泉南市のイオンりんくう泉南ショッピングセンターの中。2階の通路が広くなってるところで、親子連れが集まっている。こういう場所はもっとも苦手だけど、仕方がない。集団のなかにウチの子も走りこんでいってしまったのだ。ここにくるといつもそう。
チビッコたちの目を釘付けにしているのは、小柄なお姉さんの手先のアンズの実ほどの大きさのアメ。すばやく動く指の間で、伸ばされたりハサミで切れ目を入れられて、ケモノやムシの形が出来上がってゆく。
単純な形のものから、わずかな過程で様々な造形になるところは何度見ても不思議だ。なんか生物の教科書に出てくる発生学のイラストを思い出したりする。卵細胞がどんどん分割して、あるところは分裂がとまり、あるところは分裂 が繰り返されて、生き物の形になるアレだ。
素人が粘土で動物なんか造ろうとしても、なかなかうまくいかないものだ。それなのにこのお姉さんは、あっという間に左右対称に耳やら足やらを作り、動きまで与えている。しかも、素材はすぐに硬くなってしまうアメちゃんでだ。ホントにスゴイ!
リクエストして作ってもらうのは一つ500円なり。眺めるのも良し。舐めても良し。動物の左右対称性などの発生学的謎を思索したりするのも良し。知人にも行ってみるよう勧めたいところだが、チビッコだらけなのでオヤジには少々きつい。
写真はうちの子が2日間なめまくって食べたコーギー。飴細工のお姉さんことKAYAさんのHPはこちら↓
40年ほど前の和泉市。私が住んでいたあたりの用水路は、メダカ、モロコの楽園だった。田んぼのあぜ道も生き物だらけで、ヒトの農耕文化が造りだした典型的な里山の自然っていうのがみられた。先日、久しぶりにお気に入りだった用水路にいってみたが、とても魚すくいなどができそうな場所ではなくなっていた。上流には住宅街があって、その先には大規模な愛玩犬の繁殖施設もある。そこの繁殖施設では、イヌ‐ブルセラ病のアウトブレイクが起きて、今は残ったイヌ達の世話や消毒に追われている様子だ。まさか、消毒薬が用水路に流れていることはないとは思うが・・・・。
ペットブームでイヌの人気が高まっている御時勢に、多数のイヌたちが哀れなめにあっているとはどういうことなのだろう?
このあたりは、昔からけっこう野犬が多い場所だった。ヒトになつく様子がなく、夜陰にまぎれて人家の近くを徘徊するイヌたちだが、日当たりのよい草地で昼寝しているところもよく見かけた。
野生動物のように小動物を狩ったりして生きている野犬は、「ノイヌ」と呼ばれている。夜にカブトムシ採りなどをしていて、野犬の光る目が意外に近くまで接近していてギョッとしたこともあった。和泉市の野犬が、ノウサギなどを捕食しているかどうかは不明だが、雰囲気的には自然の一部になっているとしか思えない。
野犬の中には繁殖施設の近くをたむろしていた小さな群もあった。その様子は多くの人に目撃されているから、保健所に追われる羽目になったのか、最近はどこに行っても姿を見かけない。姿を消した野犬の群れには、繁殖施設から逃げ出したイヌが混じっていることも考えられるため、追跡の手は厳しくなるはずだ。
問題の繁殖施設の人畜共通感染症にかかったイヌ達は、安楽死が決定したようだが(個人的には全頭に治療を施して、人畜共通の病気についてデータを収集するべきと思う)、野犬達の方は追われてギリギリの生活を続けながらも、生き長らえそうな気がする。
そんなことをいろいろ考えながら、ゴミだらけの下水臭がする用水路を、腰をかがめて眺めていた。すると、芥子粒のような小型の黒いユスリカが数匹飛んでいて、護岸にも点々と止まっていた。水面下でゆらめいている寒天状のヒモ(ズーグレア?)の間にもなにかがモゾモゾと動いている。人間からみれば「汚い川」だが、腐敗した有機物が多い水質を好む生き物には楽園というわけである。
ヒトが里山をつくろうが、里山を汚そうが、生き物を殺戮しようが、ヒトが作り出す様々な状況の上で、生き物たちはそれぞれの楽園をそれぞれに形成していくのだろう。
勤務先の近くには、プラタナスの並木道がある。昼休みにコンビニへ行くたびに、ぼーっと木を見上げながら歩いていたりする。自転車のおばちゃんに激しくベルを鳴らされることも多い。大阪のおばちゃん達は、もちろんブレーキなどかけないので、大変危険だ。
名古屋で発見された2001年頃から、プラタナスグンバイを探しているのだが、ここ大阪では見つけられない。
ところが少し前に(2006年8月25日)、西宮市久保町を通りかかったとき、妙に葉が黄色くなったプラタナスをついにみつけた。葉の裏には沢山のプラタナスグンバイがみられた。通りの両側には、プラタナスが10本ほどみられたが、遠目にも変色が確認できた木は3本だった。同行していたオジサン(ガが専門)がなんか嬉しそうに採集していた。
2000年に発見された同属のアワダチソウグンバイの方は、大阪では道端で最も普通にみられる種になっているのとくらべると、プラタナスグンバイの分布拡大がすごく遅いような気がする。やはり、寄主植物が少ないせいなんだろうか?どうやら本種もこのまま安定して定着してしまいそうだ。昆虫の分類(素木得一,1973)のグンバイムシの解説に、日本産でもない本種が、代表的に図示されているのが変って昔は思っていたもんだが、もはや何の違和感もないやん。
家の中に落ちているゴミのような小さなカケラから、害虫を推測しなければならないことがある。虫の糞粒やら、ハネの破片やら、ポリ袋の齧り痕などから害虫を特定するのも害虫屋の仕事の一つ。とても厄介な仕事だけれど、ヒトの暮らしに関わる種類は、昆虫全体からみれば僅かなので、なんとかなることも多い。
でも世の中には、なんともなりそうにないカケラから、とてつもない生物を推測する人たちがいる。古生物学者だ。科学雑誌で彼らの論文を読むと、地味な事実に基づいて、控えめな推測をしているのにもかかわらず、結論では想像を超えた形態が示されているのに驚かされることが多々ある。「自然は飛躍しない」などといいながらも、復元が終わった恐竜などをみてると結構ぶっ飛んだ種になってるよなあと思ったりもする。そんな恐竜やら三葉虫やらが大好きな私なので、ローソンで古生物の模型(海洋堂製)のおまけ付きペットボトルを発見したときは、当然買ってしまった。袋を破るとアロサウルスが出てきた。私はフィギュアを集める趣味はないが、ものすごく出来のいいアロサウルスに思わず見とれてしまった。ふと解説書をみると、全12種類中に巨大翼竜「ケツァルコアトラス」がある!マニアな心を直撃され、ぜひ入手しようと決心したが、すぐに当たるとは思えなかったので、会社の後輩君にも頼んでおいた。これにより後日、フィギュアを集めたいがために、飲みたくもない飲料を後輩に買わせているという黒い噂が社内に広がった。だが結局、すぐに後輩君が目的のものを当ててくれた。写真は、その頂いたブツが実態顕微鏡の支柱に止まり、事務所内を睥睨している勇姿である。
このケツァルコアトラスは、ずいぶん古生物オタクたちの議論の的になった。開長が10~15mあるらしいが、飛翔動物の物理学的限界を超えてないか、つまり翼面積が大き過ぎなので、実際羽ばたいたりできるわけ?というところが最大の論点。他にも、内陸部で暮らしてたようだが何を食べてたのかってことにも妄想を刺激される。無尾翼機を実用化したノースロップ社の創業者に因みnorthropiの種小名が付けられたこのオバケ翼竜は、航空力学が好きな人も巻き込んで、もう昔の話になるけれど2分の1サイズのラジコン模型まで登場したくらいだ。
ところでローソンのお店の人に聞いてみたいのだけど、ケツァルコアトラスをラインナップの1番に持ってきたのは、やっぱり発掘者の名前がローソン博士だからですか?

シロアリ工事の点検で、床下に潜ると結構いろいろな生き物がみられるが、その大半が外から迷い込んできている種類だ。チョウやガの仲間が、幼虫期に床下に入り込み、やがて蛹になって羽化することがある。でも、通風口のネットなどがあると、外に出られずに死んでしまう。この写真は同僚が撮影してきたもので、床下にあったアゲハチョウの死骸。上側には小さなアシダカグモがヒマそうにしている。
大抵の人は、床下に虫なんか入って欲しくないので、基礎外周開口部に目の細かいネットを取り付けたり、開口部を無くして基礎パッキン工法にしたりという住宅が増えてきている。しかし、そんな虫除け対策は、効果が低い場合が多いようだ。最新の防虫対策がされているという住宅の床下でも、オカダンゴムシ、ワラジムシ類、ヤスデ類、ゴミムシ類など死骸が累々としているということは少なくない。いっそのこと、床下を人が入れるくらいの空間にして、ホウキで掃除できるようにつくれないのかとよく思う。
昔の家屋は、縁の下にヒトを含めてありとあらゆる生き物が出入りできた。縁側からのぞき込む床下空間には、独特の生き物の世界が息づいていた。
誰もがやっていたのは、アリジゴクにアリの生け贄をささげてみたり、クモの巣を集めてセミ捕り網を作ったりということだろう。アシダカグモがベッコウバチに引きずられていくところや、石の下で卵を抱いているムカデをみつけたりもしたし、子供たちが宝物を隠す場所としても床下は絶大な人気があった。
名作「となりのトトロ」でも、怪しげな空気が漂う床下が描かれていたが、あの場面を懐かしい気持ちでみていたオヤジは多いと思う。愛知万博で人気があった「メイとサツキの家」は、保存して展示されるそうだが、ぜひとも床下の不思議な空気というのを再現してほしいと密かに願っている。