害虫屋の雑記帳(ブログ人の保存版)

ブログ人のサービス停止に伴い、gooに過去記事を保管させてもらうことにした。

ネバーギブアップ!(ベタベタやん・・・)

2008-11-30 19:16:20 | 自然観察

毎年寒い時期に、瀬戸内の海辺の海産物を扱っている工場で、悩みのタネになっていたハマベバエ。今年はなんだか少ない。Coelopa_frigida 

ハマベバエは小さいくせにマッチョな虫で、ライトトラップの粘着紙によっては軽々と逃げ出すことができる。歩行する力の強いコガネムシ科なら逃げ出すのもわかるが、ネバネバのうえを歩けるハエがいるなんて普通は誰も思わないだろう。

ムシポンやムシペチャなどの光誘引-粘着紙型捕虫器はそこそこに有用な機械だけど、ハマベバエに関してはあまり役に立っていない。粘着紙に捕獲された成虫は大半が逃げ出して、粘着剤にまみれたまま周囲を歩き回るため本体フレームなんかはベタベタになってしまう。

対策としてネズミ用の強力粘着シートを組み合わせて設置したりする。
ネズミを捕獲するためにたっぷり塗ってあるポリブテン(粘着剤)では、さすがにあまり逃げ出せないようで捕獲数は一気に増える。
それでも、強力粘着シートなんかに負けるものかとばかり、ポリブテンの海を彷徨してるヤツがいる!
Coelopa_frigida_trap_2 

もともと腐った海藻みたいな粘性の高い場所を好むので、普通のハエ類なら身動きできない粘着剤でもある程度行動できるのだろう。
他にも体長に個体差ありすぎとか、いくつかの有害な薬品に誘引されるなんて、不思議なところがいろいろあるハエで興味深い。

温暖化で少なくなっている種もいるようなので、ハマベバエもそんな理由で減っているのかも。しかし、例年どこの海岸で発生しているのかってこともアヤフヤだったりするので、実際のところは全く分からない。


ダーウィンの夢魔

2008-11-09 21:09:30 | 自然観察

Photo シェイミが我が家に届いた。
「・・・何の仲間?これは?」
「草ポケモンに決まってるやん。」
「はあ?クサ?・・・なんやそれ?」
わが子や近所の子らにポケモンの分類を時々教えてもらうのだが、全く理解できない。

ポケモンの世界では、生物学用語からして使用方法が異なる。子供らから「進化するとこ見せたるわ!」とかいいながらニンテンドーDSの画面を無理やり見させられて、ムックルがムクバードになるとか、リザードがリザードンになることを知った(逆だったかも・・・)。でも、これは発育、あるいは変態というもので進化ではないと考える。自分の娘にも進化とは何かをコンコンと語るが、もちろんオヤジの話なんか聞いてないし。

私だって「進化論」を完全に理解しているわけではない。「種」や「進化」という概念は、いろいろな書物を読んでみても、結局のところはよく分からない。
分からなくたって、私が知る範囲のリアルな昆虫やダニはホントに気ままに種分化してるようにみえる。人間に至っては、進化する業を背負うあまり、脳内で考えているものにまで進化させたがっているようなフシすら
ある。
子供がポケモン図鑑に夢中になるのは進化の呪縛に違いない。

「次はスカイフォルムのシェイミ買うぞー!」と娘。
進化ではなくフォルムチェンジとゆーのもあるそうだ。早く目を覚まして勉強しろ!


みえない流れ

2008-11-03 17:02:05 | 自然観察

灰色に濁った水面。町中のドブ川をながめていると、水生昆虫を採集してみたいなんて考えはあまり起きない。
東大阪市に流れる長瀬川もかなり汚い状態で、水面を次々と流れてくるタバコの吸殻を下流側の橋の上から眺めていると、川に向かってポイステされている量が半端じゃないことに気づく。川は水洗式ゴミ箱と違うぞと、日々清掃業務にいそしんでいる土地改良区の人たちも声を大にしていいたいだろう。
この川も5年ほど前までは、セスジユスリカ属とイトミミズ類だけが目立つ最低な生物相だった。さまざまな改善がなされて、最近では生き物の状態もマシになりつつある。
でも、まったく予想していない昆虫がいくつかみられることに気づくようになった。
そのひとつはミズカゲロウ。幼虫は、これも知らないうちに最近増えてきているタンスイカイメン(侵入種らしい)でみつかる。幼虫はタンスイカイメンを食べるらしいのだが、食事中の状態を観察したことはない。Sisyranikkoanalarva01

幼虫の口器は細長い形状で、何かを食べることができるとはとても思えない感じ。幼虫は水生昆虫のハズだが泳ぐのはヘタで、カイメンをつつくと水面に浮いてきて、陸上を歩くのはワリと得意(・・オマエワ・・ナンナンダ)。Sisyranikkoanalarva02
ミズカゲロウは中禅寺湖が基産地だったと思うが、なんとなくキレイな水で暮らす北方系の珍奇な種という印象をもっていた。それがドロッドロッの長瀬川にいるってどういうことなんだろう?昔から大阪での分布記録はあったようだが、在来のミズカゲロウと違う侵入種って可能性は?とかも気になっていたので、成虫の発生時期から外れたこの頃になってようやく交尾器を観察してみた。私にこの仲間を分類できるはずもないのだけれど、気軽に質問できる専門家も知らないので、自分でできる範囲でってことで・・・。Sisyranikkoanamale_2 Sisyranikkoanafemale

成虫には粘着材がたっぷりくっついていたので、除去処理がものすごい手間・・・。ハネなんかきれいに微毛がなくなった。労多くして実り少なしの見本。

Sisyridae_nikkoana_frontwing

結論として、東大阪市の個体群は在来のミズカゲロウと同じ種類と考える。
でも、市街地の水路で、去年あたりから急に目立つようになったのはナゼなんだろう。水質が良くなって自然が帰ってきた・・・ああ、ヨカッタって単純な話でもなさそうだし。
今年の9月には、兵庫県高砂市の食品工場でもライトトラップにミズカゲロウの成虫がくっついていたのだけれど、どうやら東大阪市だけに限った話でもなさそうだ。
Sisyridae_nikkoana_adult チャイロスズメバチの例みたいに、在来種のなかでも意味の分からない奇妙な分布状況の変動ってのがあるけど、ミズカゲロウ+外来タンスイカイメンのセットも勢力拡大の傾向があるように思う。