害虫屋の雑記帳(ブログ人の保存版)

ブログ人のサービス停止に伴い、gooに過去記事を保管させてもらうことにした。

しょうせきへき

2009-08-25 20:38:56 | 自然観察

昆虫採集をする場所を選ぶにあたり、唐突に地名にこだわってみる気になった。

「こあかかべで昼飯を食べよう」
「ハぁ!?」
姫路市で仕事を終えて、工事車両の運転席で地図を眺めていた私は、心の琴線にふれた地名を指さして助手席の者にみせた。
「なんでまた、そこなん?」
「地名の語感が悪いからだ。小さな赤い壁と書く。しょうせきへき、と読むのかもしれん。」
「???」

貴様のやうに、科学に謹直なものにはいっこうに解せぬだらうが、たいていの奇妙な地名には、超自然的要素が少なからずや含まれてゐる。特異な場には尋常ならざるモノノケやら蟲やらがいるに相違なひのだ。原住民たちは、うっかり名を口の端にのせたりせぬように、常ならざるものが障らねように言いにくい地名にしているわけである。当然、そこで昆虫採集しようものなら夥しい珍種と相まみえることは必定といへやう。
例えば、奄美大島に独特なムシがいるのも、地名との奇縁があって云々かんぬんと、もはや私との間にみえない防壁を築いて自閉症モードの運転助手に、伝奇ロマン風昆虫地理学を説き聞かせているうちに目的にたどり着いた。

海辺の崖っぷちにある公園だった。岩とススキに覆われた急斜面の上を、ラジコンのF-15戦闘機がヒョーンと奇妙な音をたてて飛んでいた。プロペラがない・・・。駆動音は電動っぽい・・・。なんだあれは?とポカンと見つめていた。
オヂサンらが若い時分には、ラジコンジェット機つーとみんな先端にプロペラついてて・・・カッコワルとかは禁句だった。今は、プロペラが無い模型飛行機を飛ばせるのか・・・・。
後で調べたらダクトファンを利用した技術ってことで驚いた。もっと金持ちの人はケロシン燃やす本格的ジェットエンジンをラジコン機に積むらしい。知らないうちにラジコン飛行機の世界は恐ろしく進歩しているようだ。

他人の道楽を眺めていてもしょうがないので、自分の趣味に移った。キスイムシ科を採集しようとして枯葉や枯枝をビーティングしてまわったが、さんざんやって、ミジンムシ科とか。これも全く分類できないってところはキスイムシ科同様なんだが。ムシを差別しては悪いが、大幅に目算をはずしたショッボイ結果といわざるを得なかった。Corylophidae
奇しき地名に奇しきムシ在りの説は、有耶無耶ムニャムニャで昼休み終了。


盗み寄生

2009-08-09 23:59:00 | インポート

Promachus_yesonicus シオヤアブがモンスズメバチを捕食していた。
モンスズメバチは運動能力が高く、セミなどの大型のムシを狩るのが得意だ。なのにシオヤアブに負けてるなんてどういうことなんだろう。背後から不意を襲われたんだろうけど、最初の一撃を失敗してたらシオヤアブが解体されてただろう。
あんたら、どっちもスゴイわ。

強烈なファイター達に見とれていると、モンスズメバチの胸部のあたりを小さなハエが歩き回っていた。
写真にはうつっていないけど、たぶんクロコバエ科の一種と思う。
捕食されている獲物の体液などを食べているのだろう。こういうのは盗み寄生というらしい。

思い出話だが、デジカメとかない時代にアマミハンミョウの写真を沢山撮ったことがある。旅から帰って、プリントしてみるとすべてとてつもなくブレまくっていた。撮影時は夕方ってこともあったが・・・・。で奇妙なコトにその時気がついた。どのハンミョウの頭部にも必ず小さなハエがちょこんと何匹か乗っかっていたのだ。でもハッキリ写っていなかったのでなんだか分からなかった。今から思えばあれもクロコバエ科だったのかもしれない。ムシを毒ビンに放り込むことばっかり考えていると、面白いことを結構見逃しているのかもしれないと、チョット思ったものだった。

昨日、八戸ノ里公園でツクツクボウシが鳴いていた。この声聞くと、夏季休暇と全然縁がないのに、今でもまだ、えっもう夏休み残り少ない?って反射的にアセる。


クモタカラダニ観察

2009-08-07 23:54:38 | 自然観察

タカラダニについていろいろ知りたいとは思っているのだけれど、いまだに発育段階とか、食物とか、性別とかに関する基礎情報が集められないでいる
宿主から脱落した幼虫をちょっと世話したりしてみても、その次のステージが目・口・脚もないようなものだったり、ちゃんと脚のある若虫だったりで、パターンが読めない。
タカラダニの成虫は捕食性みたいなことが、いくつかの書物に書いてあるので、採集してきた個体にいろんなムシなどを与えてみたが、うまく食べてくれたことがなくて行き詰まり中だった。

でも近頃、貰い物のクモタカラダニの一種(神戸市産)にテキトーにあれこれ与えているうち、ちょっと進展があった。Leptus_sp_adult01
顆粒状のドライイーストを一粒、水に濡らして溶かしてからシャーレのフタの裏にくっつけた。小さなイーストのしずくはすぐに半乾きになって膜状になるのだが、そこにクモタカラダニが口吻をつっこんでいた。半透明のイーストの膜のなかで、口吻から口針が出たり引っ込んだりしている様子を観察できた。口針の先端からなにか唾液のようなものが出て、次に口針の先端をさざなみのように細かくうねらせて、唾液と溶けたイーストを吸っていた。しばらくすると、イースト膜にはクサビ状の凹みがたくさんできた。Leptus_sp_adult02


2日ほどすると食べるのを止めてジッと動かなくなった。さらに2日経った今日、なんと産卵していた!Leptus_sp_egg01
卵は120個ほどが塊になって、脱脂綿とシャーレの隙間に隠すように産み付けられていた。
これで、図鑑とかその他の記載文と一致する幼虫が孵ってくれれば、成虫の名前が判明するということだ。楽しみ、楽しみ。

ハマベクモタカラダニ幼虫が寄生しているクモタカラダニ不明種の成虫(神戸市産)も頂いた。もらった時点で死んでいたので、すぐにプレパラートの前処理液(メタノール+酢酸)行き。タカラダニ幼虫がタカラダニ成虫に寄生することで発育するかどうかをみてみたかった・・・・。この幼虫と成虫は親子関係かも知れないが、成虫は同定できないのでなんともいえない。タカラダニ幼虫はヤモリだとか鳥とかからもみつかっているが、宿主選択がエー加減なだけとちゃうんという話もある。Photo