害虫屋の雑記帳(ブログ人の保存版)

ブログ人のサービス停止に伴い、gooに過去記事を保管させてもらうことにした。

楽園の連鎖

2007-03-04 01:32:29 | インポート

Yousuiro  40年ほど前の和泉市。私が住んでいたあたりの用水路は、メダカ、モロコの楽園だった。田んぼのあぜ道も生き物だらけで、ヒトの農耕文化が造りだした典型的な里山の自然っていうのがみられた。先日、久しぶりにお気に入りだった用水路にいってみたが、とても魚すくいなどができそうな場所ではなくなっていた。上流には住宅街があって、その先には大規模な愛玩犬の繁殖施設もある。そこの繁殖施設では、イヌ‐ブルセラ病のアウトブレイクが起きて、今は残ったイヌ達の世話や消毒に追われている様子だ。まさか、消毒薬が用水路に流れていることはないとは思うが・・・・。
 ペットブームでイヌの人気が高まっている御時勢に、多数のイヌたちが哀れなめにあっているとはどういうことなのだろう?
 このあたりは、昔からけっこう野犬が多い場所だった。ヒトになつく様子がなく、夜陰にまぎれて人家の近くを徘徊するイヌたちだが、日当たりのよい草地で昼寝しているところもよく見かけた。
 野生動物のように小動物を狩ったりして生きている野犬は、「ノイヌ」と呼ばれている。夜にカブトムシ採りなどをしていて、野犬の光る目が意外に近くまで接近していてギョッとしたこともあった。和泉市の野犬が、ノウサギなどを捕食しているかどうかは不明だが、雰囲気的には自然の一部になっているとしか思えない。
 野犬の中には繁殖施設の近くをたむろしていた小さな群もあった。その様子は多くの人に目撃されているから、保健所に追われる羽目になったのか、最近はどこに行っても姿を見かけない。姿を消した野犬の群れには、繁殖施設から逃げ出したイヌが混じっていることも考えられるため、追跡の手は厳しくなるはずだ。
 問題の繁殖施設の人畜共通感染症にかかったイヌ達は、安楽死が決定したようだが(個人的には全頭に治療を施して、人畜共通の病気についてデータを収集するべきと思う)、野犬達の方は追われてギリギリの生活を続けながらも、生き長らえそうな気がする。
 そんなことをいろいろ考えながら、ゴミだらけの下水臭がする用水路を、腰をかがめて眺めていた。すると、芥子粒のような小型の黒いユスリカが数匹飛んでいて、護岸にも点々と止まっていた。水面下でゆらめいている寒天状のヒモ(ズーグレア?)の間にもなにかがモゾモゾと動いている。人間からみれば「汚い川」だが、腐敗した有機物が多い水質を好む生き物には楽園というわけである。
 ヒトが里山をつくろうが、里山を汚そうが、生き物を殺戮しようが、ヒトが作り出す様々な状況の上で、生き物たちはそれぞれの楽園をそれぞれに形成していくのだろう。