害虫屋の雑記帳(ブログ人の保存版)

ブログ人のサービス停止に伴い、gooに過去記事を保管させてもらうことにした。

海にいるダニ

2010-05-30 14:56:17 | 自然観察

「道せまっ!」とかいいながら、何の用事も無いのに御津町室津(兵庫県)の町並みに軽乗用車で迷い込んでみたら、日本史ファンが好きそうな観光地だった。女郎屋がどーとか、神武天皇がこーとかいう場所らしくて、趣のある建物をチラ見しながらも、まっしぐらに磯に向かった。

磯にしゃがみこんで約10分。勢いよくきたわりに、なにも採れないことに泣きぬれてカニとたわむれだした。が突如、青木淳一編「ダニの生物学」で海藻のダニの話が載ってたことを思い出して、海藻を一握り持って帰った。

海藻を水道水で洗って、洗い水から微細な生き物を濾紙に濾しだした。
多数のソコミジンコ類などに混じって、ウシオダニ科が4個体見つかった。体長約0.5mm。水の無いところに転がしておくと、干からびて死んだような様子だったが、しばらくして水に戻すと元気に歩き出した。
ウシオダニ科には、とても多くの種類がいるそうなのだけれど、一般的な図鑑類にはほとんど図示されていない。

Halacaridae_gen_sp02

Halacaridae_gen_sp01

面白いと思ったのが体表に着生しているミクロな動物類。
a.有莢ヒドロ虫?:ツリガネムシの一種みたいにもみえる・・・。光学顕微鏡で観察する前に乳酸処理で中身を溶かしてしまった・・・。ダニの腹面側にびっしりついていて、海藻の表面を掃除しながら歩いているのかい?って状態。背面側のほうがのびのびと暮らせそうなのに。
b.有孔虫の一種?:体表に大小の個体がいくつか着いていたが、これは着生というより便乗なのかも。

Halacaridae_gen_sp03


磯遊び

2010-05-24 23:54:00 | 自然観察

Bdellidae_gen_sp 磯にいるケダニ目はなんて大きいのが多いのだろう。
先日、兵庫県の瀬戸内海に臨む場所で採集したテングダニ。
ナゼ採集したかというとデカイから。知的な理由は全然ない。
以前、ツメダニと間違えたイソユビダニも結構いた。
グーグルの画像検索で「Cheyletidae」を調べると、自分の誤同定の記事が参照されてて、イソユビダニの写真が上位に表示されるたび、ジクジたる思いで眺めるハメになっている。

この日は、磯で記録されているいくつかのダニ類を採集するツモリだったのだが、密かに狙っている大型種は採れなかった。
周りでチョロチョロしてたイソジョウカイモドキ君たちとは、ちょうど発生期に遭遇したようで、5分ほどの間に約30個体目撃した。この方々が貴重なダニをお食べになったりとか?
同じ科のヒロオビジョウカイモドキなんかだと、コナヒョウヒダニを与えてみたらバクバク食っていたことを思い出した。自然界では考えにくい取り合わせだけれど。Laius_asahinai_2

磯の少し内陸側に淡水がにじみ出てるところがあって、ヨシだかアイアシだかの枯茎を少し見つけて採取した。帰社後に枯れ茎からケナガコナダニ属のオスが得られたので、変わった種?とかってワクワクしながら観察すると、和泉市の池にいた種と同じTyrophagus curvipenisだった。和泉市の山の中の枯竹、淀川のヨシの枯茎、放棄されたオオヨシキリの巣、これらから得られたケナガコナダニ属は、全て同じ種ということになる。室内塵でみられる種は、本に書いてあるとおり野外からはなかなかでてこないようだ。

T_curvipenis_2



トリビアでコナダニな隘路

2010-05-23 16:18:29 | 自然観察

ヨシの枯れ茎(和泉市)からは、結局、以下の3種類のコナダニをみつけた。
1.ケナガコナダニの一種 Tyrophagus curvipenis(コナダニ科)
2.ムシクイコナダニの一種 Thyreophagus sp.(コナダニ科)
3.ウスケダニの一種 Calvolia sp.(キノウエコナダニ科)

これらの同属近縁種は、室内塵からでてくることがある。厄介なことに、掃除機で採取したコナダニ団の干からびた死骸は、実体顕微鏡で観察するだけだと、どれもみんな同じにみえてしまう。

キノウエコナダニ科、カイガラムシダニ科(コガタダニとか)、Suidasiidae(ヒトの健康に関与することがあるチビコナダニとか)などは、精査すれば少ないながらも室内塵から出てくる(大島,1977)ってことだが、仕事でやるなら自分にはムリだ。採算に合う効率で検査していけるほどの、良い視力は持ち合わせていない。

みんなハンプティ・ダンプティの大量コピーですか?な見分けにくいダニたちだが、ボロっちー死骸ではなく、生きて歩き回っている状態であれば、だんだん違いがみえてくる。背中のテカリかたとか、歩きかたとか、好みの隙間があるようにみえる種とか、プレパラートでは分からなかった違いに飼育していると気がつく。
とまあ、ちょっと区別がつくようになって得意げに語ってはいるものの、これって何の役にも立たないスキルだし、横道にソレ過ぎてる気もする。けれども、ヘンな細い道に限って妙に歩きたくなるものだ。

ところで、目標の一つであるところのコナダニ類の捕食者の採集について、種類が全然増えないのはどうしたことだろう?
ツメダニなんて、コナダニを採集していれば自然にイロイロ採れると思っていたが成果はサッパリ。

Calvolia_spCalvolia_sp_dorsal 


アナタカラダニの発育

2010-05-20 23:50:16 | 自然観察

Brachymenium_sp とある建物(神戸市)の駐車場のホソウリゴケから、アナタカラダニをほじくりだしてみた。ちょっとパサついた感じのコケの塊は約13g。
コケの根際には砂などがこびりついているのだが、その中に第三若虫とおもわれる口も脚もない個体がかなりみられた。結局、成虫は52個体、第三若虫は11個体、幼虫2個体を確認した。

幼虫第一若虫
(無脚)→第二若虫→第三若虫(無脚)→成虫という感じで発育しているようだ。結局なんのかんのいって、未だにサッパリ分からないダニだ。

やはり、手軽にできる対策としては、掃除に勝る方法はないだろう。
Balaustium_3rd01
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