害虫屋の雑記帳(ブログ人の保存版)

ブログ人のサービス停止に伴い、gooに過去記事を保管させてもらうことにした。

害虫のきた道

2008-12-14 11:48:50 | 自然観察

現場をまわっているときは、できるだけ野外の虫を観察できそうな場所で昼食をとるようにしている。Asi01
先日12月11日には、海老江人工干潟のそばの河川敷で昼食後の散歩をした。でかいカニの穴がグラウンドの端にボコボコあいていた。アシの枯れ茎を割ってルーペでのぞきこんでいると、生きたツメダニっぽいのが、茎の奥に逃げこんだようにみえたので、その周りの何本かも含めて持って帰った。
ところが、持ち帰ってバラしてみても生きたツメダニは幼虫が数個体出てくるだけで、成虫は古い死骸しか出てこない。ゆっくり探している時間もないので、死骸をプレパラートにしてみた。
ハマベツメダニCheletomimus (Hemicheyletia) wellsiだった。

Chelotomimus_wellsi
このダニは植物上から採取されたり、室内塵から検出されたりしている。
アシの茎の中からでてくる生き物を調べると、ケナガコナダニによく似たコナダニや、ヒラタチャタテによく似たコナチャタテの一種なども出てきて、室内の生物相を連想させる。

家屋内でみつかるダニの進化史っていうのは、
1)乾燥地や枯れた植物の中で生活する種
2)1の中から動物や昆虫の巣の掃除屋やその捕食者が現れる
3)2の中から動物の体表寄生種が現れる  
4)以上の種の一部がヒトの巣(家屋)にも入り込む
などと、
ダニの研究者はみんな考えているのだろう、たぶん。
というわけで、枯草のダニは仕事と無関係ではないわけだ。
道草にはリッパなイイワケが詰まっていたとゆーわけではない。

バキバキと枯れアシを割っていると、ブチっとフサヤスデをつぶしてしまった。ついでに前から気になっていた尾端の毛をみてみた。
全然違う分類群にありながら、ヒメマルカツオブシムシの幼虫とフサヤスデは本当によく似ている。防御用の毛も似ているかというと、・・・全然似ていなかった。

Polyxenida_rear_bristles フサヤスデのはクリップ状の構造になっていて相手の体に引っかける方式だ。これはこれでスゴそうだ。

ヒメマル幼虫の槍状毛のほうは、簡単に取り外せそうな外観だが、トビイロケアリなどで試すと完全に相手の動きを封じている。北欧神話のフェンリルを縛ったヤツみたいに、無害そうにみえて丈夫な鎖だ。(つまり、仕組みが分かるようで分からない)。

Anthrenus_verbasci__rear_bristles

最強なヒメマルカツオブシムシ幼虫の写真がないので、少しデフォルメした線画を描いてみた。Himemaru


朝焼小焼だ

2008-12-05 21:46:34 | 自然観察

Vespa_mandarinia_nest 朝、かなりキレイに掘り出されたオオスズメバチの巣が会社のガレージに置いてあった。
前日の夜の成果だ。初めて後輩に任せたのだが、ちゃんと無事に終了したそうでウレしい限り。
仕事でやっているのだから、もっとバラバラに取りだしてもいいのに・・・。
持ち帰ったら誰か観察するかもって、ていねいに掘り出してくれているんやろなコレは、たぶん。
有機リン系の燻煙剤の強烈な臭気が残る中、多数のシマメイガ類の幼虫がまだうごめいていた。
働きバチは少なく、新女王やオスが何匹か混じっていた。
来年の春を迎えられなかった新女王を手のひらに乗せてみた。死んでると小さい。でも妙に少し重い。
この仕事をした会社の人間の糧として、オオスズメバチのおびただしい死があるわけだ。オオスズメバチだって多数の命を糧にしてたので、食物連鎖の一種ということにしておこう。
なんだか、金子みすずの「大漁」とかが頭をよぎる・・・。
とかいいながらも、いそいそとダニ類のサンプルを採集をした。
キスイムシ Cryptophagus sp. の成虫や幼虫もみつかった。この方々は同定できる気が全然しないコウチュウのグループである。白い子嚢果をもつカビ(ユーロチウムと思う)が育房内に生えていたので、キスイムシはこれらを食べていたのかも知れない。
写真の成虫は前頭部がかみ砕かれているが、これはたぶん断末魔で暴れていたシマメイガ幼虫のしわざ。Cryptophagus_sp_2
シマメイガの幼虫って、かなり凶暴である。オオスズメバチの幼虫も孵化したての頃なら、ヤバいんじゃないかと思う。
オオスズメバチの体表もざっと調べたが、コレといった興味深いモノは付着していなかった。
ダニはマヨイダニ科とホコリダニ科ばっかりで、ツメダニ科が出てこなかったのがちょっとガッカリ。