害虫屋の雑記帳(ブログ人の保存版)

ブログ人のサービス停止に伴い、gooに過去記事を保管させてもらうことにした。

腐海の底

2012-06-29 23:48:56 | 自然観察

マサカカツオブシムシの若齢幼虫は、みずみずしい色合いの細い足でゆっくりと歩く。
チョット毛虫に似た丸っこい体型もとてもカワイイ。
たくさんのチビッコが虫の死骸にたかってチマチマ食べている様子も、私の目にはすこぶる愛らしく映る。
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でも虫が嫌いな人であれば、この光景をみてしまったなら肌が粟立つだろうってことも少しくらいは解るつもり。
虫好きな私にしても、自分の大切な標本箱で、こんなふうに無断で食事されていたら絶叫するに違いない。

腐海に墜落したアスベルが、マサカ幼虫みたいな体型の跳ねるヤツに襲われていたのを思い出した。


マサカ幼虫は跳ねないし、タッパーの垂直面を上れない。たいした害虫にはみえないけれど、虫屋の心に染みいる様なスルドイ攻撃ができる。


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カミキリムシの鞘翅がまるで溶けたようになくなっていくのをみていると、自分の標本箱でアレとかコレとかが喰われたらと急に心配になってきた。


ヒラタをひらった

2012-06-26 23:54:53 | 自然観察

中干しがはじまった田んぼを見ていると、あちこちでイネミズゾウムシが歩きまわっていた。
いつの間にか夏とは。季節の移り変わりに意識がついていけない。
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食品工場の機械室で貯穀害虫の確認をしていると、大物がのそのそ歩いていた。
ヒラタクワガタが食品に混じったら口腔内損傷を引き起こすのは必定なので、すみやかに排除した。ほんとに地球は悪い虫でイッパイなので、害虫駆除業者に安らぐヒマはない。

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採集したときは完品だったのに、標本にするときは触角の先が欠損しているのに気づいた。ナゼだ?この個体は、兵庫県北部産の標本として保存することにした。Hirata_hyougokita

展脚が・・・。やる気ないなコレは完全に。

そういえば、そもそもこのブログを始めたときには、近所の雑木林を逍遥して得たクワガタムシを記事にして、大阪北部産と大阪南部産といった超ローカルなヒラタクワガタの変異について、夢野久作のドグラマグラのような長い文章を書きたいと考えていたことを思い出した。

クワガタ採集こそが真の昆虫採集である。水銀灯の下をドタドタと歩き回って繊細な美を楽しんでいるガの愛好家を脅かし、生木を痛めつけて出ない樹液を余計出なくしたり、回収しないナイロンストッキングの果実トラップの数を競ったりなどというのは、たいそう漢らしい漢のムシトリといえよう。

南の島でも、原生林に空き缶を捨てたように見せかけて、実は符丁を含むマーカーだったりなんてコトをマネしつつ、希少なクワガタをムダに捕りまくりでスバラシク無法な趣味の日々を記録しようと願っていた。

それが、過去記事を振り返ってみると、愚にもつかないダニとかの記事が多いのはどうしたことだろう?ちっともクワガタムシが出てこないではないか!激しい自責の念に駆られるが、久しぶりの漢のムシ(ヒラタ)をゲットして記事にできたのでヨシとしよう。


トム・ソーヤーのダニ

2012-06-19 23:53:18 | 自然観察

ウィキペディアの「ダニ」の解説は、解りやすく簡潔にまとめられている。
調べ事の時に、よく参考にさせてもらっているページでもある。
クローバーハダニとしている写真が、ナミケダニの一種だったりとか、ちょいミスもまだ残っているが、そのうちに修正されていくだろう。
小説の中にでてくるネタにも触れられていて、トム・ソーヤー達がおもちゃにしてたダニは、大型のケダニだろうという興味深い推測が添えられている。

架空のことだし、もちろん解釈は人それぞれでいいだろう。
でも、これにはすこしイチャモンをつけたい。
ケダニ「Velvet Mite」は、柔らかくて乾燥に弱そうだし、トム達の扱いに耐えられるだろうか?
刷版によって違うのかも知れないけれど、Archive.orgで原書にあたってみると、トムのダニは「Tick」なので、本来はマダニと訳されるべきものだろう。
大型のマダニ「Hard Tick(Ixodidae)」であれば、机の上で活発に歩かせて、ワルガキの良い遊び相手になること請け合いだ。第一、ピンでつついて「元気づけ」なんつー荒っぽいコトにつきあえるのは、体表が硬いマダニしかいないだろう。

楽しい遊びだろうけど、あんなコトを今のガッコでやったら大問題になりかねない。アメリカのライム病対策でやっきな地域だったら、生徒だけでなく教師までもが衛生局などから大目玉くらうだろう。自然公園なんかでも、ダニ注意の看板が設置されているところが多くて、素足をむきだしにした子供を連れて歩いていると、レインジャーからメッチャ怒られるそうだ。どこも世知辛くなっていくものだ。

ついでに、ダニが閉じ込められていた雷管箱というのも調べてみた。ブリキや真鍮で作られた丸く平たい形状のしっかりした缶で、直径4cm前後、高さ2cm前後のものが多いらしい。
いまや骨董品の雷管箱・・・私も虫入れ用に一つ欲しくなってきたぞ。
銃用雷管なんて、博物館モノだろう。いまどきのアメリカの子供達だったら、小説を読んでどんな箱をイメージするのか興味がある。
日本の子供に説明するとしたら、知ってそうな類似品というとメンタムの缶とか?

トムの雷管箱には、ダニの前に「ハサミ虫」が囚われていた。犬にかみついて騒動になるハサミ虫ってなんやねんというのは、幼少からの個人的疑問だったが、今回初めて、原書のリアルな絵をみて驚いた。

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エラフスミヤマクワガタやん!ちょっと小型個体ぽいけど。雷管箱に入るとしたら47mmくらいか?(クワガタマニアモード全開)

子供の頃に読んだ本には、こんな絵はなかったと思う。最近の翻訳ではクワガタ虫になっている本もあるそうだが、旭屋難波店で見つけた3社の児童書ではいずれも「カブト虫」になっていた。クワガタムシの挿し絵なんか、どの本にも見当たらなかった。北米の代表的な甲虫の一つと思うので、ちゃんと紹介してもらってないのはとてもザンネン。


ゴースト・アント

2012-06-13 23:57:43 | 自然観察
大阪南部でアワテコヌカアリを採集。 暖かい地域で、ひそかに暮らしていて、人の気配がすると素早く隠れる。 ghost antという英名もアヤシイ感じがする。。 このアリをみたひとは、「え?アリがいたような気がしたけど、気のせいか?」 なんて思うのだろうか? 古い文献(PCO図説とか)にでてくる働きアリと、大阪府下で現在採集できる働きアリとは、体色のパターンが少し違っているように思う。 日本に入ってきたルートもいろいろありそう。 Tapinoma_melanocephalum_01_2

よい庭

2012-06-07 23:57:43 | 自然観察

 
 
 
大きな庭のある家におじゃまして仕事をした。
ドクダミもこんなにあると、花畑みたいだ。
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ハッカハムシが沢山いたけれど、駆除されることもなく安穏と生活していた。
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トホシオサゾウムシが、葉裏の間隙を器用に飛翔していた。
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多様な生き物が豊かに暮らせる庭。
こんなムシたちをブログにのせるというのは、豊かさのお裾分けをもらったということだ。
帰宅して、新聞を見て驚いた。ブラッドベリが亡くなった!
とても大好きな作家だった。
ブラッドベリのSF小説はあんまり機械臭くなくって、今日過ごした庭の日だまりのようなニオイがしていた気がする。