害虫屋の雑記帳(ブログ人の保存版)

ブログ人のサービス停止に伴い、gooに過去記事を保管させてもらうことにした。

極小乾材害虫

2010-10-22 01:05:51 | 自然観察

Small_powderpost_beetle01

仕事で出会う昆虫には、日本で記録がない種がたまに混じっていることもある。
今回遭遇したのは、日本で使用されていたラワン材で発生した小さな甲虫。体長は1.5mmから2.2mmくらいしかない。詳細な採集地や、いつ、だれが、どういう経緯でといった情報はない。
こんなものは、研究用資料としての価値が極めて低いといわざるを得ない。ちゃんとしたデータ付なら、乾材害虫の専門家であるI先生の元へ送るのだが。いや、私の目の前に現れているということは、他でも問題になっている可能性が高いだろうから、わざわざ連絡する必要はないかもしれない。

手持ちの木材害虫関係の資料で調べてみたが、Small powderpost beetle (Lyctus discedens ) だと考える。本属にしては、フラス(木屑)の排出が少ないので被害材から奇妙な印象を受けた。脱出口が0.6mmくらいしかないので、粉が漏れにくいのかも。写真の個体は体長1.5mmなので、Lyctus属では最小種と思う。普通のPowderpost beetle(L. brunneus, 体長6mm)と並べてみると、老眼気味のオッサン泣かせなムシってのがハッキリしている。こういうのが湧いている現場が増える前に、定年を迎えることを祈るしかない。

Small_powderpost_beetle02


意外なところの危険生物

2010-10-20 23:33:58 | 自然観察

Hoihoi 大阪市内の梱包作業をする会社で、ゴキブリ駆除をしているとちょっとだけ危ないめにあった。
どこにでもあるようなビルの1階、食堂として使用されている部屋の隅にソレはいた。
スチールラックの下を懐中電灯で照らすと、丈夫そうなクモの糸がキラキラと光ってみえた。水平に近い角度でランダムに張られているのをみて、何か引っかかるものを感じたが、無造作にクモの糸をかき分けて、奥にあったゴキブリホイホイを引きずり出した。ゴキブリホイホイの中をのぞいてみて驚いた。セアカゴケグモだった。巣を見て気づけよ・・・自分・・・・。
しかも、広げるときに指を入れる部分に、ちょうどクモがいた。なぜか紙がよれよれで半開きになっていたので、広げる必要がなかったが、しっかりと組み立てられたものだったら、高い確率でクモと自分の指が接触していただろう。
惜しい。いや、危なかった。

よく見ると、粘着面にはクロゴキブリに混じってノコバゼムカデがかかっていた。
なんか最近この青い脚のムカデ、市内のビル街ではトビズムカデより頻繁に粘着トラップに引っかかってくるのだが・・・。もう大阪には定着してると思う、コレは。完全に。

兵庫県南部の枯れ沢で昼食タイム。石の下でゴモクムシダマシを発見。愛嬌がある甲虫で好きだけれどリリース。Pedinus_japonicus 


小さいオス

2010-10-17 11:45:47 | 自然観察

Liposcelis_decolor_male ホンチャタテ Liposcelis decolor を、なんとなく観察していると偶然に交尾とおもわれる行動を見ることができた。小型のオスがメスの下に潜り込み、身体の方向をメスと同じにすると、数秒間静かにしていた。

Liposcelis_decolor_mating

メスの下にオスが潜っているところを撮影したが、なんだかよく分からない写真になった。

飼育容器内の本種の個体数はかなり少ないけれど、おそらくマヨイダニが混じってしまっていることが原因。数が少ないとそれぞれの個体をみる時間が長くなるので、交尾行動に目が留まったのだろう。カツブシチャタテでは、交尾行動をみた記憶がないけれど、芋の子を洗うような密度で飼育しているので、どの個体が何をしているかなんて解るわけがない。
コナチャタテ属は、メスよりオスが小さい種や、オスが見つからない種がいるけれど、ホンチャタテのオスもヒヨワで頼りなげな姿をしている。
デカくてケンカが強いというのと真逆の方向の進化をしているご様子。


サクラアリの群飛

2010-10-15 23:55:00 | 自然観察

Paratrechina_sakurae_male いつのまにやら、サクラアリのオスが飛び回る季節になってしまった。
ヘンな羽アリが家の中に入りこむけど、ナニ?コレ?という相談は毎年ある。
たまに働きアリが室内に入り込んで、しつこく通い続けるという迷惑なパターンもある。このアリの巣を見つけることは難しくって、床下の土台の腐朽部分でみつけたことが数回あるが、鉄筋コンクリート集合住宅なんて物件になると、もう全くどこにいるか分からない。それでも駆除方法はあるけれど、巣が何処か分からないまま、発生が止まってもなにかスッキリしないものがある。

アメイロアリの仲間というと、AntWebみてたら属名が変わっていたけれど、日本産アリ類データベースの方はまだ変更されていなかった。一般人の一人としては、ATOKの学名辞書の書き換えは先送りにしておこう。

そういえばアナタカラダニ関連も、ポーランドの研究者によるBalaustium murorumの再記載論文が先月発行されたようだ。ものすごく読んでみたい。日本ダニ学会の会誌で偉い先生による解説が掲載されることを期待中。


あしながタカラダニ

2010-10-11 02:00:51 | 自然観察

Longlegged_erythraeidae 大阪市の港湾地域にある公園で、やたらと大きなアリマキタカラダニの一種 Erythraeus sp. を採集。山地で見かける種よりは屈強そうな体つきで、今までこんなのは見たことがない。
トビイロシワアリの巣付近の地表で数個体が徘徊していた。
他に、近くの植物上からもタカラダニ科の小型不明種を2種採集。
ナゼゆえ、タカラダニばかりがいろいろ生息しているのかが分からない。
てか、あんなにビーティングしまくって、ツメダニ科がノーヒットって・・・。

アリマキタカラダニをgoogleで画像検索してみると、ソックリなのがアメリカとかイタリアにいるようだ。見かけないヤツが市街地にいるからって、外来種と決め付けるのは良くないが、遠いトコから来たヤツかも知れない。