芭屋框組(はなや かまちぐみ)

残しておきたい情報や、知っておきたい事

工藤氏再び その2

2010-11-07 17:44:05 | 道具、砥ぎの話


鉋で仕上げるということは砥ぎだけではなく、削る材料、砥石、引き方等
様々な要素が満たされて初めて結果に結びつくという話。

ギャラリーに試し削りをさせている最中、一人一人に
「もう少し押さえ方を弱く」とか「もう少し早く引いてみて」等と
一寸したアドバイスをされていた。

工藤氏曰く、ゆっくり引くのはあまり良くなく、一定のスピードと上から押す力で
「ス~ッ」と引いたほうがきれいに仕上がるとの事。
確かに上手く引けると音も違ってくる

又、ある方が送り鉋をする際に、右端-左端-真ん中の順で引かれたのだが
すかさず工藤氏が「送り鉋はやっぱり端から順番に送らなあかんな」と
すぐさま実演された。



右端から始めて合計3回の削り。
最後の1回は3~5分の細い鉋屑を出されて、「最後に3分残ったら、きっちり
3分拾って削らなあかん。最後が巾狭で削りにくかったら、最初の1回目を
刃巾一杯の削りにせずにわざと狭い目にして最後の1回が安定した巾で削れる
ようにしてもええな」と言われていた。



けちりんは削った面にひけが出るので、取らないとの事。
刃口に対して真っ直ぐ刃が出ていれば、送り鉋をしても刃枕は出ない
ということで、実際目の前でやって見せてくれて削った材も触らせて
くれたが、確かにちゃんと仕上がっていた。

因みに最後の巾狭の削りは、刃の端で削っているのではなく、
真ん中で削られている事に注目して欲しい。
つまり、その巾分だけ高くなっていて、そこをきっちり狙って
削れているという事。




湿度計で会場の温度と湿度のチェックもされていた:午前中に比べ、
温度が5度程上がり逆に湿度は下がったとの事で
「削り材に影響が出るのですか?」との問いに
「ここにある材料はちゃんとしたやつやから、言うことを聞いてくれて大丈夫」
との返事



今回使用された鉋は、新潟の関川林吉(=先代 関の孫六)作と゛和゛銘の圭三郎鉋
(=佐藤金物仕様)いずれも白紙2号。本人曰く「昔で言う安物鉋です」



一月の初削りの際には、宮本さんの鉋を2枚程確認できた。

見ている時に、高田鑿の高田良作さんが隣に来て「これは青紙やな」と言われていたが
真意の程は不明。仮に青紙だとすると、節削りに備えて前回は青紙、
今回は杉の仕上げだったので、白紙を持って来られたのかもしれない。




講義が終了してから、お弟子さん達と講義の内容についての裏話的
なことを話されていた。
「最後に仕掛けがあって、杉が仕上がる刃にしたら、薄削りも出来る事を
言いたかったんや」
ふ~んそういう事だったのか!

最後に1000番からいきなり10000番に番手を飛ばす理由を尋ねてみた。
「刃をケイセイしてんねん」

「ケイセイ?」

「字に書いてみたらわかるな。形を整えるや!」

「???」

「まあとにかくやってみたら」

こんな感じに会話は終わってしまった。

受け取り側の感度をもっとレベルアップしないと折角の情報も
生かしきれないので、まだまだ精進しないとならないようだ。