害虫屋の雑記帳(ブログ人の保存版)

ブログ人のサービス停止に伴い、gooに過去記事を保管させてもらうことにした。

違う口

2007-09-30 22:54:19 | 自然観察

Aioi_kakou 海辺をうろつくと、実に珍妙な生物がみつかる。ってヒトもたいがい珍妙なので、ひとのことを言えない。というより、海辺でヘンな生物つかまえてヘラヘラしてるやつが一番珍妙ともいえよう。

相生市の入り組んだ河口付近で、水辺に近寄ってみると泥の上をトビムシがたくさん徘徊していた。その間を高速で歩き回っているダニもいる。前気門類ぽくって気になるヤツだが、仕事が忙しく、プレパラート標本を作っている暇が無いので、悲しいが採集は見送りである。

波打ち際の石の下からえーとこれは・・・ユムシやな。などと思いっきり誤同定しながらつまみあげたヤツは、星口動物門(せいこうどうぶつもん)のサメハダホシムシの一種 Physcosoma sp.  だった。動物の分類は高校くらいのときにまじめに勉強したが、もうほとんど忘れてしまっている。

節足動物門(ムシ、クモ、カニみたいな系)や、脊椎動物門(オレとか犬とか金魚みたいな系)などは、日常生活で普通に目にする。軟体動物(貝、タコなど)も、結構食卓で見かける。食卓といえば棘皮動物(ナマコ、ウニなど)を、たまに食べるヒトもいるだろう。環形動物(ミミズ、ゴカイなど)にしても、ヒトとまったく無縁というわけでもない。でも、セイコウドウブツなんて、まったく接点が無いような気がする。ホシムシが、なにかの食品の原料になっているという話は、少なくとも日本では聞いたことがない。何でも食う日本人の食材から外れてるってことも驚くが。

ホシムシは観察していると口を伸ばしたり引っ込めたりしているが、よく見ると靴下をひっくり返しているみたいに体が反転して伸縮している。陥入吻と呼ぶそうた。こいつには無いようだが種類によっては、口の先端に放射対象で星形の器官を持っている。ホシムシという名前の由来はきっとそれだろう。噛むとか吸うなどという口の動きのイメージからは、かけ離れた構造である。脊椎動物には、口が体長を超えて伸びていくような種はいないが、なかなか便利そうな形質である。ヒトの口がニューーーと伸びていくような進化を遂げていたら・・・・。いや、想像するのはやめておこう。 

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弱虫同士の遭遇

2007-09-26 13:07:22 | インポート

Vespa_tropica_pulchra01 朝、事務所に一番乗りすると、部屋の隅の床で大きな虫を踏みそうになった。ナニ?とか思いながらよく見るとスズメバチ!全身の血の気が引いた。

でも近寄ってみるとヒメズズメバチの雄だったので、怖くないことが判明。そういえば誰かが、前の日にどこかの現場から持ち帰った巣を、丸一日机の上に広げていたっけ。こっそりと机の上から離脱した個体が次の日も事務所内を歩き回っているというわけである。

今年はハチ退治の仕事が多い。少ないスタッフだというのに2人も、刺されてしまっているし。恐ろしいことである。私は、小学生5年生くらいの時、樹液の近くでオオスズメバチに刺されたことがある。背中に近い肩のあたりだったが、なにか重い棒のようなもので叩かれたようなショックは、忘れられない。十分な準備と攻撃されない距離を保てば、危険のない仕事なのだが、ハチ退治はいつも大ビビリでやっている。

さて、ヒメスズメバチの雄は指にとまらしたりしてしばらく遊んだが、事務の女性が来る前に毒ビンに入ってもらうことにした。かわいそうだが仕方がない。Vespa_tropica_pulchra02


わざもの

2007-09-24 23:16:59 | 自然観察

カマ状の脚をもっている節足動物は、いろんなのがいるけれど、カマキリほど有名なのはいないだろう。したがって、カマキリと分類的にはぜんぜん関係ない昆虫でも、前足とかがカマキリみたいだと、ミズカマキリ、カマキリモドキ、カマキリバエなんて名づけられている。

昆虫じゃないヤツでもシャコなんかはカマキリ的なのに和名にカマキリがつかない。でも、英語ではMantis shrimp(カマキリエビ)とかいうらしい。そういえば、魚にもカマキリ(アユカケ)がいるけど、あいつはいったいどこがカマキリなのだろう?

少し前に採集していたミナミカマバエの捕脚を拡大して観察していると、すごく精緻な構造であるのに感心した。昆虫界の刃物系器官で最高クラスの逸品だと思う。まず、驚いたのは、たたむとカマがあるようにはみえず、まるで折りたたみナイフである。しかも、カマ部分にはちゃんと鋭角の刃のような縁がついている。本家カマキリでは、はさむようになっている前脚には、トゲトゲがあるだけで、ほんとにカマの刃状の前脚を持っているわけではない。カマキリバエが巨大化して、捕脚をブンブン振り回したらいろいろなものがちょん切れるような気がする。だれか、カマキリバエを使ってSFパニック恐怖映画をつくってくれないかな。ムシ嫌いが増えて害虫屋が儲かるように。

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テクスチャーマッピングされた世界

2007-09-22 23:07:00 | 日記・エッセイ・コラム

Okotoba うわあ、仕事きついなーとかいいながら重い身体を引きずって出社するワシに、突き刺さってくるお言葉やな。通勤途中のお寺では、掲示板でいつも心のあり方を説いている。

さて、空元気いっぱいに今日も張り切るぞ!

とかいいながら、会社につくと溜まっている仕事にウンザリしたりするのであった。

お寺のお言葉とは関係ない話になるけれど、害虫駆除業者でも、心ひとつで儲けまくっている会社もある。衛生害虫の専門知識で世の中の困っている人たちに光を与えるのだって感じで、各種工場、病院、住宅などを組織的に点検しまくって、様々な害虫対策グッズを売っていくのである。

ウチもやらなければといつも思うのだが、耐震金具のことをお客さんから聞かれても、さあ、どーなんでしょね。オロナミンCが人体の健康に役立つ程度には、家屋の安全に役立ってるのではないでしょうかなどと、つい本音を語ってしまうのでなかなか巨大な自社ビルを建てることができないでいるんやな、コレが。

やはり、なんだか曖昧なものを売るには、売る側が強力な信念を持っていないといけない。データがないものについても、巧みなたとえ話やありえそうな仮定で、お客が喜んで買うようにしないといけないのである。そう、世界は決して単純な事象で構成されているわけではなくて、解決が困難な問題も多いのだけれど、すべてのものを単純で都合の良い解釈が可能なようにイメージさせるパワーが必要なのである。

多くの害虫駆除業者や殺虫剤メーカーが語るところの、ゴキブリだのシロアリなどが引き起こす問題が解決されるという説明には、仮想現実空間のようなところがある。お金を出す客は、快適にみえる張りぼて(テクスチャーマッピング)な世界へ連れ込まれているだけで、実際には空虚なものを手にしているだけという恐れがある。

などという理由で食品工場によく置いてあるエアーシャワーってのもなんだかなと思ったりする。けど、このイラストはお気に入り。Air_shower


飛び去りしものたち

2007-09-17 23:18:00 | インポート

Quetzalcoatlusnorthropi 子供を連れて翼竜展を見に行った。地球史上で最も注目すべき生物の一つ、ケツァルコアトラスが展示してあるというのなら、見に行かざるをえまい。天井からぶら下がった巨大な模型に、恐竜好きの子供たちはドヨめいていた。

やはり、翼竜最大種はとんでもないものである。とても、自力で離陸できるとは思えない。ものすごく風の強いところで暮らしていて、翼に風を受けて空中にゆっくりと浮かび上がるという、風任せの凧のような生活をしていたに違いない。嫁ハンもしげしげと巨大翼竜を眺めているから、いろいろ説明したが、「これみんのに大人一人1200円か・・・」と話を聞いていない反応であった。

ところで、まわりの入場者がちゃんと名前を覚えようとしていないのに、古生物ファンの一人として残念なものを感じた。「ケツアツコアトル」、「ケツネルドン」(きつねうどんかい!)などなど。まあ、ちゃんと覚えたからといって何かの役に立つものでもないのだが。

帰りに、何年か前に急逝された北山昭さんの特別展示をみた。とても几帳面な昆虫の標本が並んでいた。同氏とは、ほんの少しだけ仕事上のお付き合いをさせて頂いたことがあった。そのときにフィールドで、目からウロコの虫採り方法やポイントを、いろいろ教わったものだ。展示された資料をみていると、いかにスゴイ昆虫研究者であったかということに圧倒されるばかりだった。

博物館を出ると植物園は、とても暑かった。園内は厖大なトンボ類が飛び交っていた。池にパンくずをなげて、ものすごい数のアカミミガメが押し寄せてくるのに目を丸くしている人もいた。今日の長居公園には、ひときわ生と死のコントラストを感じてしまった。Rhyothemisfuliginosa