会社の倉庫に置いてあるヤマトシロアリ飼育容器を清掃した。材は相生市から採取してきたもので、シロアリは滅びてしまって、その後にツツキノコムシsp.とトビムシ類が大量発生した。他にもイッスンムカデやら、エグリゴミムシやらが出てきたが、珍しげな虫は出てこなかった。
とはいえ、エグリゴミムシはお気に入りの虫なので、材を廃棄する前に幼虫を液漬にしておいた。
2011年は、エグリゴミムシ属の幼虫について重要な論文がでていた。
Moore W, Song XB, Di Giulio A (2011) The larva of Eustra (Coleoptera, Paussinae, Ozaenini): a facultative associate of ants. ZooKeys 90: 63-82.
論文中に出てくるEustra sp.というのが、E. japonicaに似ている。アリとの関係にも触れられているけれど、この属とアリとの関係はビミョーだと思う。
少なくとも、南大阪で普通に生息しているエグリゴミムシは、アリの巣と関係がなさそうな場所でも多く見られる。朽ち木でハリアリ類やヤマトシロアリのコロニーをつついたりしていると、巣の端っこの方でエグリゴミムシの成虫がチョロチョロしたりするのを見かけることもあるけれど、社会性昆虫が入居中の領域にまで入り込んでいるトコロは見たことがない。幼虫は林床に転がっている太い木の裏側で見つかり、好蟻性というカンジはしない。
20数年くらい前、所用で沖縄本島に行った折に、ジュウジエグリゴミムシの幼虫も採集しようとしたけれど、成虫は少なくなかったものの、幼虫採集は空振りに終わってしまった。本州のように湿った太めの朽ち木が少なかったので、もう少し深い場所かシロアリのコロニーに近い場所にいたのかも知れない。
私は別にこのグループを研究しているワケでもないのだけれど、幼虫の尾端にある分泌物で覆われた円盤が獲物のトビムシを誘引している?とか、種によって円盤の形状がどんな風に異なっているのだろうとかってことに関心がある。エグリゴミムシとオオエグリゴミムシの幼虫の円盤は記録されたので、日本の種の円盤に関しては、ジュウジエグリゴミムシだけが課題として残っていることになる。
年のせいか昔話が多い・・・。ついでに書いておくと、私が見た最初のエグリゴミムシの幼虫は、若かりし日のAcleris氏が、田舎からお土産で持ってきてくれた物である。30年くらい昔の話。ルリクワガタの仲間採ってきた!(キガシラアオアトキリゴミムシだった・・・)幼虫も入ってるで!と渡された朽ち木の中の幼虫を実体顕微鏡で見て驚いた。
当時、刊行されたばかりの「甲虫の幼虫の見分け方(林長閑著)」を取り出して、不敵に微笑みながらエラソーに同定したるわとなどと安請け合いした記憶がある。
偉大な本を活用しきれず、実は絵を見比べているだけの私には、その本のなかで近い種を見つけられなかったくせに、ハネカクシの一種であろうと意見を述べた。
「えええええぇぇぇぇぇーーー」とAcleris氏は、疑惑と不満と抗議のいりまじった反応を示していた。「ハネカクシは分からない!ゆえに分からない幼虫はハネカクシである!」と私は強弁したが納得した風ではなかった。
その後、甲虫図鑑I巻がでてヒゲブトオサムシ科幼虫の図と出会うまで、ずっとナゾの幼虫だったのである。
液漬にする前に写真撮影をしておいた。この頃、よその虫関係のブログをみていると写真のクオリティーの高さに目をむくのだが、当ブログも一眼レフレベルに肉薄すべくリコーCX1に改造を施して撮影を試みた。
一歩どころか数百歩およんでいない気がする・・・・。
エグリゴミムシ幼虫の体表によく付着している菌類。
ゴミムシ類のLaboulbeniales目なんかは複雑な形状で面白いけれど、これは単純なカタチ。同じ目なんだろうか?
*エグリゴミムシ幼虫の写真が消えて、カメラ本体だけの画像を表示していたのを修正した。(2017/07/27)