芭屋框組(はなや かまちぐみ)

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長谷川幸三郎の仕事

2010-03-07 14:14:34 | 心に残った話、出来事
竹中大工道具館のビデオライブラリーで、動いている長谷川幸三郎を初めて見た。
映像ではヒツ穴の穴あけや、焼入れの様子が映し出されている。



驚いたことに、穴あけは上下の片方ずつから打ち抜かれている。冶具等は一切なく、
結構無造作に作業がすすめられる。それでいて、あの精度の穴あけが出来るのだから、
凄いとしか言いようが無い。

又、昨年の暮れに幸三郎氏の晩年の切り出しを拝見する機会があった。
黙って渡されたその切り出しは一見すると、少し野暮ったいくらいごつい感じで、
何よりも刃裏がでこぼこと、乱れた物であった。「これは一体・・・」
疑問が頭をよぎる。

しばらくすると、持ち主の御主人が静かに次のような説明を始められた。
「これは、親方(=幸三郎)が、晩年の頃に、作られたもので、最盛期の頃に
比べて手が落ちたなんて言う人もいるが、とんでもねえ。全ての仕事が
施されている、よくあの満身創痍の状態でできたもんだ。」

刃先の方は鑿の様に鋼がまかれており、でこぼこに見えた、異形の裏は
透かれた物ではなく、叩いて作られた裏だったことに初めて気付かされた。



その他にも、銘の違いの説明等もして下さったが、残念ながらあまり良く
覚えていない。

家に帰ってからそういえばと思い、本棚を調べるとやはりあった。
千代鶴是秀写真集②のP28右側の写真「蒼峰秋雲更白」(手元に有る方は
御覧になって欲しい。)
幸三郎氏はきっと、この切り出しを見たに違いない。



素人目には、一見不細工に見える刃裏だが、こうした説明や、ストーリー
を知ると、全く違って見えてくる。

20代の頃より、幸三郎氏に誘われて東京の土田刃物に通い詰められ30余年。現在も
月に何度かは勉強に行かれている、この御主人。まだまだ知らない色んな話
が聞かれそうだ。

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