害虫屋の雑記帳(ブログ人の保存版)

ブログ人のサービス停止に伴い、gooに過去記事を保管させてもらうことにした。

鳥というダニの宇宙

2014-04-23 00:11:57 | 自然観察
●ある会社の倉庫で、小さな野鳥(種不明)がネズミ用の粘着板に付着してこときれていた。粘着板は、窓際に集まる昆虫類の捕獲を目的としていたが、かわいそうなことをしてしまった。
鳥の死骸は、死後あまり時間が経っていなかったようで、たくさんの寄生ダニがまだ生きていた。普通、鳥の羽にはウモウダニと呼ばれる非吸血性のダニがたくさん生息しているが、分類学的にはいくつかの科に分かれていて、カオスな世界である
死骸をつり下げて、落下するダニを水盤に集めてから観察してみた。
鳥類に寄生するダニ類は、ずいぶん奇妙な形をしている。激しい運動をする宿主から振り落とされないようにするため、それぞれの種がそれぞれの方針で進化したようだ。

風切り羽にいつも同じ向きで整列している種。
ヨウジョウウモウダニの一種 Proctophyllodidae Gen. sp. メス
Proctophyllodidae_gen_spfemale

ヨウジョウウモウダニの一種 Proctophyllodidae Gen. sp. オス。メスは200個体以上いたがオスはコレ1個体しか採れなかった。上とは多分、同じ種。
Proctophyllodidae_gen_spmale

脚でしがみつくのが得意そうなカタチ。
和名なし Xolalgidae Gen. sp. オス
Xolalgidae_gen_sp_male






ウモウダニ類じゃないのも混じっていた、鼻腔などにいるというハナダニの一種。
Rhinonyssidae Gen. sp.(トゲダニ目、ワクモ上科、ハナダニ科)
Rhinonyssidae

ドロの法則の例外

2014-04-21 00:00:00 | 自然観察

Dermatophagoides_microceras

不思議なヤツラだ。暖かくなるにつれ、Dermatophagoides microceras(ササラダニ目,コナダニ団,ヒゼンダニ上科,チリダニ科) の休眠個体が次々に目覚めて来た。乾燥して固まった培地に化石のごとく埋まっているけれど、ちゃんと生きている。まるで、ピーナツ入りチョコレート菓子かなんかみたい。
チリダニの仲間は、動物の体表から落下して巣材にこびりついているようなゴミが大好きだ。巣の主と付かず離れずな生活をしている種が多い。ヒトの巣材(布団とか)が大好きなヤケヒョウヒダニやコナヒョウヒダニなどもチリダニ科だ。

D. microceras もヒトの巣から見つかるのだけれども、さらに巣の主と距離を置いた生活ができるようで、他のヒョウヒダニが生息できないようなカビに汚染された環境でもみられ、生態的にはコナダニな雰囲気をもつ種である。
昨年話題になった論文を読んだ後、このダニは膨大な種を含むササラダニ目のなかでもっとも進化した一群ということになりそう、なんて思った。

昨年話題になった論文というのはコチラ↓(系統樹の図が拡大して部屋に飾っておきたいくらい美しい)
Klimov, P.B., OConnor, B.M. 2013. Is permanent parasitism reversible? - Critical evidence from early evolution of house dust mites. Systematic Biology. 62(3): 411-423.

伝統的なダニ学の本では、チリダニ科は「(系統が)問題の一群」とか「遺存種」などとされていた。というのは、ヒトの体表の病変部や尿から見つかる(勘違いな記録も含まれる)だけでなく、貯蔵食品からも見つかるので、自由生活者から体表寄生に進化する途中段階だろうと考えられていたからだ。
ヒゼンダニ科のような皮膚に潜り込む寄生者は、一歩手前の段階ではチリダニ科のような自由生活者だったのだろうという解説に、私なんぞはフツウに納得していた。

ところが、クリモフはDNAに基づく系統解析の結果、寄生者として特殊化した種が、ケラチンを分解できる能力などを活用して寄主から離れ自由生活者になったという。ようするにチリダニ科の祖先は動物寄生種だったが、寄生生活を捨てて自由生活を再び獲得するという逆向きの進化をしたということらしい。

進化は後戻りしないというドロの法則は、グールドの「八匹の子豚」とか、ドーキンスの「盲目の時計職人」でも論じられていて・・・って、これらの本は読んだ直後はスゴく物知りになった気がするのだが、時間経過とともにどんどん忘れて、現在は何も覚えていないことに今気づいた・・・。


Windows XPからWindows7or8への移行

2014-04-17 23:56:47 | 日記・エッセイ・コラム
ヤバそうと警戒しつつ、電脳的混沌に沈降。
やはり、マイクロソフトにはめられた。
会社のパソコンはたったの12台となめていたら辛酸なめた。
・ほとんどのパソコンにOSアップデートDVDが付属していたのだが、とにかくめちゃくちゃ時間がかかった。ある程度主要なところは事前に調べて下準備していたつもりだったが、Windows Live メール2012への移行がクセモノであった。引っ越し後に連絡先がかなり減少してたりで、一部は手入力で補完。
・ネットワークの諸問題噴出。6台が一斉に無線アクセスすると、そのうちWin8の2台か3台がつながらなくなった。無線ルータのチャンネルを固定して倍速モードを切ることで改善したが、それでも1、2台は調子がおかしい。古い無線マウスの使用をやめてもらったら1台改善。残りの1台は最新ノートパソコンとナゾのUSBキーボードを接続しているあたりが挙動をあやしくしている原因っぽいものの、そこは内政干渉なので放置。
・工事写真データ保管パソコンをWin7にした途端、XP機からLAN経由で送られてくるデータが途切れて、XP機ハングアップ。悪いのはWin7らしく、IRPStackSizeなどのレジストリ値を変更すると改善できた。
・Win7機である dynabook Satellite T571のTOSHIBA Flash Cardsが、無線のところだけオン・オフできなくなったが、デバイスマネージャからみるとwifiモジュールに壊れた様子はなかった。TFCを再インストールするとよさそうだが、もうメンドイので有線でつないでもらうことにした。電波をつかませるためにじたばたしてたら、しんどくなって頭の中に電波がキーンと聞こえてきた。おそらくムー大陸からの呼び出しだろう。
・エクセル苦手っ子御用達のツール「画像を楽に貼り付けたい」がうまく動かない。文字化けの方はVisual Basic 6.0 SP6 ランタイムライブラリ でなんとかなった。取引先から送られてきたマクロ付きxlsファイルでツールを使おうとしたら、なぜかファイル起動を検知できず。VBAでもってマクロ外したエクセルファイルだと、とりあえず検知してツールが使えた。てかエクセルに慣れよう、みんな。
・全員のエクセルの保存形式を、オプション操作でxls形式固定に変更してたつもりだったが、xlsxなんてヘンな拡張子の添付ファイルは開けないと、取引先から苦情がきた。互換機能パックのことを伝えるが、対応できないとの返事。
てっきり、取引先もXPサポート終了対策を進めていると思い込んでいたので意外だった。すがすがしいまでに時の流れに逆らっている取引先に感服した。一切を「何それ知らん」ちゅう路線もエーかもしれん。
・買ったばかりのLenovo E440がLenovo Solutions Small Businessのせいで、BIOSさえ起動しない状態になった。見事な仮死状態でどこを触っても起きてこない。サポセンのおねいさんが、「cmosクリア」と秒殺で助言してくれたので、裏面パネル外してボタン電池配線の抜き差しをしたら治った。
・数日おいてWin8ノートパソコン2台で、やっぱり無線Lanがヘン。DNS サーバーのアドレス取得ができない模様。問題発生パターンが読めない。
http://support.microsoft.com/kb/2772182/ja のとおりにすると使えた。古いバッファローの無線ルーターをやめて新しいのにしたほうがいいかもしれない。古いXP機は何の問題もなかったのに・・・。なしくずしに何もかも古いものを捨てさせようという、巨大な権力の影を感じる。
昔は道具を大切にするアイヌの家に、古い道具の精があらわれて舞を披露してくれたそうだが、マイクロソフトの重役たちの寝室には、必ずやちょいワルなパラノーマル・アクティビティが訪れることであろう。
Lenovo_e440


■ 生きて動いているヒモダニがみられるのかっ!と勘違いして「Digging Up A New Mite Species」という動画の再生ボタンを大喜びでクリックしたが、論文の電顕写真が出てきただけだった。
オハイオ大学の敷地内であんな素敵な新種を採集できるとはすごい。愛称は“The Buckeye Dragon Mite”、オハイオリュウダニ。.なんてカッコいいんだ!

ヤナギハカザリダニのメモ

2014-04-07 23:56:50 | 自然観察

Ameroseius_plumosus01

Ameroseius_plumosus02

 

数日前に、ある乾燥植物材料で、かなりまとまった数の生きたヤナギハカザリダニ Ameroseius plumosus をみつけた。

カビを食べるといろいろな本に書いてあるが、本当にカビカビなところではみかけたことがない。畳から検出されることがあるが、生息密度は低いし、たいてい古い死骸ばかり。
所々うっすらと菌糸が生えているところでなら、走り回っているのをみたことがあるが、どんなカビを食べているのかはよく分からない。体内の内容物をみると酵母みたいにみえるものが、消化管内に詰まっていたりする。

口のあたりをみていると、捕食行動をしそうに思われるけれど、明確な観察事例はないとされている。

文献ではヒトを刺咬することがあると書かれているものもあるが、ウチでは高密度の生息状況に出くわしたことがなく、基本的に無害種として扱っている。イヌの脱毛症で傷口付近にいたという論文もある。本種がたくさんいることが分かっている乾燥不十分な干し草には、裸で飛び込んだりすることをお勧めできない。「お日様のニオイがする」状態だったらOKだと思う。

グーグルブック*で調べていると、チェックリストを見つけたのでメモった。

Ameroseius Berlese, 1903
   Kleemannia Oudemans, 1930
   Primoseius Womersley, 1956
     plumosus (Oudemans, 1902) (Seiulus)
        macauleyi (Hughes, 1948) (Zercoseins)
        macauleyi: Womersley, 1956 (Primoseius)
        plumosus: Hughes, 1961 (Kleemania) (sic)
        plumosus: Westerboer and Bernhard, 1963 (Ameroseius)
        plumosus: Champ, 1965 (Kleemania) (sic)
        plumosus: Champ, 1966 (Kleemania) (sic)
        plumosa: Domrow, 1974 (Kleemannia)
        plumosus: Hughes, 1976 (Kleemannia)
        plumosa: Domrow, 1979 (Kleemannia)
        plumosa: Lowry, 1980 (Kleemannia)
        plumosus: Hallidai, 1997 (Ameroseius)

*HALLIDAY, B. (1998). Mites of Australia: a checklist and bibliographyから抜粋

偉い人たちのさまざまな苦労が、長い時を超えて今に続いてきていることが分かる。
sicというラテン語は「として」という意味で、ミススペルだけど「原文ノママ」だよということらしい。
ラテン語は興味深い言語だけれども、とてもややこしくて、ただでさえ難解な分類学をいっそう激ムズにしている嫌いがある。