害虫屋の雑記帳(ブログ人の保存版)

ブログ人のサービス停止に伴い、gooに過去記事を保管させてもらうことにした。

不安な夢 育たない夢 を食べる

2007-03-30 23:42:00 | インポート

Dekopon01_1  変な形のデコポンをもらった。中身は一体どんな事になっているのやらと、嬉しがって皮をむいてみると・・・ 、どうということもなく普通だった。スーパーで売ってるデコポンは形がそろっているけど、生産現場では変な形の実が結構できてしまうものらしい。私はこれらを、すべて美味しく頂いたが、奇形とかで変形した農作物は忌み嫌われるようだ。ウチの田舎では、変形したミカンなどの他にも、ちょっと変わった形の農作物が食卓に出ると、年寄りがサッと手を伸ばして若いものの手から掠め取って食べたりしていた。「こういうものを食べると変な子供ができるかもしれないから、若いもんは食べてはいかん。」などという理屈で納得させられた。こんな優生学的な臭いがする説明でも、子供のときは素直に、「オバアはスゲー」と略奪者を賞賛していた。
 世の中の悪しき物をたくさん食らって、墓場に持っていこうとするなんて、カッコよすぎ! 萩尾望都の難解なSFマンガ「銀の三角」には、宇宙の歪み(不安な夢 育たない夢)を食べる美女の超越者が出てくるが、私は田舎のオバアが、マンガの美女と重なってしようがなかった。
 でも、よく考えてみると今の世の中にある農作物のほとんどは、品種改良(奇形を選択して固定する)されたものだ。私の手の中のデコポンは、ヒトが作り出した不安な夢かも知れないが、とても甘くてジューシー。

Dekopon02_1

しかし、この形って…


はさまれたい

2007-03-25 21:40:10 | インポート

 林のなかで湿った落ち葉をかき回すと、いろんな生き物がでてきて面白い。ただ、お気に入りの近場のシイ林も、周囲に新しい住宅が増えてきて、人通りが多くゆっくり観察できなくなってきている。イヌの散歩に来ている人が木立の隙間からじっとこちらを伺ってたりする。立ち上がって、その人に近寄って「イヤ別に人埋めたりしてないので」とかいいたいのをぐっとこらえて、手元に神経を集中する。見られているだけならまだいい方で、話しかけてくる人も少なくない。そんなとき無愛想にしていれば、野生生物に無関心な人を増加させるだけだと思って、できるだけ明るく笑顔で昆虫の面白さを語ったりもするが、人の多い場所だとこれも疲れる。「ドクトルまんぼう昆虫記」では、会話を早々に切り上げるコツとして「食用にする」とか説明することを推奨していたような記憶があるが試してみたことはない。Japygidae
 この辺の平地で採れるハサミコムシは、詳しい種名は不明だが、コムシなんていう割りに2cmを超える個体もいる。山地でみかける個体よりはずいぶんデカイので別種かも。なんとなくハサミムシに似ているけど、大きく異なるグループ。こういうハサミ的とかキバ的なムシはなんかカッコいい。世間一般的に、クワガタムシなどのファン層が分厚いのも、ヒトがハサミ的な生き物に惹かれる何か根源的な理由があるためかもしれない。もしかして、最近くわがたツマミにハ(サ)マってしまったのもそのせいか。 Cerci


ムネノツカエ

2007-03-21 23:47:00 | インポート

Caranx_ignobilis  近畿に数ある水族館のなかでも、和歌山県立自然博物館はかなりええ感じなのではないかとヒイキしている。特に凝った舞台装置があるというわけでもないけれど、大水槽の巨大魚になぜか妙に迫力を感じる。入り口で卵を飲み込んだアオダイショウをみることができて、人工潮溜まりでアメフラシを手づかみできるのもイイ(のか?)。マニアックな魚や無脊椎動物が多数展示されているのも他では見られない特色だ。魚なんかどーでもええやんという家族だって、高校生以下はタダということでしゃーないなと誘引されるシステムもすばらしい。

 ムシ関係もときどき特別展示なんかをやってくれるので目が離せない。でも・・・・。長いこと気になっていたある展示コーナーがあった。それは、森林の落ち葉の中の生き物を紹介しているところで、ダニの解説パネルと顕微鏡が置いてあるのだけれど、どう見てもケダニとヤドリダニのプレパラートと解説パネルが互い違いになっているということだった。何年も黙っていたのは、このコーナーでダニを区別できる人が量産されるとは思えないし、実際、覗き込んでいる子供達をみていても感心しているような様子は見受けられない。つまり、どーでもえー展示の典型で、害虫屋風情がでしゃばることはなかろうと思っていたからだ。だが、今日はテレビ局が来ていて我が子が盗撮されていたから気が動転したのか、ついに職員の方に声をかけて、展示物の再確認を要望してしまった。丁寧な対応で確認しておくとのことであった。

 それにしても、年間入場者数10万人記念カードを配布する直前に訪館してしまうとは。チッ!


午後の甘い発生学

2007-03-17 20:41:54 | インポート

 泉南市のイオンりんくう泉南ショッピングセンターの中。2階の通路が広くなってるところで、親子連れが集まっている。こういう場所はもっとも苦手だけど、仕方がない。集団のなかにウチの子も走りこんでいってしまったのだ。ここにくるといつもそう。
 チビッコたちの目を釘付けにしているのは、小柄なお姉さんの手先のアンズの実ほどの大きさのアメ。すばやく動く指の間で、伸ばされたりハサミで切れ目を入れられて、ケモノやムシの形が出来上がってゆく。
単純な形のものから、わずかな過程で様々な造形になるところは何度見ても不思議だ。なんか生物の教科書に出てくる発生学のイラストを思い出したりする。卵細胞がどんどん分割して、あるところは分裂がとまり、あるところは分裂Ame_corgi が繰り返されて、生き物の形になるアレだ。
 素人が粘土で動物なんか造ろうとしても、なかなかうまくいかないものだ。それなのにこのお姉さんは、あっという間に左右対称に耳やら足やらを作り、動きまで与えている。しかも、素材はすぐに硬くなってしまうアメちゃんでだ。ホントにスゴイ!
 リクエストして作ってもらうのは一つ500円なり。眺めるのも良し。舐めても良し。動物の左右対称性などの発生学的謎を思索したりするのも良し。知人にも行ってみるよう勧めたいところだが、チビッコだらけなのでオヤジには少々きつい。
 
写真はうちの子が2日間なめまくって食べたコーギー。飴細工のお姉さんことKAYAさんのHPはこちら↓

http://www.rinku.zaq.ne.jp/amezaiku/index.htm


楽園の連鎖

2007-03-04 01:32:29 | インポート

Yousuiro  40年ほど前の和泉市。私が住んでいたあたりの用水路は、メダカ、モロコの楽園だった。田んぼのあぜ道も生き物だらけで、ヒトの農耕文化が造りだした典型的な里山の自然っていうのがみられた。先日、久しぶりにお気に入りだった用水路にいってみたが、とても魚すくいなどができそうな場所ではなくなっていた。上流には住宅街があって、その先には大規模な愛玩犬の繁殖施設もある。そこの繁殖施設では、イヌ‐ブルセラ病のアウトブレイクが起きて、今は残ったイヌ達の世話や消毒に追われている様子だ。まさか、消毒薬が用水路に流れていることはないとは思うが・・・・。
 ペットブームでイヌの人気が高まっている御時勢に、多数のイヌたちが哀れなめにあっているとはどういうことなのだろう?
 このあたりは、昔からけっこう野犬が多い場所だった。ヒトになつく様子がなく、夜陰にまぎれて人家の近くを徘徊するイヌたちだが、日当たりのよい草地で昼寝しているところもよく見かけた。
 野生動物のように小動物を狩ったりして生きている野犬は、「ノイヌ」と呼ばれている。夜にカブトムシ採りなどをしていて、野犬の光る目が意外に近くまで接近していてギョッとしたこともあった。和泉市の野犬が、ノウサギなどを捕食しているかどうかは不明だが、雰囲気的には自然の一部になっているとしか思えない。
 野犬の中には繁殖施設の近くをたむろしていた小さな群もあった。その様子は多くの人に目撃されているから、保健所に追われる羽目になったのか、最近はどこに行っても姿を見かけない。姿を消した野犬の群れには、繁殖施設から逃げ出したイヌが混じっていることも考えられるため、追跡の手は厳しくなるはずだ。
 問題の繁殖施設の人畜共通感染症にかかったイヌ達は、安楽死が決定したようだが(個人的には全頭に治療を施して、人畜共通の病気についてデータを収集するべきと思う)、野犬達の方は追われてギリギリの生活を続けながらも、生き長らえそうな気がする。
 そんなことをいろいろ考えながら、ゴミだらけの下水臭がする用水路を、腰をかがめて眺めていた。すると、芥子粒のような小型の黒いユスリカが数匹飛んでいて、護岸にも点々と止まっていた。水面下でゆらめいている寒天状のヒモ(ズーグレア?)の間にもなにかがモゾモゾと動いている。人間からみれば「汚い川」だが、腐敗した有機物が多い水質を好む生き物には楽園というわけである。
 ヒトが里山をつくろうが、里山を汚そうが、生き物を殺戮しようが、ヒトが作り出す様々な状況の上で、生き物たちはそれぞれの楽園をそれぞれに形成していくのだろう。