芭屋框組(はなや かまちぐみ)

残しておきたい情報や、知っておきたい事

木と対話する その1

2010-04-25 15:50:49 | 基本用語、基礎知識
ご存知のように、切った木が素材として使用できるようになるには、
21世紀のこの世の中でも、最低でも数ヶ月かかる。
なので、仕事の依頼をうけてから、材料を用意したのでは、
間に合わない。

木取り材というものも、確かに流通しているが、2つの理由から
よほどでないと使わないようにしている。

1つは、価格が高い事。もう1つは確かに木取りをしなくてよいので、
大幅に手間が省けるが、その反面、材料がどんな木だったのか、
乾燥具合は?などの管理や責任が薄くなり、結果的に仕事をこなしている感が強くなる。
使わない筋力が衰えるように、感覚が鈍ってしまう気がしてならない。

使用法の選択肢が狭い製品材に対し、耳つき材では、己の判断で木取りの可能性
がずっと広がるので、色々と思い悩む時間も増える。

この様にして、製品材の倍以上の時間をかけて木取りをした材料を加工して製品に
完成させていくので、見た目はもちろん、硬さや匂い、重さ、狂い方など五感を
通して様々なメッセージが身体に記憶させられる。

「感覚は何度も繰り返し感じる事で鋭敏になる」と、よい文章の書き方として
谷崎潤一郎が言っていたそうだが、刃物砥ぎを含め、自分のやってきた事がまさに
こういう事だったのかと思い日々の生活の励みにする。