法律の周辺

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政党ビラを配布するためのマンションへの立ち入りについて

2006-08-28 16:44:52 | Weblog
asahi.com マンションへの政党ビラまき,被告に無罪判決 東京地裁

 記事には,「判決は,明確な「立ち入り禁止」の警告に従わずに立ち入れば住居侵入罪にあたるとした(後略)」とある。ここが重要。住居侵入罪(刑法第130条)の保護法益につき,いわゆる「新住居権説」に立ち,住居権者ないし管理権者の意思を重視すればそうなるのだろう。
今後,「関係者以外の方の一切の立ち入りを禁止します」といった類の張り紙が増えるかもしれない。

 おやっと思ったのは,「警察で事情を聴かれ,帰宅しようとすると「住民男性によって住居侵入容疑で現行犯逮捕されている」と説明を受け,そのまま23日間,身柄拘束された。」という部分。
逮捕とは,普通,短時間ではあるにせよ,身柄の拘束を伴うものではないのか。だからこそ,現行犯逮捕の場合は捜査機関への引き渡しが規定されている(刑訴法第214条)。
住民男性の「見とがめ」をもって現行犯逮捕というのはいくら何でも無理がある。

 本件で「おまえは既に逮捕されている」と言われても,私なら納得しないだろう。


刑事訴訟法の関連条文

第二百十一条  前条の規定により被疑者が逮捕された場合には,第百九十九条の規定により被疑者が逮捕された場合に関する規定を準用する。

第二百十二条  現に罪を行い,又は現に罪を行い終つた者を現行犯人とする。
2  左の各号の一にあたる者が,罪を行い終つてから間がないと明らかに認められるときは,これを現行犯人とみなす。
一  犯人として追呼されているとき。
二  贓物又は明らかに犯罪の用に供したと思われる兇器その他の物を所持しているとき。
三  身体又は被服に犯罪の顕著な証跡があるとき。
四  誰何されて逃走しようとするとき。

第二百十三条  現行犯人は,何人でも,逮捕状なくしてこれを逮捕することができる。

第二百十四条  検察官,検察事務官及び司法警察職員以外の者は,現行犯人を逮捕したときは,直ちにこれを地方検察庁若しくは区検察庁の検察官又は司法警察職員に引き渡さなければならない。

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