今夜のテレビで、ジョーンズ博士の「失われたアーク」が放映される。みなくては(みるの何度めだろう)。カワゆいムシたちが、無理のある演出でキモい生物として描かれている、ムシ虐待映画ともいえる面もあるが、何も考えずにみるとたいへんオモシロい。最新作の「クリスタル・スカルの王国」も早くみたい!!
クリスタル・スカルが出土したベリーズといえば、マヤ遺跡とか重武装の麻薬密輸団とかが有名な国だが、ここの自然林で衝突板トラップをしかけると、チビナガヒラタムシがとれた(飛んでたってこと?)という研究がある。つまり、自然林で採集されるので、中米では在来種だったのかもしれないってことが議論されている。
チビナガヒラタムシは米国東部が原産とされ、世界中で「外来種」として記録されている昆虫だ。ところがコハク化石では、バルト海やらメキシコやらでみつかるので、大昔は世界中にいたらしい。その末裔が北米の片隅で生き残っていたが、今度は人為的に世界中に分散しだしたってことになるけど、これはすごくヘンな話ではないのか?
北米の研究者には、「確かにタイプ標本は我が国産だが、まともに採集されてるのは木製電信柱の腐ったところばっかしで、自然林からメッタにみつからんからホントに在来種か?」なんて意見の人もいるようだ。
日本のチビナガヒラタムシの分布記録は1970年代に入ってからで、外来種であることを疑う人なんていないだろう。
現在、近畿地方の市街地では、チビナガヒラタムシは珍しい種類ではなく、建築後20年以上経過した木造住宅であれば比較的よく検出される。多分、西日本の平野部では、かなり普通に分布しているとおもう。でも、これが「外来種が分布を広げた」のか、「昔からいる種の分布にタマタマ気づくようになった」のか、両者をどうやったら区別することができるのだろう。
チビナガヒラタムシは、基本的に幼虫形態のままで増殖しているようなので、本当に目立たない種だ。とくに有害な種でもないので、問題種として取り上げられることは少ない。ウチの仕事の例でいうと、成虫に関しては、脱衣場にカタマリでいて気持ち悪いので掃除機で吸ったという奥さん(奈良県)からの相談が1例あっただけ。あとはお風呂に幼虫が浮いていたというのが数例あるくらい。成虫が多い場合は、なんらかの理由で集団を形成するらしいということは、ぜひ観察してみたいナゾの一つである。成虫が珍しいという意見もあるが、幼虫を採集して湿った材と一緒に保管しておけば、割とよく成虫を得ることができる。ただ、忘れたころに成虫になっているのでカビだらけの標本(特にオス)になることが多い。ちなみに私は成虫がちゃんと飛ぶところをみたことがない。一瞬、はばたいて1cmほど横にはねたトコロを一度みただけ。
先週、私は、外来種なんていそうにない古いシイ林(和泉市の神社)で採集した朽木から、チビナガヒラタムシの幼虫をみつけた。この朽木は樹脂製大型収納ケースにいれて、一年ほど会社(東大阪市)の事務所内に保管していたものなので、東大阪産の個体群が後から迷入して、二次的に繁殖した可能性もある。でも、本種の移動可能なステージ(一齢幼虫・成虫)は、乾燥した場所での移動能力が低い。タッパーの側面をよじ登ったりなんてのは得意じゃないのだ。事務所内には同時期に採集している腐朽材もないので、やはり、和泉市の神社林に本種が生息していた可能性が高いと考える。
ここで、国内初記録の文献のなかに、確か野外の朽木でも採集した事例が書かれていたことをおもいだした。ふつうに考えれば、自然林の中にまで侵入する外来種と考えるべきなのだろう。でも、ベリーズの記録みたいに、人家からかけ離れた場所ではないが、日本でも在来種である可能性を議論する余地があるかもってのは考え過ぎか?
アセスメントで公表されている環境調査報告書をみてても、チビナガヒラタムシが記録されていることは少ない。大きな河川なら河川敷に転がっている腐朽材なんかをほじくっていると幼虫が結構出てくるはずなのだが、一般に微小コウチュウの幼虫は調査現場ではスルーされている可能性が高い。というか、現場でそんなもん相手にしてる暇はないわな。フツー。
ということは、過去のチビナガヒラタムシの分布は全国的に見過ごされていた可能性もある?世界中で外来種扱いされている種だが、実は世界中にモトからいた種ということはありえないことなんだろうか?
日本でも、衝突板トラップを使うことで、平野部の自然度の高い地域での分布状況を確認できないものかなと考えるが、実施は難しそうだ。
一つだけ古い国内分布を確認できるかもしれない手法がある。チビナガヒラタムシは、孔道中の糞の状態が結構独特なパターンなので、食跡が残った木片とかが、古代の遺跡から出土するかもしれない。奈良時代の木簡とかをほじくらせてくれる博物館とかドコカにないかな。ムチもって世界中の遺跡を盗掘するとか。