害虫屋の雑記帳(ブログ人の保存版)

ブログ人のサービス停止に伴い、gooに過去記事を保管させてもらうことにした。

アシナガバチの開放

2008-03-29 23:14:00 | インポート

今週は拉致監禁中のムシたちに、なんやかんやと変化があった。
26日(火曜日)には、東大阪市内で採集したセグロアシナガバチが、空に向かって飛び立っていった。このハチたちは今年1月に 越冬中のところを襲撃されて、当社事務所の中に監禁されていた。ふと思い出して、プラ水槽を覗いてみると、すべての個体が巣の表面をゆっくりと歩き回っていた。
ハチを怖がる一部の社員(すぐそばでタイヤ交換していた)にみつからないように、容器のフタをはずして、そっと玄関先に置いてみると、1時間ほどの間に10個体すべてが飛び立っていった。たぶん、近所の某女子大の豊富な緑地あたりで巣を作れば、人間に迫害されることもないだろう。

スズメバチ・アシナガバチ類は害虫の面ばかりが目立つが、市街地のなかでは、かなり重要な樹木害虫の捕食者である。人知れずひっそりと、庭の毛虫退治の負担を軽減してくれていることには感謝したいものだ。

Polistes_jadwigae_2 


神様は異常にコウチュウがお好き?

2008-03-14 11:22:00 | 自然観察

コウチュウの種数が、他の生物に比較して異常に多いため、きっと造物主はコウチュウが好きだったのに違いないとHaldane博士は言っているが、私はそんなことはないと思う。ヤマトシロアリ属みたいに、体表炭化水素なんかで細分化されていく例を見ていると、未知の分類キーが発見されることで信じられないほど種類が増えて、神様はやっぱりシロアリが好きだったなんてことになるかもしれない。

そういえば、センチュウは億の単位で種を分けることができそうなので、神が本当にお気に入りなのは昆虫ですらないかもしれないという話もある。でもヒトの視覚で、形態の多様性を認識しやすいということでは、やはりコウチュウの仲間はダントツだろう。

昨年の春に和泉市のシイ林で採取した朽木をコンテナ容器でひっくり返していると、ミクロなコウチュウがいろいろ出てきた。当社の事務所は夏に異常な高温にさらされる為、飼育中の昆虫で滅びるものが続出して、ヒトの生存も危ぶまれる状況となる。そんなプチ大絶滅を逃れて、見つかったのはこんな連中である。

Ebi 1)私は「エビフリャー」と呼んでいる昆虫だが、何の仲間かは全然知らない。ヒゲブトハネカクシ系なのかもしれないし、ザリガニの仲間のような気もする(投げやり)。

Thyroderusporcatus 2)アナムネカクホソカタムシThyroderus porcatus 。
ネブトクワガタが好みそうな朽木をもってかえると、容器の中で時々本種に出合う。はじめてみた時は、前胸に透明な窓を持つコウチュウということでとても驚いたものである。窓はいったい何の用途があるのだろう?(写真内スケールは1mm)

ところで、今日は会社からの帰り道にホワイトデー用つまらねーモノを買うために難波をうろついたが、フィギュアやら食玩やらのお店が気になって仕方がなかった。昆虫もフィギュアもやたらと集めて分類したいってところは、ヒトの脳内の深い根のあたりで共通しているのかもしれない。
たぶん昆虫をやっていなかったら、私は美少女フィギュアを収集していたに違いない。コスプレのお店にも興味を引かれてしまった。銀魂の主人公の衣装が売られていたが、あれを着て歩ける奴は凄いと思うな。


マルグンバイ調査メモ

2008-03-03 23:23:53 | 自然観察

昨日の日曜日のこと。朝ご飯を食べていると、ヨメがハイキングに行きたいと言い出した。チャーンス!土曜日に採れなかったマルグンバイを引き続き狙おう。「弘川寺に行かへん?西行法師のお墓があるところ。梅もきれいらしいし。」日本史ネタだと食いつくはずと思って反応をうかがった。
ヨメは目を細めながら、じっとこっちを見つめて不信感のこもった声で言った。「ムシやな・・・」
こっちが楽しそうにしゃべると、その目的は必ずムシのことだと思われているのがなんか悲しい。まあ、その通りなんだが。

その後激しい議論の末に、結局、弘川寺より3km北側の近つ飛鳥(大阪府南河内郡河南町)に、ハイキングに行くことに決定。
近つ飛鳥風土記の丘は、初めて行ったが驚くほど広い雑木林で、歩いていてとても気持ちの良い場所であった。
当然、私は歩くだけでは満足できないので道端のコケを観察した。コケ類の量は多いが、乾燥が進んでいて良い感じの場所がなかなかない。ふと、コンクリート製U字溝の縁にへばりついた小さなコケの塊が目に付いた。しゃがんで、指先でコケをはじいてみると、小さな黒いムシが、下に受けていたポリ袋に落ちてきた。この日はルーペを持っていたので早速確認。Acalyptasauteri
なんと、いままでに採れているミヤモトマルグンバイと違う。念願のマルグンバイAcalypta sauteriのようだ。でもこの日は雄が1個体採れただけで終わってしまった。
1963年に同じ町内にある広川寺で採れているのだから、採れて当たり前なのだろうけど、個人的にはようやくという感じでなんだか感慨が深い。

こんな小さいムシだけれど、分布の範囲になにやら独特のパターンがありそうで、いろいろな人が研究していくうちに、きっと何か面白いことが分かってくるような気がする。いろんな予測を立ててみるが、予想外の分布と出くわしても、それはそれでうれしかったりする。昆虫の分布から、過去に生じた地質学的な出来事などに思いを馳せてみるのもムシの楽しみ方の一つなのだ。


あるいは侵入昆虫でいっぱいの海

2008-03-01 23:25:00 | 自然観察

Mokuzai_kombinat 害虫とは全然関係ない用事で、忠岡町の木材コンビナートの横を、久しぶりに通りかかったが、30年くらい前と比べると一層さびれた感じが漂っていた。私が小学生の頃は、水面が丸太で埋め尽くされていた記憶があるのだが。時代の流れやな。私の勤務先の重要な取引先の会社や、知人が働いている合板工場がここにある。門の前で車を止めて、中をジロジロ覗き込んでいることなど、敵は全く気づいていないだろう。フッフッフッ。木材関連の昆虫を研究したいのであれば、ここほど良い採集地はないと思うが、残念ながら企業の敷地内にしか良さそうな木材は置かれていない。こっそり敷地に忍び込んで合板を叩いてホソヒラタムシ科のコウチュウなどを採集することは自重しよう。知人にみつかった場合は面倒だし。

あっ。堂々と断って虫取りさせてもらえばいいのか。Hierodulapatelliferadead

時間的な余裕が無いので、近くの公園の駐車場周辺の樹木を少し観察。ハラビロカマキリの死骸を息子がみつけただけで、全く成果なし。人工の川は面白そうだったので、次回はネットを持っていってみようと思った程度。


その後は、熊取町まで移動して用事を済ませて、1時間ほど自由時間が発生。ウオーと本宮ひろしキャラになって叫びながら、奥山雨山自然公園にいって、コケをしばきまくった。マルグンバイ属をゲット!! 和泉市の個体より細長いような気がする!! こりゃーきっと採集できずにいるAcalypta sauteriに違いない。家に戻るとハアハアと危ない呼吸音を発して興奮しながら拡大して観察してみた。ガックシ!!和泉市と同じくミヤモトマルグンバイ様かいなっ!ぐぬうっ、やはりもっと標高が高いところでないと無理なのか。