害虫屋の雑記帳(ブログ人の保存版)

ブログ人のサービス停止に伴い、gooに過去記事を保管させてもらうことにした。

未整理のもの

2011-09-22 01:56:31 | 自然観察

Microchaetes scoparius やとおぉっ!
ちまたのコケに、極小な侵略を続けている例のマルトゲムシはこの種かもしれない。
Tasmanian Forest Insect Collection で紹介されている種がソックリだ。

http://www.tfic.net.au/SpeciesPages/Microchaetes%20scoparius.html
写真は多くないけれど、画像を見たい種がすごく多く紹介されているので今後にも期待のサイト。

scopariusの参考文献をネットでみつけたけど、読めないので見るだけ、って絵はどこ?

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大阪府で今年、ライトトラップでみられたヒメチャタテの一種 Lachesilla sp.
特に珍しい種ではないみたいだけれども名前は分からない。オスが手に入ったら名前を調べてみようと思っている。
Lachesilla nubilis のオスの交尾器が載っている文献が手元にあるので、上手く一致してくれるとうれしい。
でもこの属はたくさん記載されているので、名前が分かる見込みはとても薄い。
ブログの恐ろしいところは、こんなだれも気にしないような虫画像を貼りたくなるところだと思う。
まるっきり有名でない山のテッペンで、石をひとつ拾って石積みに加える行為に似てる気がする。
賽の河原だったりとか。

Lachesilla_sp_female01

Lachesilla_sp_female02


夫翔婦随

2011-09-19 20:21:45 | 自然観察

Phoridae_gen_sp01

Phoridae_gen_sp03

Phoridae_gen_sp01_2Phoridae_gen_sp02

 

同僚が、去年の夏だったかに、妙な虫の死骸を見つけた。
西宮市の市街地にある工場のライトトラップの粘着紙に捕獲されていたノミバエだった。翅のある成虫の横に、無翅のヨコバイの幼虫のようなものが付着している点が変だった。ヨコバイみたいなのはノミバエの無翅メスと同定され、オスに運ばれているらしいということに好奇心をそそられた。
このあいだから、害虫のほうのノミバエのことを調べていて、カナダの赤くて分厚いハエ分類本2巻を眺めていると、メスが無翅の種って結構おるんやなーと横道にそれだして、突如くだんのヨコバイ風ノミバエのほうへ思考が漂流していった。いつものように思考は、やがてどこかの暗礁に乗り上げてくだけ散るまで迷走した。
分類学の海で遭難しつつ得た結論としては、Chonocephalus sp. と、思う。

気になったのは、メスがどうやってオスにくっついていたのかという点だ。オスは、メスを腹部先端だけくっつけて、ぶら下げながら飛んだり引きずったりしていたのだろうか?でも、メスの上下に扁平な体型をみてみると、メスはオスの身体のどこかに付着していたのでは?とも思う。腹部の上側にくっついているとオスも自由に行動しやすいのではないだろうか?と意味もなく想像図を描いてみた。


1
メスがオスの背面にいたのではと考える根拠は他にもあって、粘着紙に付着していた死骸の状態も奇妙だった。オスは普通に粘着剤に脚から接触した感じだが、メスもオスから少し離れた位置に脚から付着したような様子だったのだ。メスは、甲斐性なしの亭主の背中をちょっと歩いた?と思えたのだ。もちろん粘着剤は流動性があるので、確実なことは言えないけれど。

Chonocephalusは、腐った果実にみられるそうである。窓際にバナナとか置いておくと来ることがあるのだろうか?この辺はなんとも分からない。
クサビノミバエとかが1匹入り込んだだけでも、家族が大騒ぎしている我が家では、お招きするのに無理があるなー。会社ならできるかな?みんな、腐った果物が事務所の窓際に置いてあっても気にしないでいてほしい。生きてウジャウジャ増えているところをみてみたいでしょ?そうでもない?


さまよえる分類

2011-09-16 00:17:12 | 自然観察

微小甲虫は面白いのだけれど、分類するとなるとお手上げなグループが多い。甲虫とは結構長いことつきあってはいるが、ほとんどの科について深く知ることも無く現在に至っている。とうてい分かるはずもないけれど、何とかならないかなと思って、少しずつ情報を集めながら、分類について長いこと考えをめぐらせている種が、私の標本箱にはいくつかある。そんな個人的Xファイルな種には、とても目立つ種もあるがほとんどは1~2mmの微小種だ。
2009年8月に兵庫県豊岡市の市街地でライトトラップにきた微小種1個体は、付節の数が前脚から後脚まで全部4節(図鑑の表現だと4-4-4)で、触角の球桿(「きゅうかん」急に太くなっている節)は4節と、いろいろなところが4なムシ。背面からみると、さやばねの後ろから暗色の腹部後端がはみ出して見えている。これは、長らくなんだか分からなかった。Myrmechixenus_sp01_2


Myrmechixenus_sp01



面構えがゴミムシダマシ科だが、付節の数が変で腹面からみた印象も他の科のような雰囲気があった。ホソヒラタムシ科?とかコキノコムシ科?とか悩んだあげく、American Beetlesの検索表をみると、ゴミムシダマシ科に付節が4-4-4のMyrmechixenusという属がいると、検索の最初の方にあるではないか!
保育社の甲虫図鑑3巻にも、よく読めば「稀に4-4-4」とか書いてあった。
付節の数が合わないからゴミダマと違うと思い込んでいたのだ。

Bugguideで調べるとよく似た種がみつかった。↓
http://bugguide.net/node/view/407027
北米の種は、家の周りや庭園、川のほとりなどにいて、稀な種ではない(Fall,1901)らしい。

豊岡市で見られた種は、Myrmechixenus sp. として扱うことにした。今年2011年9月にも大阪市東成区で1個体捕獲された。今のところ、室内にいたのか野外にいたのかということも不明で、生息場所については何の手がかりもない状態である。

参考文献:
Aalbu, R. L., C. A. Triplehorn, J. M. Campbell, K. W. Brown, R. Somerby & D. B. Thomas. 2002.
106. Tenebrionidae, pp. 463-509. in Volume 2 of Arnett, R. et al. American Beetles. CRC press, New York.

Fall, H. C., 1901. List of the Coleoptera of Southern California, with notes on habits and distribution and descriptions of new species. Occasional Papers of the California Academy of Sciences, 8: 1-282.
(
www.archive.org/stream/listofcoleoptera00fall/listofcoleoptera00fall_djvu.txt)


クリイロチャタテっていうけど黒く見える

2011-09-14 00:08:11 | 自然観察

老眼のツライところは小さい物がよく見えないということにつきる。そのような鮮明な画像が得られないハンデを負っていても、現場で虫をみつける作業は、ある程度なんとかできると思う。経験と、対象物の色彩を解析する画像処理能力を培えばよいだろう。私の脳にはこの素晴らしい画像解析システムが備わっており、シバンムシ科の微小種を発見!といって拾い上げた採集物がクロゴキブリの糞であったりする誤認識率は、控えめに言って僅か6割程度である。

 

先日、大阪府下の食品工場で、エアコンのフィルターが小麦粉で汚れたところを見つめていると、体長約1mmの黒っぽい虫が複数チミチミと動いていた。このくらいの微小種になると、肉眼で形態など分かるはずも無いので、脳内的な画像解析に頼るしかない。
色目で分類すると黒っぽい茶色なので、これらはすべてクリイロチャタテか、脚が超速いヒメマキムシという認識結果になる。
実体顕微鏡でみるとクリイロチャタテだったが、念のために交尾器を確認してみた。
まずはスプラッタな交尾器のプレパラート作りである。水を浅く入れたシャーレの底で柄付き針を駆使して、解体を進める。
Ectopsocus_cryptomeriae_01

 

 

 

 

 

昆虫の交尾器というのは複雑なものが多い。チャタテムシは微小種が多いから、生殖に関わる器官などは簡略化されてても良さそうなものだが、手抜き無しでしっかりとこだわりの複雑さを有しまくっている。
メス腹端の腹面にある板のような部分(1)を外して、さらに内側(2)の板状部分(3)を文献と見比べてみた。やはり、クリイロチャタテでOKのようである。
Ectopsocus_cryptomeriae_02

 

Ectopsocus_cryptomeriae_03_2

 

 

 

 

 

Ectopsocus_cryptomeriae_04_3

 

 

 

 

 

Ectopsocus_cryptomeriae_05_2

 

 

 

 

 

オスの腹端背面には、左右不対称な謎の文字のような交尾器がある。へたくそな字のようだがどのオスにも同じ形のものがあるので驚く。腹端から少し離れてウンコのカケラのようなものがみえるが、実は透明な膜で腹端としっかりつながっていて、やはりこれも全てのオスにみられる。たぶん交尾器の一部なのだろう。交尾にこれらの複雑なパーツ群がいかなる必要性を持ち、どのようなギミックで動作するのか、私には全く想像できない。