常な個体が結構な頻度で見られるのだ。
つついても壊れにくい口吻の背面の微小なパターンなどの形態のほうが、安定した区別点として利用できると思う。
胴背毛の長さとか数などは、プレパラート作るとき変になりやすい部位なので、重要なキーとして扱うのは勘弁してほしいと思う。


それにしても、若虫のときは普通っぽい毛なのに、成虫になるとモヨモヨした形になる神聖文字の毛ってのは、いったい何の役割があるのだろう?

やはり顎体部に、ばらつきの少ない重要な分類的特徴がいろいろあるとMexecheles02思う。それにかっこいいし。


杖の先にともる魔法の明かり

2008-09-13 23:48:00 | 自然観察

闇の中を急ぎ足。夜9時も過ぎると住宅街は静かだ。
とある住宅の前にさしかかると、小学校低学年の女の子が玄関先で何やらしているところだった。
知ってる子なので「やあ」とか軽く挨拶して通り過ぎると、「なあなあ」と話しかけてきた。歩調を緩めずに手を振りながら遠ざかろうとした(どうせまたポケモンのシールをみせよーってんでしょ・・・)。
すると、「これってセアカゴケグモ?」というか細い声が、相当行き過ぎてから聞こえてきたので、小さく毒づきながら引き返した。

子供が指さす玄関ポーチの隅に、ポケットから取り出したLED懐中電灯の明かりを向けた。白い光の円の中にセアカゴケグモのメスの亜成体がみえた。女の子に踏んで殺すように指示するが、フルフルと嫌がるので私が踏みつぶした。「スゴイなあ。」と感心するのでなんだと思えば、懐中電灯を指差してきた。「あっかるいなー!」としきりに感心していた。

そんなに感心されると、こっちもなんだか闇を退ける魔法でも使ったような得意な気になってくる。

ここのところ、仕事でもLED照明についてかかわることが出てきた。
食品工場や店舗の低誘虫性の照明器具のプランニングで、LED球も検討対象になってきたのだ。
昨年から話題にはなっていたが、死ぬほど高価なのと、いうほど明るくないやんけ的な評価で、実用にはまだまだでしょうと思っていた。でも、この夏から発表された各大手電機メーカーのラインナップには、かなりLEDが進化した状況がうかがえる。
特に、従来の器具の口金に使えるビームランプ型の機種には、ものすごく注目している。ビームランプやハロゲンのレフランプは熱くなるので、近紫外線カットフィルムなどが使用できず、防虫対策上は困った照明器具なのだ。しかも、使用されている場所はとても多い。

直管蛍光管型LED球も、大手メーカーから出ていないが、面白そうな製品だ。割れないことと省エネが売り。紫外線照射LEDもあってライトトラップに使えそうな気がする。
一年中光りっぱなしの捕虫器にこそ、省エネの電球はふさわしいだろう。
でも、虫がどの程度誘引されるのかという点は、実績がまるでないのでかなり不安。

虫を強力に誘引してくれれば、革命的に軽量な山岳用の昆虫採集ライトトラップも作れそうだ。って最終目的はやはりそこか・・・・。Expway_light