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害虫屋の雑記帳(ブログ人の保存版)

ブログ人のサービス停止に伴い、gooに過去記事を保管させてもらうことにした。

蚊みたいなヒメガガンボ

2009-04-26 21:18:24 | インポート

河内平野を流れる小さな川で、サカナの観察をしながら歩いた。釣りに関しては、当社一の専門家に同行してもらい、様々な解説をしていただいた。
異常にでっかいコイと思ってた個体は「あれはソウギョですわ。」と訂正されたり、コイが水面で騒いで産卵行動をしているのをみて、「スポーニングやな」と知らない用語で解説されたりしながら、川の中の生き物たちをみていた。最近の釣り好き達はカタカナ言葉をよく使うので、会話をしててもオッサンには理解できないことが多い。
これは、趣味の世界ならどの分野でもあって、私も学名を省略して他のムシ屋と語り合ったり、エリトラだのテネラルだのと何語かワカランことをしゃべりまくっているので人のことはいえない。もし、ムシ屋版ジャーゴンファイル(隠語風味の用語集)ってものをつくったら、結構ブ厚いものになりそうな気もする。あまり欲しいとは思わないけど。

今の時期には、川の護岸にガガンボがかなりたくさんとまっている。このガガンボは大部分が同じ種類で、よくみると独特の顔つきをしている。口器が長くなっていて、なんだかアカイエカを3倍くらいに拡大したみたいな感じのムシだ。
手持ちの属までの絵解き検索で調べて、ヒメガガンボの一種Limonia (Geranomyia) と考えた。口がこんなにトンガッててもヒメガガンボとは・・・。分類が苦手な目はいろいろあるが、双翅目は特にキツイ。Geranomyia02

そういえば、このヒメガガンボは以前に相談事例があった。蚊に似ているので知らない人はビビるのだろう。口器が長いのは花に集まって蜜を吸ったりするためのようで、血をすったりはしない。でも、ドブ川の成虫を眺めていると、川面に近いコンクリートの表面を行ったり来たりしてるだけで、長い口を役立てているようなところは観察できなかった。
どんなムシでも分からないことが多過ぎる。ほんの少し何かがわかっても、標本と文献から
倍返しのようにナゾが吹き出てくるというパターンに、ここのところはまりがち。


年寄り用グッズ

2009-02-23 22:19:58 | インポート

老眼対策として、100円ショップのメガネを買っているのだが、すぐにどこかにいってしまう。
そんな間抜けな私を尻目に、同僚は机に新兵器を据え付けた。

ルーペ付きアームスタンドってシロモノ。Photo_2しかもホームセンターで5000円くらいで売っているとのこと!

こっそり無断で使用してみた。標本箱(小)を下において眺めてみるとメチャメチャよく見える。老眼鏡の比ではない。やはり、すごく明るいことが強みのようだ。色あせた標本も、いつもよりなんかキレイにみえる。
分からないように戻しておこう。しかし、この持ち主はピンセットや柄付き針の配置が少しズレていても「ぬッ?」とかつぶやいたりするので恐ろしいヤツである。

しかし、この形状は・・・SF心をくすぐるなあー。
宇宙戦争(古いほう)にでてくる円盤みたいなヤツの
熱線発射装置のよう。

Martian_heat_ray


赤と黒

2008-09-27 23:14:00 | インポート

相生の海岸でダニ観察。前から気になっているダニだらけの場所で昼休み休憩。なんて書くとむず痒い感じだが、陸地のほとんどの場所がダニだらけといえるので、特に変わったことをしているわけではない。
今日の昼は引き潮で、フジツボやらカキやらがくっついている岩のあたりでも観察しやすかった。
たくさんのダニが日当たりのよい場所を徘徊していた。どのダニも、体全体が赤っぽくて、少し黒っぽい部分があるような色合いなので、全部同じ種類だろうと思いながら吸虫管で少しばかり採集してみた。
帰社してから、これらの採集品を、実体顕微鏡でよく見ると、驚いたことに複数の科のダニ類が入り混じっていた。私は、色合いを重視して生物分類をする傾向があるが、海岸のダニには全く通用しないということを思い知った。
一番意外だったのはツメダニ科が混じっていたことで、照りつける太陽の下、岩の表面を徘徊する種がいるなんて思いもよらなかった。大型の種で属は不明。第1脚付節が太いってあたりでEutogenes近縁のような感じもするが、今まで見たこともない種類である。Cheyletidae_gen_sp

室内種でも不明種が多いのに、野外のツメダニなんかはどーしょーもない。拡大してみると同時に採れたテングダニと全く違う形態だが、採集しているときは全然区別がつかなかった。
この類似性はなにか理由があるのだろうか?Bdellidae_gen_sp

*9/30追記

ツメダニの一種 Cheyletidae gen. sp.と思っていた種は同定間違い。Heteroteneriffia sp. (ユビダニ科)だった!プレパラートにしてみると顎体部がまるっきりチャウ!実体顕微鏡レベルでも違和感があったが・・・アホやな。


コガシラコバネナガカメムシのダニ

2008-05-29 23:55:39 | インポート

先日、採集したコガシラコバネナガカメムシと一緒にタケの中にいたコナダニの一種を、検鏡してみた。一目見て手に負えそうにない感じがしたが、やはり属なんかは全然見当がつかない。この手のヒポプスは、寄主からはずして別の培地に移して研究するそうなのだが、そんな手間なことはやってられない。クロゴキブリのヒゲダニ類ですら飼育したことないのに。
ふと思ったが、カメムシについているコナダニ類のヒポプスなんて、他にいたかどうか・・・・少なくとも自分の採集品でみた覚えはない。
ヒゲダニ類などのコナダニ亜目のヒポプスは、コウチュウ類であればみかけることがあるが、気に留めて観察するようになったのは最近だし、他の昆虫類に便乗していたかどうかちゃんと覚えていない。これからはもっと気をつけて観察するようにしよう。


Astigmata_in_egg 

コガシラコバネナガカメムシの卵はかなりの数が変色して萎縮していたが、変色卵のなかはコナダニがギュウ詰めになっていた。若虫だの成虫だのが入り込んでいた。多分、コナダニが卵を齧って入り込んでいるじゃないかと思う。昆虫の卵のなかで発育するダニ?なのか?

スケール0.1mm


Astigmata_adult01

卵の中にいたオスの成虫。

脚の先には立派な爪がある。

スケール0.1mm


Astigmata_hypopus01 コガシラコバネナガカメムシの体表にいたコナダニのヒポプス。多分、前述の卵を食べていた種と同一種と思われるが、確認には飼育が必要なので大変。ウチではとてもそんな余裕はない。

スケール0.1mm

出入口に使用しているタケの幹の穴にしても、蛾の幼虫につくったものを二次利用するという偶然に頼っているし、繁殖ではダニに脅かされている。こんな事だから、コガシラコバネナガカメムシってヤツは、食物となるタケ・ササがやたらとある日本に古くから侵入してきているクセに、分布拡大が抑えられていたのかも。では、最近このカメムシが、西宮市や神戸市で急にみられるようになった理由は?タケに穴を開ける正体不明の謎の蛾が何かのカギを握っているような気がする。

*追記(2008年6月17日)

コナダニ類研究で、先進的な研究をされているO先生に問い合わせをした。
卵を攻撃する可能性や、カメムシに「寄生」している可能性はないだろうとのことだった。
チョット残念な感じだが、このダニを調べる必要はあると考えているので同定を依頼した。
このダニの分布がコガシラコバネナガカメムシの分布と同じなのか、そうでないのかということは、外来種とされるカメムシの侵入経路を探る研究のヒントになるかもしれない。

 

*追記2(2008年6月20日)
昨日、コナダニの同定結果を頂いた。和名がないミズコナダニ属の一種
だった。「ごく一般的なコナダニ」とのこと。手元にある植物防疫特別
増刊号「植物ダニ類の見分け方」に、しっかり形態的特徴と学名が記さ
れている種だった!(こんな種で専門家の仕事の邪魔をするとは!)
私は、ミズコナダニ属を水中でしか採集したことがなかったので、タケ
の中にもいるなんて、全く発想できなかった。今回のダニの件は、全然
方向の違うところで驚きの結果だった。
これで、疑問の一部は解消した。少なくとも、神戸市で観察したミズコ
ナダニの一種は、カメムシとの関係に特化している種ではないというこ
とだ。状態のよい卵を攻撃して食べることもなさそうで、増殖の抑制因
子になっている可能性は低い。(関東で観察されているコナダニについ
ては、現時点でまだ不明のままだが・・・・)


森に返却したムシ

2008-04-20 12:57:00 | インポート

マルグンバイ狙いで持ち帰ったコケから、草の種みたいなバッタ系昆虫の卵が数個出てきたのだが、それをご丁寧に飼育するヤツが会社にいた。

先日、その卵からウマオイの幼虫が孵った。育ての親は、一所懸命にぺんぺん草のアブラムシを与えていたのだが、どうも成虫になるまで育てる自信はないといいだした。てゆーか、こんなモン成虫にして、事務所で鳴きだしたらどうする気だったのだろう。森のなかで聞くのと、部屋の中で聞くのでは虫の音の大きさにはスゴイ違いがある。うるさ過ぎて近隣の住民にも迷惑がかかる可能性さえ考えられる。

しょうがないので、もといた森にお帰り願うことにした。子供と一緒に、森にいって、ぽいっと草地に振りまいた。

子供が森に向かって大声で呼びかけた。「大きくなって、元気にリンリンと鳴くんやぞー!」

リンリンとは鳴かないし。まだ足元にいるし。

Hexacentrus_sp