家の中に落ちているゴミのような小さなカケラから、害虫を推測しなければならないことがある。虫の糞粒やら、ハネの破片やら、ポリ袋の齧り痕などから害虫を特定するのも害虫屋の仕事の一つ。とても厄介な仕事だけれど、ヒトの暮らしに関わる種類は、昆虫全体からみれば僅かなので、なんとかなることも多い。
でも世の中には、なんともなりそうにないカケラから、とてつもない生物を推測する人たちがいる。古生物学者だ。科学雑誌で彼らの論文を読むと、地味な事実に基づいて、控えめな推測をしているのにもかかわらず、結論では想像を超えた形態が示されているのに驚かされることが多々ある。「自然は飛躍しない」などといいながらも、復元が終わった恐竜などをみてると結構ぶっ飛んだ種になってるよなあと思ったりもする。そんな恐竜やら三葉虫やらが大好きな私なので、ローソンで古生物の模型(海洋堂製)のおまけ付きペットボトルを発見したときは、当然買ってしまった。袋を破るとアロサウルスが出てきた。私はフィギュアを集める趣味はないが、ものすごく出来のいいアロサウルスに思わず見とれてしまった。ふと解説書をみると、全12種類中に巨大翼竜「ケツァルコアトラス」がある!マニアな心を直撃され、ぜひ入手しようと決心したが、すぐに当たるとは思えなかったので、会社の後輩君にも頼んでおいた。これにより後日、フィギュアを集めたいがために、飲みたくもない飲料を後輩に買わせているという黒い噂が社内に広がった。だが結局、すぐに後輩君が目的のものを当ててくれた。写真は、その頂いたブツが実態顕微鏡の支柱に止まり、事務所内を睥睨している勇姿である。
このケツァルコアトラスは、ずいぶん古生物オタクたちの議論の的になった。開長が10~15mあるらしいが、飛翔動物の物理学的限界を超えてないか、つまり翼面積が大き過ぎなので、実際羽ばたいたりできるわけ?というところが最大の論点。他にも、内陸部で暮らしてたようだが何を食べてたのかってことにも妄想を刺激される。無尾翼機を実用化したノースロップ社の創業者に因みnorthropiの種小名が付けられたこのオバケ翼竜は、航空力学が好きな人も巻き込んで、もう昔の話になるけれど2分の1サイズのラジコン模型まで登場したくらいだ。
ところでローソンのお店の人に聞いてみたいのだけど、ケツァルコアトラスをラインナップの1番に持ってきたのは、やっぱり発掘者の名前がローソン博士だからですか?