害虫屋の雑記帳(ブログ人の保存版)

ブログ人のサービス停止に伴い、gooに過去記事を保管させてもらうことにした。

需要掘り起こし

2008-08-31 22:10:09 | 自然観察

とある場所で、ちょっと用事があって一人でぼんやりと時間待ちをしていた。
手の甲がムズムズするので、ふと目をやると小さなムシが歩いていた。
アワダチソウグンバイだ。
コイツほど短期間で普通種になった外来種も珍しい・・・などと考えていると、グンバイは親指の根元あたりで止まった。払いのけずにボーとみつめていると、なんだかちょっと痛いような気が・・・・・・・・ん?・・っっっつぁイッテェエエ!
と徐々に鋭い痛みになったので、あわててムシをつまみあげた。なんでヒト刺しやがんだぁ!俺はキク科ちゃうぞ!刺された痕は1mm径ほどの赤斑になって、その後10分間ほどムズ痒かった。レース飾りが無くなればナンキンムシそっくりで、どことなく胡散臭い奴とは思っていたが・・・・。その夜、12時頃に寝る頃に、刺され痕をみると、まだ小さな赤斑が残っていたが、翌日にはほとんど目立たなくなっていた。
サシガメ、ハナカメムシ、マツモムシなどの捕食性カメムシが刺すことがあるというのは、結構よく知られている。アメンボだって稀に刺す。それだけでなく、実は植物食とされるカメムシ類でも、ヒトを何となく刺してしまう種がかなりいる。私自身の体験でも、数種類のヨコバイ類に草刈り作業中に痛痒い思いをさせられたことが何度もある。カメムシ目じゃないけど、アザミウマ類とかにもね。
 普通の家の中でも、何かナゾの生き物に刺されてカユイというのはよくあるが、野外から迷い込んできた虫が原因ということも少なくない。家の中で発生している虫にも、無害そうに見えて刺されるとキョーレツに痛いシバンムシアリガタバチや、その他のヒメアリガタバチ亜科なんてヤツラがいる。
だからといって、これらのムシ達をヒトを加害する有害種扱いというのもどうかと思う。落ちてる押しピンを踏んづけたような偶発的な問題でしかない。

 害虫とはいい難いムシの被害でも、ニンゲン様に手(口)をだしたってことは許されねぇ。
これは早速、昆虫刺螫症(こんちゅうしせきしょう)の一事例として発表して、アワダチソウグンバイの恐ろしさを世に広めて、対策グッズを開発して儲けるしかないな!
私の開発したフルカバータイプの対節足動物用ボディースーツを着て歩く未来人・・・・を空想していていると・・・・なんか安物SFパルプ雑誌の表紙絵の未来人を思い出した。
パルプSF雑誌収集といえば、日本の有名な昆虫の研究者にも世界有数のコレクターがいるらしい。
と次々に下らない物思いにふけっていると夏が終わったことに気がついた。

 事務所の片隅で、光らネェとか文句いいながら飼ってたツノキノコバエが、雄成虫になって死んでいるのを盆明けになって発見した。たまたま、同時期に別の場所でツノキノコバエを観察していたacleris氏が、ネット掲示板で、観察対象がKeroplatus nipponicusだと教えてもらったとのことなので、標本を見せてもらった。交尾器などを比較してみると同じ種のようである。
 ちょっとまてよ・・・・。文献じゃこの学名の種って、幼虫とか蛹が光るってことになってたような・・・・。うーん。解決に光が見いだせない謎がまた一つ増えた。Keroplatus_sp_male


虫の味と進化論

2008-08-10 23:57:00 | 自然観察

今日は昼間に寺まいり、当たり前だが法事なので昼行性のヒトとして活動した。
暑い中でご先祖に手を合わせた。せめて食虫目あたりのご先祖までは感謝の祈りを捧げたいところだが、体力が持たないので短時間で切り上げた。そういえばダーウィン展が長居公園で開かれていたな・・・・。
ダーウィンはコウチュウが好きだったそうだ。かの偉人は、素手でムシ採りしていて両手が獲物でふさがったとき、なお別のムシを捕獲するために自分の口の中をムシの一時保管場所として利用したと自叙伝で書いていた。結局、防御物質を味わうことになって苦しみ、すべてを逃がしてしまったそうだが・・・・。この話を読んだとき、私は全く驚かなかった。ムシ屋なら特に突飛な発想とはいえないだろう。本当に欲しい虫と巡り合ったとき、それまでの獲物を歯ではさんでおいて手を自由にしようというのはごく自然な思いつきだとおもう。

私の畏友の中には、「ムシの特徴を知るには味わうことも必要である」といいながらシロアリを生きたままモグモグ食べていた人物がいる。これはひとつの化学的分類といえるが、シロアリの体表炭化水素による分類なんて、日本でまだおおやけになっていなかった20数年前の話である。残念ながら、官能テストに基づく昆虫分類学は、論文にされることもなく埋もれたままになった。うまくいけば、遺伝子の分析結果を凌駕する系統分類を解き明かす手法になったかもしれなかったのに(追試が困難という難点を除けばだが)。本人もたぶん今頃は忘れているのかもしれない。しかし、昆虫に向かい合うにあたり、知力のすべてでは足りず、味覚を含めた感覚まで用いるべきだという主張には強く心を動かされたものである。情けないことに、私はムシを味わって区別するということを、まだ一度も試みていない。
先日お寺の森から持ち帰ったツノキノコバエ科のウジをジッとみていると、このネバネバって無味っぽいよなあ、でも意外に甘くて小さな虫をおびき寄せたりして、なんてアブナイ考えが頭をもたげてくる。Keroplatidae_vs_drosophila

飼育中のコナチャタテの一種 Embidopsocus sp. 有翅虫を、ウジのそばの粘液に付着させてみると予想どおり食べた。キノコ以外にも、小型のムシなら食べるようである。キイロショウジョウバエなら捕食シーンが絵になりそうなので与えてみた。もがいている小バエにウジはおびえるように逃げ、小バエも粘液の上で起きなおり飛んで逃げた。キイロショウジョウバエが凄いのではなく、粘液がショボイのだろうか・・・・。
ウジが作った粘液のマユは、ガラス細工みたいでキレイ。なんか「祝!北京オリンピック!」な外観。Keroplatidae_cocoon


闇の奥

2008-08-07 23:33:35 | 自然観察

夜のお寺の森を、そーっとそーっと、ライトもつけずに歩く。先日の昼間にみつけたネバネバの網を造って暮らしていたキノコバエを、暗闇の中でみるためだ。
どうやら、ツノキノコバエ科の一種らしいのだ。ということは、ニュージーランドのグローワーム(Arachnocampa spp.)と同じ科ということで、闇の中で発光するかもって短絡思考するだろう!だれでも!
巨木にたどりついて、ウロを覗き込む!
光っているじゃないか白く輝くように!
まてよ・・・白!?
ウロの開口部を手でふさいでみた。
幼虫の光が消えた!!!はあ?
振り返ってみると、少し離れた街灯の光が木々の間から差し込んできていた。
幼虫が出しているネバネバに、街灯の光が反射しているだけだった。Keroplatidae01_2
どうやら、このアナタケの一種の表面にいたツノキノコバエ科幼虫は光らないようだ。光っていたら、お寺の住職さんと共謀して見物料で一儲けしようという、壮大な悪だくみは一瞬にして潰えた。
せめて、幼虫の採餌行動をみようと観察を続けたが、大半はライトの光を嫌って隠れてしまい、結局、何を食べているのかよく分からなかった。

まあヒラタクワガタでも採集して帰るとするか・・・・。とコナラの樹液を照らしてみると、大きな黒いものが!!・・・・目を凝らしてみるとゴキブリ・・・・。このへんでヤマトゴキブリは久しぶりやん!写真撮っておこうと気を取り直してよくみるとクロゴキブリ!!

冬の瀬戸内海の島で、ウルシゴキブリかもといいながら、クロゴキブリの成虫を樹皮下から採集した思い出が頭をよぎる。Periplaneta_fuliginosa

今夜の収穫は、やはりクロゴキブリは日本の二次林に適応していると確認できたってコトやな。うむうむ。


夏休みが欲しい

2008-08-03 12:59:00 | 自然観察

久しぶりに中学生の息子と夕方の森を散策。虫屋じゃないヤツと散歩しても面白くもなんともないのだが、それは、くだらないキノコの観察を無上の喜びとする息子も、同じ感情を抱いているに違いない。親父にくっついてきたのは、夏季休暇中宿題の最難関「自由研究」のテーマ探しである。「なにしようかなー」などとつぶやきながら、うしろに付いてこられるのもウザイので、テキトーなものを指差しながら研究対象として薦めるが、どれにも首を縦に振らない。

「あの木の幹で蟻道を作って、中でアリマキ飼っているアリなんかどう?」

「雑木林の樹冠の虫の研究とか?」

「池の中のシャジクモ類の水深別の分布とか?」

うーむ・・・われながら本当にテキトーだな。

そのうちキノコ観察にうつった息子は、巨木のウロにくっついている白い皮の様なキノコを観察し始めた。そのキノコの表面には、ネバネバをだしてうごめく、割と大きめのキノコバエっぽい幼虫がいた。「あれもって帰って、育てるってのは?」とまたも提案。シュタッと手を上げてさえぎりながら「あんなキショイのは、ママ無理やろ」と息子。そうか、我が家では生物の持ち込みに強烈な検疫が実施されているので、いきもの持ち帰り系の研究は困難だったな・・・・。01 

南の島にいるキノコバエは光るそうだが、ここのも意外に光ったりしてなどといいながら、森をあとに帰宅した。今日見たキノコバエ幼虫は、この辺で時々みかけるがいったいなんなのだろう?帰ってネットで調べると、あのネバネバでキノコの胞子を集めているらしい。ナメクジみたいでキモイと思っていたが、グローワームみたいに採餌行動の一つだったとは!しかも、光る種類と外観がソックリ(薄暗がりなのでケータイでは写真が撮れなかったが・・・・)。

ワシが夏休みの宿題で研究したいやないか!

息子の方は、しょうがないから、なぜ学校では自由研究などということを生徒にさせて、生徒たちはどのように苦しみながら宿題をやり遂げているのか、ほとんどは親が手伝っているという点に、現代の理科教育のひずみがあるのではないかウダウダって感じで、同級生を観察対象にした研究発表をしろと薦めたら、かなり乗り気になっていたので、ちょっと後が怖いかも。